サーマクールは、電磁波の1つである高周波を照射して皮膚を引き締めるマシンです。そして、従来のサーマクールよりも痛みやダウンタイムが軽減されたのが、サーマクールの4代目にあたる「サーマクールFLX」です。
サーマクールFLXは、毎日のスキンケアではどうにもできない加齢による顔やボディのたるみを改善して、肌にハリをもたらすといわれています。また、皮脂腺の収縮作用があるので、毛穴が引き締まってニキビ肌の改善も期待できます。
比較されることの多いHIFU(高密度焦点式超音波)治療のウルセラとの違いや、サーマクールFLXと従来のサーマクールの違いを知って、自身の肌の悩みをより効果的に改善へ導く施術を選択、またはサーマクールFLXによって期待できる効果や理想的な施術間隔の理解を深めることが可能です。
もくじ
サーマクールFLXは電磁波の1種である高周波を照射します。皮膚は表皮層・真皮層・皮下組織で構成されているのですが、サーマクールFLXは、レーザー治療や光治療では届かない真皮層や皮下組織を、55℃~65℃に加熱します。そのため、熱による引き締め効果と美肌効果(コラーゲンを増やす力を促進)が期待できます。
また、熱を発生させるのは皮膚深くにおいてなので、皮膚表面の組織が傷つくことはありません。これは、分かりやすく例えると電子レンジの仕組みに似ています。電子レンジで食べ物を温めると、食べ物の中心が高温になるように、サーマクールFLXの高周波照射は、肌表面には火傷や傷をつけることなく、内側に熱を伝えることができるのです。
皮膚は外側から表皮層・真皮層・皮下組織で構成されていて、真皮層と皮下組織は皮膚の弾力やハリに重要な役割があります。表皮層の下の真皮層には、皮膚の弾力やハリを保ちながらキメを整える繊維状のタンパク質であるコラーゲンがあって、その下にある皮下組織が皮膚をクッションのように支えて持ち上げる働きをしています。
サーマクールFLXで高周波を照射すると、真皮層が加熱されます。すると、真皮層内のコラーゲン繊維が瞬時に収縮するため、施術直後からゆるみやたるみがなくなって、皮膚の引き締め効果があらわれます。料理の際に肉を加熱すると縮まるように、タンパク質であるコラーゲンもサーマクールで熱を加えると縮まるわけです。
紫外線など外部からの影響や加齢によって、真皮層のコラーゲンは減少、皮下組織は弾力を失っていきます。すると、重力のかかる方向にだんだんと皮膚が下がってたるみやシワが生じるのですが、サーマクールFLXで真皮層を刺激するとコラーゲン生成を促進することができるので、皮膚が引き締まるといわれています。
高周波の熱によって真皮層でコラーゲンが生成されると、小じわや毛穴が目立ちにくくなるなど、なめらかな肌になります。
また、毛穴にある皮脂腺が収縮するので、脂性肌やニキビも改善されるといわれてます。
非手術的治療は真皮コラーゲンの引き締め(タイトニング)を目的としており,ちりめんじわや皮膚の張りを回復する目的ではケミカルピーリング,IPL などの光治療器,高周波治療器(radiofrequency;RF)などが用いられる.
サーマクールFLXでは皮膚の引き締めが得意なので、たるみがない方が施術を受けると、頬がこけて老けて見えてしまう可能性があります。
サーマクールFLXは、マシンの部品の先端に1回限りの使い捨てチップを、体用、顔用、目元用で使い分けて施術します。
額、コメカミ、目元、あご、首
サーマクールによる目元の施術はサーマクールアイといわれて、目元の小じわやまぶたのたるみに効果的です。
目のまわりの皮膚はとても薄くなっています。そのため、顔用のチップで照射すると、眼球に熱が到達する可能性があるため、上下まぶたの施術はできません。そのため、目もと専用の照射範囲が0.25㎠のチップを使って高周波の熱の発生深度を浅くすることで、目の周りの施術が可能になります。
なお、施術中はコンタクトを外す必要があるので、コンタクトの保存液やケース、替えのコンタクトなどを持参いただくとよいでしょう。
腹部、二の腕、背中、臀部、太もも
サーマクールによるボディの施術はサーマクールボディといわれて、お腹のたるみや二の腕、太もも、バストやヒップ、セルライト、肉割れ、妊娠線などに対応します。
高周波により皮膚のたるみを改善すると同時に、脂肪を減らす効果があります。ボディ専用のチップの照射範囲は、顔用のチップに比べると約4倍の16.0㎠です。ただ大きいだけではなく深部の脂肪層にまで熱が深く到達します。
1代目は「サーマクールTC」として2002年に発表されました。そして、2007年に照射方法を改善した「サーマクールNXT」が、2009年には「サーマクールCPT」が発表されました。サーマクールCPTでは、照射範囲が2倍になった新しいチップ「フレームチップ」を用いて、熱を一点に集中させずに効率よく深くまで伝えることができるので、より少ない痛みで効果を生み出すことが可能になりました。
そして、2018年に登場したのが4代目となる「サーマクールFLX」です。サーマクールCPTに比べて熱量や熱がより深くまで伝わるようになって、引き締め効果や痛みを軽減するための機能が高まりました。
現在はほとんどの医療機関で、サーマクールCPT もしくはサーマクールFLXが使われています。
サーマクールFLXは、日本の厚生労働省にあたるアメリカのFDA(食品医薬品局)に、皮膚のたるみの引き締めが期待できる医療機器として承認されています。
FDA(米国食品医薬品局)での承認 | K170758 |
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サーマクールFLXは、従来のサーマクールと比べて、痛みを軽減するバイブレーション機能や、熱感を抑える冷却システムがバージョンアップしています。そのため、従来のサーマクールと比べて施術中の痛みが緩和されました。無痛ではありませんが、我慢できないほどのものではないので、麻酔は必要ないことがほとんどです。
照射すると肌の奥で熱いような痛みを感じますが、痛みの感覚で肌に合った適切なエネルギー設定がおこなわれるために、麻酔なしの施術が推奨されています。麻酔をすると、強く照射しても熱を感じにくくなるので、火傷してしまう可能性が高まるためです。
しかし、痛みの感じ方は個人差があって弱い方もいるので、希望すればクリーム状の表面麻酔を30分程塗ってからおこなう医療機関もあります。この場合は十分注意しながら安全な強さで設定、照射がおこなわれる必要があります。
どこかに体をぶつけてしまったとき、痛みを和らげるために、ぶつけた箇所を無意識にさすってしまった経験はありませんか。これはさするという刺激で痛みを伝える機能が抑制されるためで、ゲートコントロール理論といわれます。サーマクールはこの理論を応用していて、照射時に振動(バイブレーション)を与える機能を搭載することで、高周波の熱感や痛みが一時的にブロックされる仕組みになっています。
サーマクールFLXのひとつ前にあたる3代目のサーマクールCPTの振動は縦方向でしたが、サーマクールFLXでは縦方向に加えて横方向にも振動を与えるため、振動がより感じられるようになりました。つまり、痛みを感じにくくなっています。
2代目のサーマクールNXTは、照射前に一気にクーリング噴射するだけでしたが、3代目のサーマクールCPTは照射前後に冷却するダブルクーリングになりました。
さらに、4代目のサーマクールFLXには、照射前後に加えて、照射中も皮膚表面を断続的に冷却するシステムが搭載されています。この冷却システムで皮膚表面を冷やしながら高周波を照射することで、熱感が抑えられるのです。
サーマクールFLXには、1ショットごとに皮膚の温度や、エネルギーの届きやすさをチェックして、正確なエネルギー量の設定調整が可能なチューニング機能が搭載されています。毎回最適な熱エネルギーを照射できるので、過剰な照射がなくなって痛みも軽減させています。
肌に直接触れるチップが、サーマクールFLXではバージョンアップしています。
サーマクールFLXのチップには、カプトン®といわれる超耐熱・超耐寒性ポリイミドフィルムでできたフレーム(カプトンフレーム)が装着されているので、均等に広い範囲の組織をより高い温度で長期的に加熱できます。
また、チップの四つ角には圧力と温度を感知するセンサー付いていています。そのため皮膚にきちんと接触しているかをチェックできるため、ムラなく安全で確実に熱エネルギーを照射することが可能です。
サーマクールCPTと比較して、サーマクールFLXのチップの照射面は熱量が1.3倍の4.0㎝²に、また、顔における施術でエネルギーを届かせることができる深さは2.4㎜だったのが、4.3㎜(真皮層を中心に皮下組織~筋膜)まで深くなりました。より強く、そしてより深くまで熱を伝えられるので、サーマクールCPTより少ない熱で加熱できるようになっています。
そして、顔全体でサーマクールCPTでは400ショットだったショット数が、サーマクールFLXでは300ショットと少なくなりました。
一度に照射できる範囲が増えたことと、ショット数が少なくなったので、サーマクールFLXの照射時間は25%短縮されて、施術時間が約30分程度になりました。
なお、顔に照射する場合のショット数は、300ショット、600ショット、900ショットの3種類です。医療機関によっては、900ショットを2名で受けて1人450ショットずつの施術が可能な場合もあります。
ショット数 | 施術時間 |
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300ショット | 約30分程度 |
600ショット | 約50分程度 |
900ショット | 約75分程度 |
高周波を使うたるみ治療マシンは、サーマクールFLXのほかにもエンディメットPROやポラリスなどがあります。
それぞれのマシンの違いは熱の伝わり方です。エンディメットPROは、1回あたりの熱量や熱損傷が少ないので、治療はじめは週に1回の照射が推奨されています。治療間隔を空けずに刺激することで、コラーゲンの引き締めとコラーゲンを増やす力の促進を継続的に引き起こすことができます。
一方、サーマクールFLXは1回あたりの熱量が大きいので、次の施術までに半年~1年程度あける必要があります。サーマクールFLXのように、1回あたりの熱量や熱損傷が大きいほど、照射による痛みが大きくなる傾向にあって、治療間隔をあける必要があるわけです。そのため、頻繁に医療機関に足を運ぶことが難しい方に、向いている治療といえるかもしれません。
サーマクールはショット数が多いほど効果が高まります。顔全体の施術の場合サーマクールCPTだと通常400ショットで約100,000円~200,000円前後です。また、サーマクールFLXの場合は300ショットで200,000円~400,000円前後、サーマクールアイは225ショットで100,000前後です。
希望次第ではショット数を増やすことも可能ですが料金もその分高くなります。
サーマクールFLXでは、直接肌にあたる部品であるチップを使用します。サーマクールFLXで使用するチップは1回限りの使い捨てで、有効時間とショット数が決められています。
チップごとに何分という有効時間とショット数が決まっていて、チップにあるカウンターで、施術をスタートさせたときからの時間とショット数をカウントしてます。サーマクールFLXが、ショット数ごとに価格が設定されているのはこのためです。
サーマクールFLXは自由診療のために医療機関ごとに料金が異なります。
また、照射する部品の先につける肌に触れるチップがコピー品で純正品を使っていない、もしくは使い捨てせずに使いまわしていたり、施術するのがドクターではなく看護師がおこなっていることで、安く設定されている場合があるようです。
サーマクールの製造元であるアメリカの医療機器メーカーによるトレーニングプログラムを修了すると、サーマクールの施術技術を取得したとして、サーマクール認定医となります。サーマクールの施術に必ず必要となる資格ではありませんが、サーマクールFLXを受ける医療機関を選ぶ際の目安としてもよいかもしれません。
(1)カウンセリング
ドクターと治療部位や肌の状態を相談します。
(2)クレンジング
顔周りの施術の場合は洗顔とクレンジングをおこないます。アクセサリーなどの貴金属類も外します。
(3)プランニング
リフトアップしたい方向や、ボリュームダウンさせたい部位に照射プランを立て、それに従ってマーキングします。 電流の抜け道の役割をする対極板を体に貼ります。
(4)照射
高周波エネルギーを流れやすくする為に照射部位に専用のジェルを塗ります。感じる熱の度合いに応じて出力を調整しながら照射していきます。
(5)施術後
赤みや腫れなどはほとんどなく、クーリングは基本的におこないません。 治療後すぐにメイク可能です。
サーマクールFLXは、皮膚表面を傷つけないのでダウンタイムがありません。メイク、入浴、運動は当日からおこなえます。
軽いむくみが生じる場合がありますが、数日間でおさまります。ごくまれに、火傷や水疱が生じる場合があるので、施術中に痛みや熱感を感じる場合はドクターに申し出てください。
照射直後から引き締め効果を実感します。その後はコラーゲンの生成が起こり約6カ月~1年に渡って効果が持続します。効果が残っている状態で再度施術することにより、さらに効果がプラスして期待できるため6カ月~1年間隔で施術するのが理想的です。
サーマクールFLXは、日本国内では未承認の医療機器になります。そのため、施術を検討する際は医療機関でリスク・副作用などについても十分な説明を受け納得した上で施術を受けてください。
サーマクールFLXは厚生労働省未承認医療機器です。 |
医療機器の入手経路:入手経路は各医療機関のドクターによるメーカーからの個人輸入です。 個人輸入において注意すべき医薬品等について(厚生労働省のページ) |
日本国内での承認の有無:サーマクールFLXと同一の性能・作用があり、日本国内で承認を受けている医療機器はありません。 |
諸外国における安全性等に関する情報:サーマクールFLXは、米国のFDAから承認を取得しています。 当該承認における副作用:重篤な有害事象は報告されていません。一般的に起こり得る主なリスク・副作用としては、施術部位に生じる一過性の赤み・腫れ・むくみ・やけど・水疱などが挙げられます。 |
サーマクールと並び切らないたるみ治療としてウルセラ(HIFU)があります。違いはその目的と照射深度です。
サーマクールFLXは、高周波を脂肪層まで届かせてたるみを引き締めるタイトニングであるのに対して、ウルセラは、たるみを引き上げるリフトアップ効果が高い治療で、脂肪層の下にある筋膜(SMAS層)にまで作用します。部位や脂肪とたるみの状態によってどちらが効果的かは変わります。
また、施術可能範囲に関しては、ウルセラの超音波はサーマクールFLXの高周波よりも深いところまでエネルギーが届くので、主要な神経や目の周りなどは避けておこなう必要があります。一方、サーマクールFLXでは目元も照射できるのでウルセラよりも広い範囲に照射できるといえます。
同じたるみ治療でも、ウルセラとサーマクールFLXでは特徴が異なるので、広範囲に照射して顔全体を引き締めていくサーマクールFLXと、ピンポイントの深さで部分的に引き上げていくウルセラの施術を併用すると、引き締めと引き上げの作用で効果的なたるみ治療になるといえます。
2つのマシンを用意している医療機関がない場合は、1カ月以内にそれぞれの施術を繰り返すことでも効果を見込めるでしょう。
(2021年1月更新)