レディエッセは注射で皮下に注入する注入剤で、メスをつかう外科手術ではなく、約10分程度の注入施術で注入部位にボリュームを出すことができます。
同じように、輪郭の形成やシワの改善ができるヒアルロン酸と比較したメリットもある一方で、デメリットもあるため、レディエッセ注入を受けるまえにほかの美容医療と比較した際の違いや、リスクについて知っておく必要があります。
レディエッセはFDA(米国食品医薬品局)、MFDS(韓国食品医薬品安全省)、CE(欧州加盟国の法的規制による基準適合表示マーク)などをはじめとする世界10カ国で安全性の承認を得ています。注入による感染やアレルギーを起こすリスクが少ないため、注入施術前におこなうアレルギーテストは必要ありません。
レディエッセは厚生労働省未承認医薬品です | ||||
医薬品の入手経路:入手経路は各医療機関のドクターによるメーカーからの個人輸入です。 個人輸入において注意すべき医薬品等について(厚生労働省のページ) |
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日本国内での承認の有無:レディエッセと同一の成分・作用があり、日本国内で承認を受けている医薬品はありません。 | ||||
諸外国における安全性等に関する情報:レディエッセは米国のFDAから下記の承認を取得しています。[※1]
そのほかMerz PharmaによるCEマーク取得でヨーロッパで使用されています[※2] |
[※1]FDA
[※2]MERZ
レディエッセのおもな成分は、体内にもともと存在するカルシウムとリン酸イオンから成る「カルシウムハイドロキシアパタイト(CaHA)」です。骨や歯の主成分である固形物ですが、粒子状にして粘着性のあるジェルで包むことで皮膚充填剤として注入できます。
レディエッセ注入後、ジェルもカルシウムハイドロキシアパタイトも、老廃物として白血球の一種であるマクロファージ(大食細胞)によって徐々に分解・吸収されていきますが、ジェルは早々に分解され、残ったカルシウムハイドロキシアパタイトがシワの改善や形成に作用します。
カルシウムハイドロキシアパタイトは、骨の欠損部に入れると骨をつくる細胞の働きで、自分の骨に置きかわるという性質があり、人工骨の形成や歯科治療など、美容医療以外でも形成外科・整形外科・耳鼻科・歯科といった幅広い医療分野で使用されています。
なお、レディエッセを注入するのは、骨を作る細胞が存在しない皮膚の内部であること、骨膜に覆われている骨に誤ってレディエッセが触れることはないことから、レディエッセで骨が新しく形成されてしまうことはありません。
シワの溝を持ち上げボリュームを出すために皮下に注入する製剤を皮膚充填剤(ダーマルフィラ―)といいますが、レディエッセ(RADIESSE)は皮膚充填剤のひとつです。
鼻やあごの輪郭を形成する注入施術としてヒアルロン酸注入がよく知られていますが、ヒアルロン酸は水分で膨らむ性質があるため、注入後に肌の水分を吸水して、予定していたイメージより膨らむ可能性があります。また、稀にではありますが、注入後に注入部位から移動して鼻筋が太くなることが生じる場合があります。
一方、レディエッセは水分によって膨らむことはありません。
また、注入後も適度な固さを保つことで、まわりに流れてしまうこともありません。
しっかりと形を保つレディエッセの性質は、鼻やあごをシャープに形成したり高さを出す施術で活かされ、細い鼻すじの形成や鼻先を持ち上げることができます。
レディエッセは深く刻まれたほうれい線・ゴルゴライン・マリオネットラインの改善が期待できます。
硬さがあるため皮膚浅くに注入すると、しこりや凹凸が発生する可能性があり、浅いシワの改善や目の下の涙袋などの柔らかい部位への注入は不向きです。
浅いシワを改善したい場合、注入施術であればレディエッセよりも柔らかいヒアルロン酸注入、コラーゲン注射などが向いています。また表情のクセによりあらわれる表情ジワには、ボツリヌス注射が有効です。
皮膚は外側から表皮・真皮と層状になっていて、真皮には肌の弾力やハリのもととなるコラーゲンやエラスチンと、これらをつくる線維芽細胞が存在します。真皮は約70%がコラーゲンから成りますが、コラーゲンは加齢とともに生成量が減少して皮膚がたるむ原因となります。
レディエッセはコラーゲンの刺激剤ともいわれ、皮下に注入すると線維芽細胞が活性化することで、自身のコラーゲンが増え肌にハリや弾力がもたらされます。レディエッセが体内に分解・吸収された後も、生成されたコラーゲンにより生じた肌のハリや弾力効果は続きます。
レディエッセは注入直後から注入部位にボリュームが出るため即効性があり、施術効果は約10カ月~18カ月間程度持続するとされます。持続期間が6カ月~1年程度といわれるヒアルロン酸注入と比較すると持続が長いといえ、「長期持続型皮膚充填剤」といわれることもあります。
鼻 | ・鼻の凹凸を均一にする ・鼻筋を通す ・鼻先に丸みのあるだんご鼻をシャープに改善 ・鼻先が上を向いた豚鼻(アップノーズ)の改善 |
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こめかみ | ・加齢でくぼんだこめかみのボリューム改善 |
頬 | ・頬のボリューム改善 |
深いシワ | ・ほうれい線・ゴルゴライン・マリオネットの深いシワを目立たなくする |
あご | ・あごをシャープに形成 ・左右で異なるあごの形の均一化 ・理想のEライン(鼻とあごを結ぶライン)に近づける ・引っ込んでいるあご、割れたあごの改善 |
手の甲 | ・手の甲のシワや浮き出る血管を目立たなくする |
繰り返しになりますが、額・眉間・目のまわり・唇といった皮膚が薄く皮膚浅くに注入する部位への注入は、しこりや凹凸になる可能性がありため不向きです。
美容医療には、レディエッセ注入のように輪郭を形成する施術として、ヒアルロン酸注入、糸による施術、プロテーゼの挿入があります。
ほかの美容医療と比較した際のレディエッセ注入のデメリットとしては、理想の形にならなかった際に、ヒアルロン酸は溶解剤によって、また糸やプロテーゼは除去することで、もとに戻すことができますが、レディエッセは作用がなくなるまで待つことになる点です。また、プロテーゼは体内に吸収されることはないため効果は半永久的ですが、レディエッセ注入の場合、効果を持続するには定期的な注入を繰り返す必要があります。
ジュビタームビスタ®ボラックス(Juvéderm® VOLUX)XCは、アラガン社製の「ジュビタームビスタ®」シリーズのヒアルロン酸で、同じシリーズのなかでも粘度が非常に高く硬さがあります。
ボラックスXCは同じ形を保つ力が強いという特徴から、フェイスライン、顎といった硬い部位への注入・成形に適したヒアルロン酸です。
クレヴィエル(CLEVIEL)はアジア人向けに開発された鼻・あごの形成に適したヒアルロン酸注入剤です。クレヴィエルにはヒアルロン酸濃度の違いで「コントア(濃度50mg/ml)」と「プライム(濃度33mg/ml)」の2種類があり、形成に適しているのはヒアルロン酸濃度が高いコントアです。
ほかのヒアルロン酸と比べて濃度と密度が高いため体内での分解吸収が遅く、その作用は約12カ月以上も持続するとされています。
アルジェネス®は、食品などにも使用されている「アガロース」を主成分とする注入剤です。皮膚を内側から支えてボリュームを補う作用があり、シワを改善に導いたり額やフェイスラインの形を整える輪郭形成、鼻の高さを出す隆鼻などの効果が期待できる注入剤で、施術名としては「ボタニカルフィラー」と呼ばれることもあります。
アルジェネス®の主成分が水分を吸収しにくいことから、「ボラックスXC」や「クレヴィエル」と同様に、「施術部位が膨らみ形状が変わってしまうリスク」がほとんどないとされています。また、理想の形にならなかった場合は、ヒアルロニダーゼなどの溶解剤により溶解させて元の形に戻すことができる点もヒアルロン酸注入と同じです。
医療吸収糸のPCL(ポリカプロラクトン)やPDO(ポリデオキサノン)素材の医療用吸収糸を鼻やあごに挿入して形を整えることができます。医療用吸収糸とは外科的手術などで縫合糸として使用されている安全性の高い素材で、さまざまな種類の吸収糸が開発されています。各吸収糸によって効果持続の期間が異なりますが、およそ1年ほどかけて体内に吸収されていきます。
プロテーゼを挿入する施術のようにメスを使用した手術ではないため、ダウンタイムはほとんどありませんが、施術後2日~3日ほどは施術部位に触れたり表情によって動きがあると、鈍い痛みがあるといわれています。
万が一希望の仕上がりにならなかった場合は、抜糸により元に戻すことになりますが、抜糸が挿入部位の組織と吸収糸の癒着がはじまる前におこなう必要があります。
プロテーゼとは医療用シリコンやゴアテックスなどからつくられた人工軟骨のことで、鼻やあごに挿入して形を整えることができます。希望と骨格にあわせて加工したプロテーゼを挿入することで、顔立ちにあわせたオーダーメイドの施術となります。
プロテーゼの挿入はエディエッセと違って外科手術になり、全身麻酔や静脈麻酔をもちいて施術がおこなわれます。鼻の場合は鼻の穴の中から、あごの場合は下唇の内側を切開して挿入するので、傷跡は目立ちません。また、体内に吸収されることがないため、効果は半永久的となります。
レディエッセはダウンタイムがほとんどありませんが、プロテーゼ挿入の施術は、腫れや内出血などのダウンタイムが約1週間~2週間程度あり、術後2日~3日程度、施術部位をテープやギブスで固定する必要があります。
万が一希望の仕上がりにならなかった場合は、プロテーゼを除去することになります。
脂肪によるたるみがある場合は皮下脂肪のある部位に薬剤を注入する「脂肪溶解注射」、咬筋の発達によりエラの張りが気になる場合はエラにボツリヌス注射を施す「エラボトックス」を併用することで、フェイスラインがよりすっきりする可能性があります。
発生する可能性は低いものの、ほかの注入施術と同じように誤って血管に薬剤が入って血管が詰まると(塞栓)、皮膚の壊死や失明、脳卒中のリスクがあります。
施術中や施術直後に激しい痛みを感じたり、視力に変化がある場合、また脳卒中の兆候(会話が困難になる、しびれや脱力、歩行困難、激しい頭痛、めまい、錯乱など)がある場合、皮膚の蒼白が生じた場合は、すぐに医療機関にご連絡ください。
これらの重篤な合併症は、薬剤そのものではなくドクター注入スキルにより引き起こされます。リスクを避けるためには解剖学を熟知したドクターによる施術を受ける必要があります。
針を刺して注入することから、ほかの注入施術と同じように、注射部位に腫れ・赤み・鈍痛・内出血・かゆみなどの副作用の可能性がありますが、多くの場合2日~3日ほどで治まるとされています。
ヒアルロン酸には溶解剤(ヒアルロニダーゼ)がありますが、レディエッセは注入後に溶かす方法がないため、万が一仕上がりに満足がいかない場合でも、体内に吸収されることで元に戻すしか対処法がありません。しかし、レディエッセは注入後に移動したりイメージより膨らむことはないため、入れすぎたことによリイメージと異なる仕上がりになる可能性は低いといえます。
レディエッセはほかの皮膚充填剤と比べて硬さがあることから、皮膚の柔らかい部位や浅いシワには不向きなため、皮膚の浅い部位に注入するとしこりになることがあります。しかし、レディエッセの正しい注入方法を習得しているドクターによる施術で張れば、しこりが残る可能性は少ないといえます。
レディエッセの主成分であるハイドロキシアパタイトは、高濃度もしくは体内に大量に存在するとX線やCTスキャンに写る可能性があります。ほとんどの場合は大量に注入することはないため、画像診断に影響する可能性は低いですが、撮影する際にはドクターにお伝えください。
そのほか、注入部位にあざや出血をともなう可能性が高まるため、血液の凝固を妨げる可能性のある抗凝血剤や薬(アスピリンやワルファリンなど)を服用している場合は、ドクターにお伝えください。
料金相場は、0.1ccあたり約10,000円~20,000円、1.5ccの1本あたり、約100,000円~200,000円です。
注入量は、それぞれの希望やシワの症状により異なりますが、鼻筋で0.1cc~、ほうれい線で0.8cc前後~、あごで0.5cc前後~程度で様子を見ながら注入していきます。
同等の効果をヒアルロン酸注入で求める場合と比較すると、ヒアルロン酸よりも少ない量で効果が得られるとされています。
(1)診察・カウンセリング
診察、カウンセリングでは希望を伝えて仕上がりのイメージを共有し、注入部位を確認します。心配なことや不安なことなど気になることを相談します。
(2)クレンジング・洗顔
メイクを落とし洗顔をして肌を清潔にします。
(3)レディエッセ注入
施術部位を消毒し、様子を見て注入量を調節しながらレディエッセを注入します。施術時間は10分~15分程度です。
(4)クーリング
注入後に形を整えて、医療機関によってはクーリングをおこない治療完了です。
医療機関によっては注入の前に塗るタイプの麻酔をおこないます。痛みが心配な方は麻酔の有無を医療機関にご確認ください。
施術直後は注入部位を避けることで洗顔やメイクは可能ですが、強くこするなどの過度な刺激や家庭用美顔器等の使用は控えます。
また、腫れや赤みが引くまでは紫外線対策をしっかりおこなってください。当日のシャワーは問題ありません。長時間の入浴やサウナは翌日から可能とされています。血行が促進することで痛みや赤みが現れることもあるため、アルコール摂取や激しい運動には注意が必要です。
レディエッセは安全性が高く効果持続期間の長い皮膚充填剤とされる一方、デメリットとしては溶解剤がないことが挙げられます。また、硬さのある皮膚充填材であることからしこりが残る可能性を懸念される場合もあります。
しかし、経験があるドクターであれば不満が残る仕上がりになることやしこりが残る可能性は低くなります。レディエッセを受ける際には、解剖学の正しい知識を持ち、適切な部位に注入施術をおこなえるドクターを選ぶことが大切です。