複数回の施術が推奨されるIPL(光)治療を途中でやめた場合の肌への影響

不安な状態

IPL(光)治療は、1990年代からタトゥーや脱毛、アザなどのメラニンやヘモグロビンが過剰に存在する色素病変などの皮膚治療に用いられるようになりました。1990年代後半に美容医療でも注目され、2000年頃から様々な臨床効果が報告されている治療方法です。Intense Pulsed Lightという複数の波長をもつエネルギーがメラニンやヘモグロビンなどに作用し、皮膚の若返りが期待できるといわれています

しかし、1回の施術で劇的に皮膚の若返りができるというわけではなく、効果を実感するには施術を複数回受けることが推奨されています。今回、IPL治療を途中でやめた場合の定義を、推奨された回数の施術を完了せずやめた場合として解説します。

IPL治療を途中でやめてしまった場合、皮膚が極端に老化してしまうなどと思っている方もいらっしゃいますが、そのようなことはありません。IPL治療を途中でやめた場合、皮膚にはどのような影響が出るのかを正しく知ることで、不安のない治療を受けることができます

肌の悩みの改善が期待できるIPL治療

医療IPL治療

複数回の施術が必要なIPL治療が開発された理由

IPL治療で効果が期待できる肌の悩みは、レーザー治療でも効果が期待できますが、レーザー治療の場合、複数回の施術が推奨されるIPL治療と違い、1回の施術で効果が期待できます。

1回の施術で同じ肌の悩みに効果があるレーザー治療がすでに開発されているのに、IPL治療が開発された理由は肌の悩みを改善したい方の心情の変化にあります。昨今の美容医療では、肌の悩みに対する効果だけでなく、仕事の関係などで施術後すぐにメイクができなければ困るなど、生活の質(クオリティーオブライフ)も重要視する方が増えてきました。

レーザー治療の場合、施術後のダウンタイムが比較的長く、施術部位にメイクができなかったり、レーザーを照射した部位のかさぶたが取れるまでテープを貼って保護をする必要があるなど施術後すぐに元通りの生活が送れるわけではありません。またダウンタイムの後、レーザーを照射した部位がシミのように色素沈着をしてしまう炎症後色素沈着を生じてしまうリスクもあります。

一方、IPL治療の場合、施術後すぐにメイクが可能、施術後テープを貼るほどのダメージを皮膚に与えない、炎症後色素沈着のリスクが低いなど、昨今のニーズに沿った施術が可能です。そのため、肌の悩みへの施術として選択されるようになり、臨床実績が増えて、レーザー治療と並んで肌の悩みの改善治療として確立されました。

施術後の負担が少ないIPL治療のメカニズム

ターゲットとなる物質にエネルギーを届ける役割の波長

IPL(Intense Pulsed Light)は、レーザーと同様に電磁波の1種です。電磁波は、波長の違いによって、ガンマ線・X線・紫外線・可視光線・赤外線・マイクロ波・高周波のように分類されています。波長とは、山と谷を繰り返す波の、山から山(もしくは谷から谷)の長さのことで、ナノメートル(nm)という単位で表されます。

波長が長くなるほど皮膚の深くまで電磁波のエネルギーを届けることができます。エネルギーはメラニンやヘモグロビンといったターゲットとなる物質に吸収されて熱エネルギーに変換されます。変換された熱エネルギーによって、ターゲットとなる物質を損傷・変性させることができます。これを熱作用と呼んでいます。

レーザーの波長は1種類で波長ごとにレーザーの名前が決まっていますが、美容医療で使われるIPLの波長は約500nm~1200nmmあたりと複数の波長を有しています。

IPLの波長

ターゲットとなる物質に、エネルギーを吸収させて熱作用をおこすには最適な波長が照射されなければなりません。IPL治療のマシンにはターゲットとなる物質に対して適切な波長を照射するために、不要な波長をカットするフィルターが搭載されています。

不要な波長をカットするフィルターは、IPLを照射する部分であるハンドピース内に埋め込まれているマシンと、着脱可能になっているマシンがあります。ハンドピース内に埋め込まれているタイプは照射できる波長が1種類で、着脱可能になっているタイプは、フィルターの数により照射できる波長が複数あります。

ターゲットとなる物質への熱作用の強さに関係するパルス幅・出力

IPL治療では、パルス幅というIPLを照射する1発あたりの長さと、一平方センチメートルあたりに照射されるIPLのエネルギーの密度である出力によりターゲットの物質に与える熱作用の強さが変わります

パルス幅は1000分の1秒にあたるms(ミリ秒)単位で表され、パルス幅が短くなるほど瞬間的に発生する熱エネルギー(ピークパワー)が高くなって、ターゲットの物質への熱作用が強くなります。

IPLのパルス幅

IPLの出力は、J(ジュール)/㎠という単位で表され、出力が高いほど単位面積あたりに照射されるエネルギーの密度が高くなって、ターゲットの物質への熱作用が強くなります。

熱作用が強くなるほどターゲットである物質の多くが損傷・変性して、肌の悩みに大きな変化をもたらしますが、熱作用を強くしすぎると皮膚に熱傷が生じてしまうリスクが高くなります。肌の悩みに対しての効果とリスクの両方を考えてパルス幅と出力が設定され、施術がおこなわれます。

IPL治療で効果が期待できる肌の悩み

肌の悩みを気にする

メラニンが主な原因の肌の悩み

  • シミ
  • そばかす
  • 肝斑(かんぱん)
  • 炎症後色素沈着

シミ・そばかす・肝斑は光老化と呼ばれていて、主に紫外線によりシミ・そばかす・肝斑の色が濃くなります。IPL治療では、色の原因であるメラニンを熱作用で損傷させて体外に排出することによって、色を薄くする効果が期待できます。

ただし、肝斑は紫外線だけでなく、肌をこすったり、美容医療で熱作用の強いレーザーなどの施術をおこなうと色が濃くなることが分かっています。そのため、IPL治療の際も肝斑の色が濃くならないように出力を調整しながら施術がおこなわれます。

炎症後色素沈着とは、皮膚が傷ついて治った後、シミのように色素沈着してしまうことをいいます。傷ついた皮膚の細胞を守ろうとしてメラニンが通常より多く生成されることで発生します。ニキビや擦り傷の後に発生してしまうことが知られていますが、美容医療でレーザーなど熱作用の強い施術をおこなうことでも発生する可能性があります。

炎症後色素沈着をしている部位はいわゆる傷跡で、皮膚のバリア機能が低下していて水分が失われやすく、アレルゲンをはじめとする様々な物質が皮膚から体内に侵入しやすい状態です。刺激の強い施術をおこなうと皮膚への損傷が大きくなり、炎症後色素沈着が悪化する可能性があるので、色素沈着をしている部位に必要以上の刺激を与えないように、IPL治療の際は出力を弱くして慎重に施術がおこなわれます。

ヘモグロビンが主な原因の肌の悩み

  • 顔の赤み
  • ニキビとは違う赤い皮疹
  • 毛細血管が表面から見える
  • 酒皶(しゅさ)

上の4種類の肌の悩みは、血液中に含まれる赤血球の赤い色素であるヘモグロビンが主な原因です。毛細血管の拡張や増殖によりヘモグロビンが増加して、目に見える症状となります。IPL治療でヘモグロビンに熱作用を起こし、血管を収縮させることで改善が目指せます。

酒皶(しゅさ)は、毛細血管の拡張や増殖で顔が赤くなるだけでなく、小さな吹き出物も皮膚に発生します。酒皶は症状により4つの段階に分かれていて、IPL治療で効果が期待できるのは1期の酒皶です。

1期:頬と鼻の皮膚が赤くなり、チクチクすることがあります。酒皶前駆期(しゅさぜんくき)とも呼ばれています。
2期:皮膚が赤く腫れたようになって、細い血管が表皮のすぐ下に見える状態です。血管期とも呼ばれています。
3期:炎症期とも呼ばれていて、皮膚の赤みだけでなく、小さな吹き出物が発生した状態です。吹き出物は少量の膿を含む場合もあります。
4期:鼻の周囲の皮膚が厚くなり、赤くなって団子鼻のように見える状態です。進行期とも呼ばれていて、改善するには金属性の器具で皮膚の外側の層を削り取る処置や、過剰な組織を削り取るための手術が必要になります。

コラーゲンやエラスチンの減少が主な原因の肌の悩み

  • 毛穴の開き
  • 肌の弾力の低下
  • キメの乱れ
  • シワ(ごく浅いもの)

上のような肌の悩みを改善する治療はSkin Rejuvenation(スキンリジュビネーション)と呼ばれています。Skin Rejuvenationを日本語でいうと「皮膚の若返り治療」です。

毛穴の開き、肌の弾力の低下、キメの乱れ、シワ(ごく浅いもの)は、皮膚を支える役割を果たすタンパク質であるコラーゲンやエラスチンの減少が主な原因です。また、偏った食生活や睡眠不足といった生活習慣によってターンオーバーの周期が乱れることも原因のひとつです。

IPL治療では、コラーゲンを生成する機能がある真皮への熱作用でコラーゲンの生成を促進させることができる上、表皮への熱作用でターンオーバーも同時に促進させることができるので、肌の悩みの改善が期待できます。

IPL治療を途中でやめた場合のデメリット

デメリット

IPL治療は、レーザー治療よりも、ターゲットの物質に与える熱作用が弱いとされていて、1回の施術の効果は小さく複数回の施術が推奨されています。肌の悩みの種類にもよりますが、3週間~4週間ごとに5回前後の施術が推奨されていて、回数を重ねるほど、施術の効果が高くなる傾向にあります。

ただし、3週間~4週間ごとに施術する場合、連続10回程度の施術で効果のピークに達するという臨床結果が報告されています。3週間~4週間ごとの施術で、肌の悩みに対する推奨回数を超えた場合は、次の施術までの期間を3カ月~半年あけて再度施術をおこなうことで、皮膚のメンテナンス効果が期待できるといわれています。

シミ、そばかすの施術やSkin Rejuvenationを途中でやめた場合のデメリット

シミ・そばかす・毛穴の開き・肌の弾力の低下・キメの乱れ・シワ(ごく浅いもの) の改善は、3週間~4週間ごとに3回~5回の施術が推奨されています。

施術を途中でやめた場合は、シミやそばかすが薄くなる、毛穴が引き締まる・肌に弾力が出るなど期待する効果が十分に得られない可能性が高くなります。

肝斑の施術を途中でやめた場合のデメリット

肝斑は、肌をこすったり、美容医療の施術など強い刺激を受けると色が濃くなってしまうので、もともとは外用薬・内服薬を用いる治療が推奨されていました。しかし、IPL治療のマシンが進化することで、ごく弱い出力で施術をおこなうことができるようになり、施術によって肝斑の色が濃くなるリスクが低くなったため、IPL治療も用いられるようになりました。

ただし、IPL治療だけで肝斑の改善を目指すわけではなく、外用薬・内服薬と併用する施術が推奨されています。外用薬・内服薬と併用してIPL治療をする場合、3回程度のIPL照射で肝斑が薄くなる効果が期待できます。

IPL治療を途中でやめた場合、肝斑の改善に時間がかかってしまうデメリットが発生します。

炎症後色素沈着の施術を途中でやめた場合のデメリット

炎症後色素沈着は肝斑と同様に、外用薬・内服薬の治療が推奨されていましたが、ごく弱い出力でIPL治療をおこなうことで、色素沈着が薄くなる効果が期待できるようになりました。

IPL治療中も外用薬・内服薬を併用することで相乗効果が期待でき、一方だけの治療をおこなうよりも短期間で炎症後色素沈着を改善できるといわれています。

皮膚の損傷程度により、波長やパルス幅、出力を調整して慎重に施術をする必要があるので、施術回数には個人差があります。ドクターの診断により推奨される施術回数が決定されますが、途中でやめてしまうと色素沈着が薄くならない可能性が高くなります。

また、IPL治療をやめて外用薬・内服薬のみで治療を続ける場合は、改善までの期間が長くなる可能性があります。

複数回の施術が推奨されているIPL治療のメリット

メリット

ダウンタイムがほとんどない

IPL治療はレーザー治療よりも熱作用が小さく、ダウンタイムがほとんどありません。施術直後からメイクも可能ですし、テープを貼る必要もありません

熱傷や炎症後色素沈着などのリスクが低い

IPL治療やレーザー治療は熱作用により肌の悩みを改善に導きますが、熱作用が強いと施術部位の周りの皮膚を傷つけてしまうリスクがあります。

IPL治療は出力を弱く照射できるため、熱作用による熱傷や炎症後色素沈着などのリスクがレーザー治療より低くなるという臨床結果が報告されています。

他の施術と併用することで相乗効果が期待できる

IPL治療には併用することで肌の悩みへの相乗効果が期待できる施術があります。 ピーリングやイオン導入、レーザー治療、内服薬・外用薬といった施術を併用することが多く、IPL治療と併用治療がセットになっている医療機関もあります。

肌の悩みに対して複合的な作用が期待できる

IPL治療と同じような肌の悩みの改善が期待できるレーザー治療では、一種類の波長を用いて照射をおこないます。そのため、改善が期待できる肌の悩みは一種類のみであることがほとんどです。

一方、IPL治療は複数の波長を用いて複数の肌の悩みを1回の施術で改善に導くことができます。例えば、シミの改善を目的として施術をおこなった場合、まずはシミの原因であるメラニンを損傷させる波長を照射します。次に、不要な波長をカットするフィルターを交換して真皮に働きかける波長を照射します。結果、1回の施術で、シミを薄くするだけでなく、コラーゲンの生成を促進しキメを整えたり、肌のハリの改善する効果も同時に期待できます。

肌の悩みへの施術方法を迷ったら医療機関へ相談

ドクターに相談

肌の悩みを改善する施術は、照射治療だけでもIPL治療の他にレーザー治療、高周波治療、HIFU治療といった様々な種類があります。施術によって、料金や改善までの期間、リスクが異なるので、どの施術をおこなうべきか決めかねてしまう方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

肌の悩みの改善に必要な施術回数や料金、改善までの期間、リスクは、本人の体調や肌質、肌の悩みの原因がどの程度なのかによってどうしても個人差が出ます。どの施術をおこなうべきか迷っているのであれば、医療機関に相談することで、肌の状態を診察した上で、安く済ませたい、早く済ませたいなど希望に沿って最適な施術を提案をしてもらえます。