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目もとにボツリヌス注射をおこなう美容医療の施術と一般医療による施術の違い

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目もとにボツリヌス注射をおこなう美容医療の施術と一般医療による施術の違い

ボツリヌス注射は、注入した部位の筋肉の緊張をやわらげて弛緩させる作用があります。目の周囲に存在する筋肉へ注入することで、美容医療の分野では目もとの印象を整える効果が期待できるほか、一般医療においては斜視や眼瞼痙攣の改善を目指すことも可能です。

ただし、製剤を注入する量や注入する部位は、受ける施術の種類によって異なります。また、ボツリヌス注射はダウンタイムがほとんどないことから気軽に受けられる施術とされますが、注入量や注入部位を誤ると不自然な表情になるといったリスクが存在します。

そのため、より安心して施術を受けるためには、美容医療と一般医療でそれぞれ受けられるボツリヌス注射を使用した目の治療の種類や、適切な注入量・注入部位について事前に知っておくことが大切です。

ボツリヌス注射の成分と作用

ボツリヌス注射で使用される薬剤の成分は、食中毒を引き起こす原因菌でもあるボツリヌス菌から毒素を分解して、タンパク質の一種であるボツリヌストキシンを抽出したのもです。人体に害を及ぼす有毒な成分は取り除かれているため、人体への影響はありません

ボツリヌス注射は注射針を使用して筋肉へ薬剤の注入をおこなう施術です。ボツリヌストキシンが神経と筋肉のつなぎ目に作用することで、神経から筋肉に放出される神経伝達物質のアセチルコリンの働きが抑制されて、筋肉の緊張をやわらげることができます。

ボツリヌストキシンにはA型~G型の7種類が存在しますが、毒素を分解する前の状態では、A型・B型・E型・F型の4種類が人体に病原性を持っていて、摂取した場合は発熱や嘔吐といった症状を引き起こす特徴があります。毒素を分解した後に医療の分野で使用される製剤はA型とB型です。

美容医療におけるボツリヌス注射は、筋肉の緊張を弛緩させることで表情ジワやエラ・ふくらはぎの張りを改善に導く治療で主に使用されます。一方で、眼科などの一般医療の分野では、片方の視線が対象物を向いていない斜視や、まぶたが自身の意思とは関係なく痙攣してしまう眼瞼痙攣(がんけんけいれん)の治療としても用いられています。

ボツリヌス製剤は生理食塩水で希釈して使用

ボツリヌス注射の製剤は瓶に入っており、量の表し方はmlやccではなく「単位」で表されます。製剤の用量には50単位製剤と100単位製剤があって、製剤は粉末状のため、施術で使用する際は生理食塩水で希釈して注入します。

注入する部位によって使用する製剤の種類や量が異なり、次のように、希釈で使用する生理食塩水の量によってボツリヌス製剤の濃度が変化します。希釈で使用する生理食塩水の量が多くなるほど、実際の施術で注入するボツリヌス製剤の濃度は薄くなります

希釈で使用する生理食塩水の量 希釈後のボツリヌス濃度(注入量0.1mlあたり)
50単位製剤の場合 100単位製剤の場合
1.25ml 4.0単位 8.0単位
2.0ml 2.5単位 5.0単位
2.5ml 2.0単位 4.0単位
4.0ml 1.25単位 2.5単位
5.0ml 1.0単位 2.0単位
8.0ml - 1.5単位

ボツリヌス注入を繰り返しおこなうことで生じる中和抗体

ボツリヌス注入を繰り返しおこなった場合、タンパク質を減らし活性を中和させようとする中和抗体が体内で生成されることにより、ボツリヌストキシンの作用が減衰することがあります。 そのため、ボツリヌス注入を再度おこなう場合は、部位・症状に関わらず前回の注入から3カ月~4カ月の期間をあけるのが一般的です。

目の周囲にボツリヌス注射をする方法・注射時の痛み

目の周囲に対するボツリヌス注射の施術では、目の周囲を円状に囲っている眼輪筋(がんりんきん)という表情筋に製剤の注入をおこないます

製剤の注入は一般的に採血や点滴、予防接種などで用いられる注射針が使用されていて、個人差はありますが、注射針を挿入する際にチクッとした痛みを感じるとされます。希望によって麻酔クリームや笑気麻酔を使用できる医療機関もあるので、痛みが苦手な方は施術を受ける前に医療機関へお問い合わせください。

目の周囲にボツリヌス注射をおこなう美容医療の施術

ボツリヌス注射による目尻のシワ治療

シワの主な種類は、皮膚のたるみで生じるシワ、乾燥や紫外線によって生じるちりめんジワ、表情筋のくせにより生じる表情ジワがあります。 目尻のシワは表情ジワに分類されるケースがほとんどです

笑う・怒るといった表情の変化を繰り返し、表情筋を日常的に長期間使用することで、緊張した表情筋が元に戻らなくなり、シワが徐々に固定されることで、目尻に表情ジワが生じます。

目尻側の眼輪筋のそれぞれ異なる位置に複数回ボツリヌス注射を施し、眼輪筋の緊張をやわらげて弛緩させることで、シワを生じにくくすることができます。 ボツリヌス注射の持続期間は3カ月〜4カ月なので、効果を持続させたい場合は定期的に施術を受ける必要があります。

ボツリヌス注射によるタレ目形成

下まぶたにある眼輪筋にボツリヌス注射を施すことで、下まぶたを支える力が弱まります。筋肉が弛緩して下まぶたの位置が下がることによって、目が大きく見えるようになったり、タレ目がちな印象の目もとへ導くことができます。

ボツリヌス注射によるタレ目形成の注入部位は以下の3つがあり、それぞれ期待できる効果も異なります。

注入する眼輪筋の位置 期待できる効果
目尻側の下まぶた タレ目の強調
下まぶたの中央 ぱっちりとした印象の目もと
目尻側の下まぶた+下まぶたの中央 ぱっちりとしたタレ目で、目の縦幅が強調された印象の目もと

ボツリヌス注射によるタレ目形成に永続的な効果はなく、持続期間は3カ月~4カ月ほどなので、タレ目のラインを維持するためには継続的に施術を受ける必要があります

永続的な効果が期待できるタレ目形成の方法としては、目尻側の皮膚を切開して目の横幅を大きくする目尻切開、下まぶたの結膜側を切開して下まぶたの位置を下げる下眼瞼下制術(かがんけんかせいじゅつ)、別名「グラマラスライン」という方法があります。

目尻のシワ治療とタレ目形成のリスク・注意点

ボツリヌス注射の施術は、麻酔なしでの治療時間が5分~20分、麻酔を使用しての治療が20分~40分と短い一方で、注入量や注入部位を誤ると不自然な表情になったり、眉毛の位置が下がる眉毛下垂が生じることがあります。

また、ボツリヌスの注入部位に一時的な腫れ・赤み・内出血が生じることがありますが、2日~1週間ほど収まるケースがほとんどです。

ダウンタイムはほとんどありませんが、製剤の注入直後は生理食塩水の影響で目もとに軽微なふくらみを感じることがあります。しかし、生理食塩水は1時間~2時間ほどで体内に吸収されるので、短時間で収まる傾向です。

目尻のシワ治療とタレ目形成の注入量・料金

ボツリヌス注射による目尻のシワ治療とタレ目形成は保険が適用されない自由診療なので、費用は全額自己負担となります。

自由診療にあたる施術は、料金を各医療機関で決定できるため、同様の施術でも医療機関によって設定されている料金が異なります。

施術の種類 目尻のシワ治療 タレ目形成
料金 両目:16,000円~50,000円 両目:18,000円~75,900円
注入量 両目:12単位~24単位 両目:8単位~16単位
注入部位 目尻周囲の眼輪筋 下まぶた周囲の眼輪筋

目の周囲にボツリヌス注射をおこなう一般医療の施術

ボツリヌス注射はもともと眼科などの一般医療で、次のように斜視や眼瞼痙攣の改善を目的として用いられていた治療方法です。後にシワの改善などに効果があることが厚生労働省に承認されたため、美容医療の分野でも応用されるようになりました。

ボツリヌス注射による眼瞼痙攣の治療

眼瞼痙攣とは、眼輪筋が自分の意思とは関係なく収縮し、まぶたが痙攣してしまう目の疾患です。不要なまばたきが増えたり、症状が悪化すると目が開かなくなることもあります。

眼瞼痙攣のセルフチェック項目としては、以下のような症状があげられます。

  • まばたきの回数が増えた
  • まぶしさを感じやすくなった
  • 目を自力で開けるのがつらい
  • 目の周りがピクピク痙攣する
  • 日常的に目の乾きを感じる

眼輪筋の収縮によりまぶたの痙攣が生じる理由としては、神経から分泌される伝達物質の異常が原因といわれています。そのため、神経の伝達をブロックする働きがあるボツリヌス注射をおこなうことで、筋肉の緊張をやわらげて、眼瞼痙攣の改善を目指すことができます

ボツリヌス注射による斜視の治療

斜視とは、両眼で同じ方向を見つめることができず、本人の意思とは関係なく片眼の視線が対象物に向いていない症状を指します。

小児期に生じる共同性斜視の原因は不明なものが多いですが、遺伝で斜視になる場合や、神経や眼球(視線)を動かす働きがある筋肉に麻痺があることで斜視になるケースもあります。成人以降で後天的に斜視になる場合は、頭部の外傷や筋肉の異常・麻痺が原因で生じる麻痺性斜視と呼ばれています。

斜視には、大きく分けて外斜視・内斜視・上斜視・下斜視の4種類があります。次のように、斜視の状態によってボツリヌス注射をおこなう筋肉の部位は異なりますが、いずれにしても、ボツリヌストキシンの作用によって一時的に眼球の周囲にある筋肉を麻痺させることで、視線を正常な位置に保つ効果が期待できます

斜視の分類 視線の外れ方 注入部位
外斜視 外側に外れる 外直筋(眼球の外側)
内斜視 内側に外れる 内直筋(眼球の内側)
上斜視・下斜視 上側・下側に外れる 上直筋・下直筋(眼球の上下)

眼瞼痙攣と斜視の治療のリスク・注意点

ボツリヌス注射による眼瞼痙攣では、副作用として目の周囲の筋力が弱くなりすぎてしまい、まぶたを閉じることが困難になる閉瞼不全が生じることで、目が乾いたり涙の分泌量が増える場合があります。また、まぶたを開けることが困難になる開瞼不全、物が重複して見える複視、針の注入部位における皮下出血などのリスク・副作用があります。

歳月の経過とともにボツリヌス注射の効果が減少し、まぶたが元の状態に戻ることで上述した副作用は収まる傾向にあります。

眼瞼痙攣と斜視の治療の注入量・料金

ボツリヌス注射による眼瞼痙攣と斜視の治療は、厚生労働省承認されている施術のため、保険が適用されます。

施術の種類 眼瞼痙攣 斜視
注入量 片目: 1.25単位~2.5単位×6部位
1カ月の合計注入量は45単位まで
1部位: 1.25単位~5.0単位1回の施術につき最大で10単位まで
1割負担※ 両目: 約5,200円 両目: 約5,200円
3割負担※ 両目: 約17,000円 両目: 約17,000円

※50単位のボツリヌス製剤を使用した場合

ボツリヌスの製剤が入っているボトルには50単位と100単位の2種類があり、50単位が47,154円、100単位が84,241円と料金が決まっていて、さらに施術を受ける際は製剤の注入手技料や検査代などが別途でかかります。

一度希釈した製剤は、菌の増殖を防ぐために同一人物に対してその日のうちに使い切らなければならず、実際に注入した量ではなくて、希釈をおこなうために使用した製剤の数量によって料金が変化します。

改善したい症状によって治療を受ける医療機関が異なる

目の周囲におこなうボツリヌス注射の施術は、美容医療では目尻のシワ治療やタレ目形成を目指す施術で、一般医療では保険が適用される眼瞼痙攣や斜視の治療で主に使用されます。そのため、改善を目指したい症状によって、美容の医療機関、または眼科など一般の医療機関を選ぶ必要があります。

製薬会社の認定医やボツリヌス注射の指導医を探す

ボツリヌス注射は製剤の注入量や注入部位を誤ると、効果を実感できないだけではなく、不自然な表情になったり眉毛下垂が生じるリスクがあります。

より安心できる施術を受けるためには、ボツリヌス製剤の製薬会社で実施されるセミナーや講習を受講した施術者に授与される認定書を有したドクターや、ドクターに対して施術の手技に関する指導をおこなう指導医が在籍している医療機関を選ぶのもひとつの選択肢です。

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