理想の目もとや口もとを目指すことができる医療アートメイク(以下:アートメイク)は、汗や水などで崩れる心配がないので運動や食事の際でも美しい状態をキープできます。
長いダウンタイムを伴わない施術であることから気軽に受けられる施術とされる一方で、アートメイクはすぐに除去や修正をおこなうことができないため、失敗を防ぐためには眉・アイライン・リップそれぞれの施術の特徴やデザインの種類について知っておくことが大切です。
また、アートメイクで色ムラのない仕上がりを目指すためには施術を複数回受ける必要があり、持続期間にも限りがあります。そのため、事前に必要な施術回数を知ることで仕上がりまでにかかるおおよその期間を把握することができ、持続期間を経過して退色が進んだ際の対処方法について知ることが美しい仕上がりを維持することにつながります。
もくじ
アートメイクとは皮膚のごく浅い層である表皮(0.01mm〜0.03mm)に対して、医療用の針(ニードル)をつかって微細な傷をつけながら染料を注入することで、皮内に色素を定着させて主に眉・アイライン・リップメイクを施す医療行為です。希望の部位にアートメイクを施すことで理想とする目もとや口もとを目指すことができるほか、通常のメイクにかかる時間を短縮できます。
アートメイクは通常のメイクと異なり、運動によって汗をかいたときやプールで泳いだ際などでも美しい目もとや口もとを保つことができます。昨今では部位ごとに不自然さがなく立体感のある仕上がりを目指せる施術の技法が普及したことで、より本物に近い毛並みや色味の濃淡を再現することが可能です。
アートメイクで染料を注入する際に使用する専用の針(ニードル)には、さまざまな種類が存在します。針の種類は希望するデザインなどに応じて施術者が選択して使用します。
針型 | 1本〜7本が1組になった針 眉を仕上げる場合は一般的に3本針のタイプを使用する傾向にある |
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平針型 | 主に染料を均一に注入する場合に使用する |
平斜め針型 | 斜めに角度がついた針 グラデーションを表現する際や連続したラインを描くのに適している |
アートメイクには、手作業による「ニードル注入」とアートメイク専用のマシンを用いた「マシン注入」の2種類の施術があり、それぞれの施術方法によって仕上がりの特徴が異なります。
ペン型の形状をしたアートメイク施術用の針を使用して、施術者が手作業で染料を注入していく手法がニードル注入です。施術部位を確認しながら1針ずつ丁寧に染料の注入をおこなうため、マシン注入では難しいとされる自然な毛の流れや繊細な色味のグラデーションなどを再現できるメリットがあります。
しかし、仕上がりは施術者の技術や経験によって大きく左右されるため、アートメイク専門の医療機関やアートメイクの資格・研修経験などを有した施術者のもとで施術を受けることが望ましいといえます。
マシン注入とは、先端部分についた針がミシンのように自動で振動するアートメイク専用のデジタル機器によって、染料の注入をおこなう手法です。ニードル注入と比べて施術時間が短い傾向にあり、一定の深さの間隔で染料の注入をおこなえるため施術中の痛みも少ないとされています。
仕上がりは色ムラが生じにくくパウダーで描いたような柔らかな印象になる傾向で、痛みが苦手、短時間で施術を終えたい、色ムラが気になるといった方に向いている手法といえます。針の注入速度や強弱を調節して手のような動きを再現できるマシンも開発されていますが、本物に近い自然な毛並みや色味の濃淡といったデザインの仕上がりは、経験を重ねた熟練の施術者によるニードル注入には及ばないといわれています。
アートメイクで使用されている染料には黒・茶・赤・白・黄などさまざまな色の種類があり、それらを混ぜ合わせることで理想の色味に近づけます。染料には国内産・外国産ともに数多くの製品がありますが、いずれも厚生労働省から認可されているものはありません。
マスカラやアイシャドウなどの一般的な化粧品と同様に、アートメイクの染料にはいずれも酸化鉄や二酸化チタンといった金属成分が含まれており、安価なものほど金属成分の含有量は多いといわれています。
一般的には、日本の厚生労働省にあたるFDA(米国食品医薬品局)認可の染料は金属成分の含有量が少なくて、施術で皮内へ注入しても基本的に害はないとされています。また一方で、KFDA(韓国食品医薬品安全庁)認可の染料は人体に悪影響を及ぼす恐れのある細菌の滅菌が義務付けられていることから、安全性が高いのはKFDA認可の染料と示す医療機関も少なくありません。
医療機関によって取り扱っているアートメイク染料の種類は異なるので、施術を検討している医療機関がどのような染料を使用しているか気になる方は事前に各医療機関のお問い合わせ先から確認してください。
酸化鉄や二酸化チタンなどの金属成分を多く含むアートメイクの染料はMRI検査の際に生じる磁場の影響を受けて熱を持ち、施術を受けた部位がやけどする可能性があるため、アートメイクをしている方はMRI検査を受けられない場合があります。
施したアートメイクの形状が円形に近いと、MRI検査で生じる磁場によって渦状の電流が発生して、染料を注入した部位が発熱しやすくなるとされています。そのため、上下のアイラインにアートメイクが施されている場合は、目を開いた状態だとアートメイクの形状が円形になり発熱のリスクを伴うので、目を閉じてアートメイクの形状を直線の形状に保った状態でMRI検査を受けるなどの対策が必要となる可能性があります。
含まれている金属成分が微量の染料は、アートメイクの施術後でも問題なくMRI検査を受けられるとされていますが、やけどのリスクを防ぐためにMRI検査を受ける際は事前にアートメイクをしている旨を医療機関で必ず伝えて相談してください。
国内においては、厚生労働省からアートメイクの施術は医療行為であると認定されています。以前はエステサロンなどで医師免許を持たない施術者が安価でアートメイク施術をおこなっていましたが、器具の使い回しによる感染症や知識不足の施術者のもとで誤った施術を受けて、染料を真皮へ注入されるといったトラブルが多発したことを背景に、安全性の確保を目的として施行されました。
そのため、国内において現在アートメイクの施術をおこなうことが認められているのは、ドクターとドクター指導のもとで施術をおこなう看護師のみで、それ以外の業者による施術は医師法違反とみなされます。誤った施術を受けたことによる感染症などのリスクを防ぐためにも、アートメイクは必ず医療機関で施術を受けてください。
アートメイクはその施術の目的によって2種類に分けられます。美容医療でおこなわれる施術は、主に眉やアイライン、リップに対して審美目的で施す「コスメティックタトゥー」と呼ばれるものです。
一方、皮膚の一部の色が薄くなってしまう白斑などの皮膚疾患や、無毛症などで欠損した眉毛、病気や事故により失った乳輪・乳頭など、ダメージを受けた部位を再現する医療補助技術としてのアートメイクは「トリートメントタトゥー」と呼ばれています。
どちらの施術も針を使用して表皮に染料を注入する施術で医療行為にあたり、ドクターまたはドクター指導のもとで施術をおこなう看護師以外の施術者によるアートメイクは医師法違反となります。
アートメイクとよく比較される対象がタトゥー(刺青)です。表皮に染料を注入するアートメイクに対して、タトゥーは表皮よりも深い層である真皮へ染料を注入するという点が異なります。
アートメイクで染料を注入する表皮では約6週間をかけて新陳代謝による皮膚細胞の生まれ変わり(ターンオーバー)が繰り返しおこなわれており、定着させた色素が歳月の経過とともに少しずつ皮膚の外側へ押し上げられて、やがて垢などの老廃物とともに体外へ排出されていきます。
そのため、アートメイクの持続期間は眉・アイライン・リップのいずれも施術完了から1年~3年が目安です。色素が完全に消えることはないものの退色が進行する早さには個人差があって、代謝の良い人ほど皮膚細胞の生まれ変わりが早いため色素が退色しやすい傾向にあります。
一方で、真皮はターンオーバーがおこなわれない皮膚の層であるため、注入した染料が自然に体外へ排出されることはなく皮膚の内部に残り続けることから、タトゥーの持続期間は半永久的とされます。なお、タトゥーの除去はそれぞれの色素に対応している医療レーザーや、外科手術での皮膚移植などによっておこなわれます。
アートメイクの施術を受けて歳月が経過し、色素の退色によって薄さが気になってきた際は、レタッチ(修正)の施術を受けることで退色を補うことが可能です。色素が薄くなってしまった部位に再び染料を注入するリタッチの施術を受けることで、色味を整えたりデザインの微調整をおこなって美しいアートメイクの状態を維持することができます。
レタッチの施術は眉・アイライン・リップの部位を問わず前回の施術を受けてから1年~1年半後、または施したアートメイクの薄さが気になってきた際におこなうことが推奨されています。
希望する眉・アイライン・リップそれぞれのデザインによって厳密な回数は異なりますが、アートメイクの施術でしっかり色素が定着した美しい仕上がりを目指すためには複数回の施術が必要となるケースがほとんどです。1回の施術でしっかり色素が定着するケースは少なく、初回の施術では希望するデザインの土台作りをおこなって、2回~4回ほど施術を繰り返し受けることで理想の仕上がりを目指していくのが一般的です。
また、アートメイクは針で表皮に微細な傷をつけると同時に染料の注入をおこないますが、施術の際に出血が生じた場合、注入した染料が血液とともに体外へ流れ出てしまうことで色素が定着しにくくなるといわれています。なかでも唇は皮膚が薄く、皮下の細かい血管が施術中に傷つくことで出血が生じやすいため、色素が定着しにくい部位とされています。
2回目以降のアートメイク施術を受ける際は、前回おこなった施術によって傷ついた表皮が2週間~3週間ほどをかけて治癒した以降のタイミングが推奨されています。2回目以降は前回と同様の部位に再び染料を重ねて注入することで色素をしっかりと定着させたり、希望の仕上がりに合わせて細かいラインや毛並み、色味の濃淡といったデザインの微調整をおこなっていきます。
また、アートメイクは施術を複数回受けることが一般的であるため、2回の施術を1セットの施術としている医療機関も少なくありません。
日本でアートメイクがおこなわれるようになったのは、1980年代といわれています。当時は「汗や水で落ちないメイク」を目的としていたため、施術においては均一に染料を注入する手法が用いられていて、立体感のない不自然な仕上がりがほとんどでした。しかし、2010年代以降からはアートメイク施術の技術の発展と普及によって細かい毛並みや色味の濃淡などを再現できるようになったことで、立体感のある自然な仕上がりを目指せるようになりました。
以下は、昨今のアートメイクにおいて、眉・アイライン・リップの部位ごとに使用されている主な技術となります。
1D(エリア) | 2D(エリア+グラデーション) |
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「エリア」とも呼ばれるテクニックで、眉頭から眉尻まで色味の濃淡を表現せず均等に染料を注入して仕上げる技術 アイブロウペンシルで描いたようにシンプルな仕上がりで、立体感は出にくい |
基本となる1Dの技術に加えて、眉頭から眉尻にかけてのラインにグラデーションを施すことで立体的な見た目の眉に仕上げる技術 |
3D(ストローク) | 4D(グラデーション+ストローク) |
「ストローク」とも呼ばれるテクニックで、眉の細かい毛並みを1本ずつ描くことで自然な毛流れを再現し、本物の眉に見えるように仕上げる技術 | 2Dと3Dの両方を用いた、高い技術が必要な毛の描き方 2Dをベースに3Dを施すことで自然な毛流れと立体感を再現し、より本物に近い質感の眉に仕上げる |
眉のアートメイクで用いられている技術は医療機関によって異なります。それぞれの技術によって仕上がりの特徴が異なるので、施術を検討する際は自身が希望する眉のイメージを再現できる技術が用意されているか各医療機関で確認してください。
眉に施すアートメイクのデザインを決める際は、目盛りのついたコンパスのような専用の器具を使用してガイドラインを描いた後、理想とする仕上がりをもとにラインの太さや形状、色味、グラデーションの有無などを確認していきます。また、施すデザインは一般的に人が美しいと感じる次の「黄金比率」をベースに、一人ひとり異なる顔の骨格や輪郭に合わせて微調整することで「眉だけが浮いて見える」といったデザインの失敗を防ぐことが可能です。
鼻筋から自然につながるラインである、小鼻の延長線上に眉頭があると骨格が際立って見えます。眉頭は顔の印象を大きく左右する部位とされていて、このラインが中心に寄るとキリッとした印象、中心から離れると優しい印象に仕上がります。
黒目の外側から目尻までの間の真上に眉山を設定すると、バランスの良い自然な仕上がりになるとされます。眉山が目尻よりも外側に出ると顔全体が横に広がって見えて、眉山が黒目よりも内側に寄ると顔のパーツが中心へ寄った印象になります。
口角と目尻の延長線上に眉尻を設定すると引き締まった印象の顔立ちに仕上がります。小鼻と目尻の延長線上まで長めに眉のラインを引いて、眉尻の高さは眉頭と同じ、または眉頭よりもやや上が美しく見える理想とされているデザインです。
シンプルライン | シンプルテールライン |
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まつ毛の隙間を埋めるように細かく染料を注入して、自然なアイラインを再現する仕上げる技術 まつ毛の隙間が埋められることで、まつ毛が濃く多く生えているように見える |
シンプルラインに加えて、目尻部分を長く伸ばした「テール」と呼ばれるデザインを施す技術 アイラインの幅はシンプルラインよりも太く、メイクでアイラインを描いたような印象的な目もとに仕上がる |
テールライン+アイシャドー | 男性アイライン |
テールのデザインに加えて、まぶたへ向かって濃淡をつける「グラデーションテクニック」を施すことで、アイシャドーをしているような質感を再現する技術 アイラインが強調されて、存在感のある目もとに仕上がりやすい |
主に男性を対象としたアイラインのアートメイク技術 メイク感が出ないように、まつ毛の根元に線状ではなく点状に染料を注入することで、不自然さのない印象的なアイラインに仕上げる |
アイラインへのアートメイクは、一重や二重といったまぶたの形を問わずに施術をおこなうことができます。染料を注入できるアイラインの部位は、アウトライン(まつ毛の生え際より外側)、ナチュラルライン(まつ毛の生え際に沿ったライン)、インライン(まつ毛の生え際より内側)の3箇所で、施術をおこなう際は上下のアイラインをセット、または上下のいずれか片方を選択することも可能です。
上まぶたの中心から目尻にかけてのラインを少しはね上げたデザインにすると目尻が引き締まってキリッとした印象の目もとに仕上がりやすく、上下の目尻側に太めにアイラインをぼかして施すと優しい印象の目もとを演出できます。また、一般的に美しく見えるとされる目の縦幅と横幅のバランス、目の縦幅と上まぶたのバランスを表した次の黄金比率を参考にデザインの微調整をおこなうことで、自分の顔立ちに似合うアイラインを決めることが可能です。
目の縦幅は上まつ毛の生え際から黒目の下までの長さ、横幅は目頭から目尻までの長さを指します。目の縦幅と横幅のバランスは「1:3」が一般的に美しく見えるとされ、横幅に対して縦幅が足りない方はアートメイクで上まぶたのアイラインを太めに、縦幅に対して横幅が足りない方はアイラインを目尻まで長めに引くと黄金比率に近づきます。
まぶたの幅とは、眉から上まつ毛の生え際までの長さを指します。目の縦幅に対してまぶたの幅が広い場合は、アートメイクで上まぶたのアイラインを太めに施して目の縦幅を広げることで、一般的に美しく見えるとされるバランスの「1:1」に近づきます。
フルリップ | リップライン |
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唇全体に染料を注入して、もともとの唇の色と形をカバーする技術 唇の山を作ったり明るく鮮やかな色味を施したりと、唇の印象を大きく変えることが可能 |
リップライン(唇の輪郭)のみに染料の注入をおこなう技術 唇の形がぼやけてきた方は輪郭を補えることができて、唇が薄い方は立体感のある唇に仕上げることが可能 |
ハーフラインリップ | シャドーリップ |
リップラインを施して唇の輪郭を整えた後、内側に向かって色味をグラデーションをつけることで、存在感のある印象的な唇に仕上げる技術 | リップラインのように唇の輪郭を強調せずに、メイク感のない自然な見た目に仕上げる技術 |
医療機関によって多少異なりますが、リップのアートメイクで用いられるデザインの技法は主に上記の4種類があります。それぞれの技術ごとに仕上がりの特徴があるので、自身が理想とする唇のイメージにあわせて選択することが大切です。
口もとは上唇と下唇の比率が「1:1.3〜1.5」が一般的に美しく見える比率とされており、たとえば、ボリュームのあるふっくらとした唇に仕上げたいからといって、過度なオーバーラインのデザインを施すとバランスが崩れてしまい顔全体で唇だけが浮いて見えるなどの違和感が生じる可能性があります。
リップのアートメイクにおけるデザインの失敗を防ぐためには、自身が好みのデザインと似合うデザインは異なる場合があることを理解して、施術者の客観的な意見を取り入れながら形状や色味などを決めることが大切といえます。
リップのアートメイクを施す際、自分の肌色に似合わない色味を選んでしまうと、唇が浮いて見えたりしてしまう可能性があります。日本人の肌は多くの場合「黄色がかったイエローベース」または「青みがかったブルーベース」のいずれかに分類されていて、それぞれのタイプごとに似合うリップの色味も異なるため、自身の肌色に対して染料の色味がどう見えるか確認しながら選択する必要があります。
また、アートメイクはすぐに除去することができず、色味の見え方や発色の程度には個人差があるので、濃くて鮮やかな色味を希望する方は施術者とよく相談した上で客観的なアドバイスも受けつつ慎重に決めてください。
眉・アイライン・リップラインのほか、などもありますが、頭皮におこない髪に見立てるヘアアートメイクもあります。
年齢による髪の毛の減少や、もともとボリュームが少ないことで悩まれている方に有効で、頭部の地肌を目立たなくすることができ、額の髪の毛の生え際にアートメイクを施すことで小顔効果も期待できます。また、手術後の傷跡を隠したり、円形脱毛症など一時的に髪が生えなくなってしまった部位など、部分的な施術ができます。
染料の注入方法には、坊主頭にもおこなうことができる点状に注入する方法と、髪の毛の流れに沿ってライン上に注入する方法があります。髪の毛の生え際、つむじや分け目といった髪が薄いことで地肌が見えやすい部位に施術がおこなわれます。
アートメイクの施術は眉・アイライン・リップのいずれも麻酔を使用しておこなわれるため、麻酔が十分に効いている間は施術中に痛みを感じることはほとんどありません。アイラインとリップは刺激を感じやすい非常にデリケートな部位であることから、麻酔クリームに加えて局所麻酔も使用して施術をおこなうことがあります。
痛みを感じる程度には個人差があり、生理中で外部からの刺激に肌が敏感になっている際や当日の体調によっても変わるので、施術を受ける前日は十分に休息を取るようにしてください。また、痛みが苦手な方は、施術を検討している際に複数の麻酔を使用する医療機関を選択すると良いでしょう。
施術を受けた当日から3日前後は、施術部位にヒリヒリとした痛みを感じることがあります。また、出血・内出血によって腫れや赤みが施術部位に生じる場合がありますが、2日~7日ほどで落ち着く傾向です。
染料の注入をおこなった部位以外のメイクは施術直後から可能とされていますが、施術部位への刺激を防ぐために1週間程度はクレンジング剤が使用できないため、メイクは控えることが推奨されています。ダウンタイム中は施術部位にかさぶたが生じることによって一時的に色味が濃く見えますが、はがれ落ちるとアートメイク本来の色味に落ち着くとされています。
ダウンタイム中に生じたかさぶたを無理にはがしてしまうとアートメイクの色素も一緒にはがれてしまうことがあるため、自然にかさぶたがはがれるようになるまで必要以上に触らないよう注意してください。また、感染症のリスクを防ぐために、アイラインにおけるアートメイクのダウンタイム中は、まつ毛エクステやつけまつ毛・まつ毛パーマなどは控えてください。
施術直後(当日) | ・施術部位に赤みや腫れがあらわれる ・痛みを感じる場合がある |
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2日~3日後 | ・赤みと腫れが落ち着きはじめる ・眉にかさぶたができて痒みが生じる ・かさぶたによって一時的に眉が濃くなったように感じられる |
5日~7日後 | ・かさぶたが剥がれはじめる ・自然な色味に落ち着きはじめる |
施術直後(当日) | ・施術部位に赤みや腫れがあらわれる ・痛みを感じることがある |
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2日~4日後 | ・赤みや痛みが落ち着きはじめる ・かさぶたが生じてアイラインの色味にムラがあるように感じられることがある |
5日~7日後 | ・かさぶたが剥がれはじめる ・アイラインの色味が馴染みはじめる |
施術直後(当日) | ・唇に腫れが生じる ・ヒリヒリとした痛みを感じる場合がある |
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2日~3日後 | ・腫れが少し落ち着きはじめる ・痛みが落ち着きはじめる ・唇にかさぶたが生じたり乾燥する |
4日~7日後 | ・腫れが落ち着く目安 ・かさぶたが剥がれはじめる ・唇が乾燥して薄皮が剥ける場合がある |
10日~14日後 | ・唇の乾燥が落ち着く目安 ・唇の色味が馴染みはじめる |
施したアートメイクを目立たなくさせる方法としては、次のように特定の色素に反応して作用する医療レーザー、除去クリームの使用、肌色修正といった除去方法がありますが、いずれも色素を完全に取り除くことは困難です。
除去方法 | 適応 | 金属成分を多く含む染料の除去 |
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ピコレーザー | 主に眉やアイラインで使用される黒い色素 | |
Qスイッチヤグレーザー | 主に眉やアイラインで使用される黒い色素 | |
CO2レーザー | 色素の色を問わず赤・緑・黄色なども可 | 〇 |
除去クリーム | 色素の色を問わず赤・緑・黄色なども可 | 〇 |
外科手術 | 色素の色を問わず赤・緑・黄色なども可 | 〇 |
肌色修正 | 色素の色を問わず赤・緑・黄色なども可 | 〇 |
アートメイクの除去において、一般的に選択される傾向にある方法がピコレーザーやQスイッチレーザーです。ピコレーザーは極めて短い照射時間でレーザーを照射した際に生じる衝撃波によってメラニンを細かく砕くことが可能で、Qスイッチヤグレーザーはメラニンだけに反応して熱作用をもたらすレーザーによって周囲の組織を傷つけることなく除去を目指せる方法です。
どちらの方法も表皮に存在するアートメイクの色素に反応して作用するレーザーを照射することで色素を目立たなくさせることが可能ですが、眉やアイラインに使用される黒い色素と比べて、主にリップで使用される赤い色素には反応しにくいとされています。また、一度の施術で完全な除去を目指すことは困難で、色素を目立たくさせるためには施術を繰り返し受ける必要があります。
C02レーザー(炭酸ガスレーザー)は、皮下に存在する水分と反応して高熱を生じさせるレーザーを照射することで、照射部位の皮膚組織を瞬時に蒸散(気化)させる作用があります。色素のある部位を表皮ごと削り取るようにして除去する方法で、赤などのカラフルな色素に有効、金属成分を多く含む染料の除去も可能とされます。
ただし、レーザーの照射によって生じる熱で照射部位の周囲の組織が損傷するため施術直後は肌に赤みや凹みが生じる傾向にあり、1カ月~3カ月ほどのダウンタイムを伴う傾向にあります。
外用薬として、表皮のターンオーバーを促す作用が期待できる成分を含んだアートメイク専用の除去クリームなども存在しますが、色素が薄くなるまでには半年〜1年ほどかかり、それまで根気よく使用し続ける必要があります。色素の色を問わず金属成分を多く含む染料も適応とされる一方で、皮膚に赤みが残るなどのリスクも少なくありません。
メスを使用した外科手術によって、アートメイクの色素が定着している部位を皮膚ごと切除した後に切開部位の縫合をおこなう方法や、皮膚移植によって除去する方法も存在します。外科手術による除去は色素の色や金属成分の有無などを問わない方法ですが、皮膚の切開を伴うため長期的なダウンタイムが必要である点に加えて、施術部位に傷跡が残るリスクを伴います。
以前施したアートメイクの上から、肌色の染料を注入することで色素を目立たなくさせる方法です。自身の肌色とは完全に合うケースが少なく違和感が生じる可能性があり、また施術者の技量によって仕上がりが左右されることから、リスクの高い方法とされています。そのため、肌色修正の検討は慎重におこない、施術を受ける際は肌色修正の施術件数が多くて実績のある医療機関や施術者を選ぶことが重要といえます。
これらの除去方法はいずれも身体への負担に加えて金銭的な負担もかかるため、アートメイクを施す際は形状や色味といったデザインについて施術者と入念に確認をおこなうことが重要です。
アートメイクの施術で使用される針などの医療器具は、衛生面の観点から通常は使い回されることはありません。しかし万が一、施術者が一度使用した針の使い回しなどをおこなっていた場合、血液感染によるB型肝炎やエイズといった感染症のリスクがあります。感染症のリスクを防ぐために、施術を受ける際は医療機関にて使い捨てタイプの針を使用しているかといった衛生管理の体制について事前に確認してください。
使用する染料に対してアレルギーを持っていた場合、施術部位に炎症や腫れが現れることがあります。そのため、アートメイクの施術では事前にパッチテストを受けることが推奨されており、パッチテストの結果、過剰なアレルギー反応が生じて重篤な症状を引き起こすリスクがあると診断された場合は施術を受けることができません。
アートメイクは皮膚の切開を伴う外科的な施術と比べると気軽に受けられる施術といわれています。しかし、すぐに除去することは困難であるため、希望の仕上がりと異なるといったデザインでの失敗を防ぐためには、施すアートメイクの部位や形状、色味について入念に確認をおこなうことが重要です。
仕上がりのイメージについて自身と施術者の間で認識に差があった場合、イメージと異なるデザインに仕上がってしまうことがあります。
たとえば、眉のアートメイクにおいて理想とするラインよりも細かったり短かったケース、または色味が薄かった場合は次回の施術で微調整をおこなうことで修正が可能です。しかし、理想とするラインよりも太かったり長かったケース、色味が濃すぎた場合はすぐに修正することができないため、レーザーや除去クリームなどによって除去をおこなう必要があります。
アートメイクは1回の施術で色素が完全に定着するケースは少ないため、色ムラが生じてしまうことがあります。初回の施術を終えて色ムラがあった際は、2回目以降の施術を受けることで色ムラのない美しい仕上がりを目指すことが可能です。
また、歳月の経過による退色で色ムラが生じたときはレタッチの施術を受けることで補うことができます。
(1)カウンセリング・診察
ドクターおよび施術者が施術部位や体調などを確認し、普段のメイクを参考にしながら形や色味などを決めます。色味は顔の印象に馴染むように選ぶのが一般的とされ、たとえば眉の場合、元々の眉毛の太さや色・量・そして肌の色などを見ながら、適切な色合いが施術者によって提案されます。施術方法についてはニードル注入・マシン注入のどちらでおこなうのか、施術者の実績や症例写真などを見せてもらいながら検討し、希望を伝えることが大切です。
(2)デザイン・デッサン
顔立ちのバランスや骨格を見ながら、専用のペンシルを使用して顔にデザインの下描きをおこないます。鏡を見ながら染料の注入部位や全体的なバランスを確認し、微調節をすることで理想のデザインを目指します。
(3)麻酔
施術による痛みを和らげるため麻酔クリームを塗布し、30分程度時間をおきます。医療機関によっては麻酔クリニックのほかに局所麻酔なども使用できる場合があるので、痛みに弱い方はカウンセリング時にドクターに伝えてください。
(4)施術
決定したデザインに沿って、ニードル注入またはマシン注入にて表皮へ染料を注入していきます。
(5)クーリング
施術直後は施術部位にヒリヒリとした熱感が生じることがあります。熱感がある場合は治めるためにクーリング(冷却)をおこないます。
(6)アフターカウンセリング・終了
施術後の注意点や、ホームケアについての説明を受けます。また、施術を2回にわけ、少しずつ色素を定着させる医療機関も少なくありません。初回の施術による仕上がりを確認して、気になる点や違和感などがあれば2回目の施術で調節することが可能です。そのため、2回目以降の施術が必要な場合は予約などをおこない帰宅します。
1回あたりの施術時間の目安は染料を注入する範囲によって差がありますが、一般的に広範囲を手早く施術できるマシン注入の方が施術時間は短い傾向にあります。部位ごとの所要時間の目安は次の通りです。
部位 | 時間 |
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眉 | 約2時間30分 |
アイライン | 約2時間 |
リップ | 約3時間 |
アートメイクは自由診療のため保険適用外となり、各医療機関によって料金が異なります。それぞれの部位におけるアートメイクの一般的な料金は以下の通りです。
部位 | 施術1回あたりの料金 | リタッチの料金 |
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眉 | 40,000円~90,000円 | 33,000円〜66,000円 |
アイライン | 30,000円〜90,000円 | 33,000円〜66,000円 |
リップ | 50,000円〜120,000円 | 44,000円~66,000円 |
アートメイクはドクターまたはドクター指導のもとで施術をおこなう看護師のみが施術をおこなうことができる医療行為にあたるため、トラブルや失敗を防ぐために必ず医療機関で施術を受けてください。アートメイクの実績が豊富な美容外科や形成外科、皮膚科などの医療機関で施術を受けることで、自身の顔立ちにあった眉・アイライン・リップの仕上がりを目指すことが可能です。
また、どのような衛生管理がおこなわれているかも確認するべき重要なポイントです。施術時に患者の目の前で針を開封する医療機関や器具の滅菌処理などの衛生管理を徹底している医療機関であれば、血液感染によるエイズやB型・C型肝炎などの感染症リスクを防ぐことができて安心です。
医療機関の選択に迷った際は、各医療機関のウェブサイトなどで掲載されている実際の症例写真をもとに、それらのなかから自身の理想に近い仕上がりの症例を担当した施術者を指名するという選択肢もあります。