ニキビ跡の治療にはレーザー治療や内服薬・外用薬を使った治療などいろいろな施術がありますが、ダーマペンはニキビ跡の改善が期待できる施術のひとつです。ケガをした後、傷が治る人間の再生能力に着目したマイクロニードリングと呼ばれる施術で、意図的に皮膚に小さな穴を開けて傷を作り、皮膚の再生を促すことでニキビ跡を改善に導きます。
近年、美肌が期待できるとしてSNSで施術前・施術後の写真が紹介されるなど知名度が上がってきたダーマペンですが、ダーマペン4を使った施術は、日本国内では医療機関でしか受けることができません。エステなど医療機関以外で受ける場合はダーマペン4の類似マシンを使っている場合があり、ダーマペン4の施術とは異なります。最近ではダーマペンの類似品がインターネットでも販売されており、家庭でマイクロニードリングをおこなうセルフダーマペンも登場しています。
医療機関・医療機関以外・セルフ、それぞれで得られる施術効果やリスクなどが大きく変わります。ダーマペン4の施術で失敗なくニキビ跡の改善を目指すためにも、ダーマペン4の施術前に正しい情報を確認してください。
ダーマペン4は、皮膚に穴を開けて傷を作り、皮膚の再生を促し、毛穴の開き・凹んだニキビ跡・小ジワなどの改善を目指すマシンです。ダーマペンはマイクロニードリングに使うマシンの名前で、2010年に初代のダーマペンが製品として販売されて、2018年に最新のダーマペン4が販売されています。
ダーマペン4はその名の通りペン型になっており、先端に髪の毛よりも細い針(ニードル)を取り付けて、ニードルを上下させることで均等に皮膚に穴を開ける施術がおこなわれます。
ニードルは衛生的に使用できるように取り外しできるカートリッジ式になっていて、一人の施術が終わると使ったニードルカートリッジを廃棄・交換できるようになっています。ニードルカートリッジには16本のニードルがあり、皮膚にペンを滑らせるようにして施術をすることで、皮膚に均等に微細な穴が開きます。皮膚に微細な穴を開けることで、身体に備わっている治癒力や再生能力を活性化されて、皮膚の再生に必要なコラーゲン・エラスチンが生成される効果が期待できます。
ダーマペン4では、皮膚に開ける穴の深さが0.2 mm~3.0 mmに設定でき、皮膚が薄い部位は浅く、皮膚が厚い部位は深く、凹んだニキビ跡のある部位は深くなど、対応する部位や症状によってニードルの深度を調整します。
ダーマペン4は、主に顔や首、手において施術をおこないますが、眼窩(眼球の収まる頭蓋骨のくぼみ)への施術が禁止されています。
部位 | 薄い皮膚 | 厚い皮膚 |
---|---|---|
額 | 0.3mm~0.5mm | 0.5mm |
眉間 | 0.3mm~0.5mm | 0.5mm |
鼻 | 0.3mm | 0.5mm~0.8mm |
頬骨 | 0.5mm | 0.5mm~0.8mm |
頬 | 0.5mm~1.0mm | 0.8mm~2.5mm |
唇周辺 | 0.3mm~0.8mm | 0.5mm~0.8mm |
瘢痕治療(深いニキビ跡など) | 3.0mm | 3.0mm |
ストレッチマーク(肉割れ) | 1.5mm~2.0mm | 1.5mm~3.0mm |
瘢痕(浅いニキビ跡など) | 1.0mm~1.2mm | 1.2mm~1.5mm |
ニキビ跡には5つの種類があり、そのうちダーマペン4で改善が期待できるのは、皮膚が凹んだ状態になる萎縮性瘢痕(いしゅくせいはんこん)と呼ばれるニキビ跡です。
ニキビ跡の種類 | ニキビ跡の状態 |
---|---|
炎症後紅斑(えんしょうごこうはん) | ニキビがあった部位がニキビの炎症が鎮静しても赤くなった状態。 |
炎症後色素沈着(えんしょうごしきそちんちゃく) | ニキビがあった部位がニキビの炎症が鎮静した後、シミのように色素沈着を起こした状態。 |
萎縮性瘢痕(いしゅくせいはんこん) | ニキビであった部位が炎症により真皮層まで傷つき、ニキビが治った後に皮膚が凹んでしまった状態。 |
肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん) | ニキビが治った後、ニキビがあった部位が赤く盛り上がった状態。 |
ケロイド | 肥厚性瘢痕よりも赤く盛り上がった部位が広がった状態。 |
萎縮性瘢痕は、クレーター状のニキビ跡といわれることもあります。皮膚は表皮・真皮・皮下組織の3つの層になっていて、ニキビの炎症がそれほど強くなければ真皮層が傷つくことはありません。
しかしニキビの炎症が強くなるると、真皮層まで傷ついてしまい、正常な皮膚よりも真皮層が薄くなって萎縮性瘢痕となります。真皮層までダーマペン4のニードルで刺激して、コラーゲンやエラスチンの生成を促進させて真皮層の再生を導くことで、皮膚の凹みの改善が期待できます。
ニキビ跡には萎縮性瘢痕のほかにも、赤みが残る炎症後紅斑(えんしょうごこうはん)・色素沈着をしてシミのようになる炎症後色素沈着(えんしょうごしきそちんちゃく)・ニキビがあった範囲が赤く盛り上がる肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)・肥厚性瘢痕より赤く盛り上がる部分が広がったケロイドがあります。
それぞれ、内服薬・外用薬治療、肌の新陳代謝であるターンオーバーを促進するピーリング治療、IPL(光)治療、レーザー治療、注射による治療などで改善を目指すことができます。
ダーマペン4の施術では、オプションで薬剤を追加して微細な針穴が開いた皮膚に薬剤を塗りながら施術することで、美容成分が浸透し効率的に効果を促すことができるとされています。相乗効果が期待できるオプションにはターンオーバーの周期を正常化させたり肌の弾力成分を補うなどさまざまな薬剤がありますが、ニキビ跡の改善に効果が期待できる薬剤として2つの美容液をご紹介します。
美白・シワ防止・皮膚の再生を効能として米国特許を取得しているヒト脂肪幹細胞由来のエクソソームが主成分の美容液です。
エクソソームは、体内にある約200種類の細胞間の情報伝達をおこなう重要な物質で、情報伝達をする細胞に成長因子やサイトカインを分泌したり、肝細胞や神経細胞に変化する作用があります。
エクソソームが分泌する成長因子・サイトカインには細胞の増殖・分化・成熟を促進させる作用があり、皮膚組織の再生に効果が期待できます。皮膚の真皮層の減少が原因である萎縮性瘢痕に対して使用することで、真皮層の再生を促し、萎縮性瘢痕を改善に導きます。
ヒト由来の乾燥羊膜が主成分の美容液です。羊膜は子宮と胎盤の最内層を覆う薄い膜で、羊膜上皮組織とその下の基底膜、コラーゲンが豊富な羊膜細胞組織から構成されています。羊膜細胞組織は移植をしたときの拒絶反応の原因である血液成分を含まないため、他人に移植をしても拒絶反応が起こりにくく、近年では細胞移植にも可能性があるとされています。
AmnioGenixは、ヒトの羊膜に最小限の加工が施された生きた細胞を含まない乾燥羊膜で、羊膜組織に存在する複数の細胞外基質タンパク質・成長因子・サイトカインを含みます。細胞外基質タンパク質は、細胞同士を付着させる作用があり、成長因子・サイトカインには細胞の増殖・分化・成熟を促進させる作用があります。また、失われた細胞を再生して補充する能力を持った幹細胞を細胞間に運ぶ遊走作用を引き起こす特異的なタンパク質も含んでいます。
細胞外基質タンパク質・成長因子・サイトカイン・特異的なタンパク質の働きで、減少した真皮層の細胞の再生を促進させることで、萎縮性瘢痕の改善に効果が期待できます。
ピーリングは、薬剤を直接肌に塗り、皮膚を薄くはがすことによって皮膚の再生を促す施術です。ピーリングのみあるいはダーマペン4のみの施術でも萎縮性瘢痕のニキビ跡の改善が期待できますが、ダーマペン4とピーリングを併用することで、単体の施術よりも萎縮性瘢痕のニキビ跡改善の満足度が上がるという臨床データがあります。
ダーマペン4は皮膚に細い針を刺す施術のため、痛みを伴います。針の深度が深いほど痛みが強くなりますが、麻酔クリームなどを塗って痛みを緩和することがほとんどです。
施術後に赤みが出たり、ヒリヒリとした感じがあるなどの症状があります。基本的には24時間~36時間程度で落ち着くことがほとんどです。また、皮むけをおこすこともあり、皮むけをした場合は落ち着くまでに1週間前後かかります。
通常の洗顔や化粧は施術12時間程たってから可能となります。冷却・保湿作用に優れたダーマペン専用ファンデーションであれば、施術直後の使用が可能です。
ダーマペン4は厚生労働省未承認機器です。 |
医療機器の入手経路:入手経路は各医療機関のドクターによるメーカーからの個人輸入です。 個人輸入において注意すべき医薬品等について(厚生労働省のページ) |
日本国内での承認の有無:ダーマペン4と同一の性能・効果があり、日本国内で承認を受けている医療機器はありません。 |
諸外国における安全性等に関する情報:ダーマペン4の開発元であるダーマペンワールド社によると、欧州での安全性と品質を証明するCEマークも取得している[※1]と示されています。諸外国で報告されている一般的な副作用としては、次のようなものがあります。 施術部位の発赤・出血・内出血・あざ・感染症・乾燥・ごわつき |
ダーマペン4は、ニキビ跡の凹み具合によって複数回の施術が推奨されることが多く、穿刺の深度にもよりますが、月に1度、3回~5回程度の治療が推奨されています。凹みが浅い場合は1回の施術でも効果が期待できるといわれていますので、施術回数が気になる場合はドクターの診察でご確認ください。
ダーマペン4は厚生労働省未承認機器のため、保険適用外の施術となります。ダーマペン4のニキビ跡の施術を受ける場合、ダーマペン4単体での顔全体の施術で20,000円~30,000円が相場の料金となっています。ASCE plus SRLV-S やAmnioGenixのオプションメニューを追加するとその分の料金がプラスされます。
相場の料金より高めの金額だった場合、施術に麻酔クリームや美容液、鎮静のパックなどが付属していることもあるので詳しくは医療機関にご確認ください。
ダーマペンの知名度が上がってから、自分でマイクロニードリングができるマシンが登場しました。自分でマイクロニードリングをおこなうことはセルフダーマペンと呼ばれ、SNSに動画などがアップされています。
ダーマペン4は医療機関でしか使用ができないので、ダーマペン4の類似品になりますが、マイクロニードリングができるマシンはインターネット通販でも購入可能です。医療機関を受診するよりも安くて手軽にできるという理由でインターネット通販などでダーマペン4の類似品を購入し、自分で施術をおこなう方がいらっしゃいます。
しかし、いくら小さいといっても、皮膚に穴を開ける施術のため、施術前に消毒などの衛生管理が必要で、施術後も鎮静ケアをしっかりしなければ細菌感染や炎症をおこして傷が残る可能性があります。
医療機関で施術を受ける場合はドクターによる診察で、ダーマペン4の施術をして問題のない肌質なのかを確認しますが、セルフダーマペンをおこなう場合は肌質の確認ができず、アレルギー反応が出たり、傷が膿むなどのリスクが懸念されます。
医療知識がなかったり、衛生管理がされていない場所でのセルフダーマペンは大きなリスクを背負うことになりますのでおすすめできません。
内服薬 外用薬 |
ヒアルロン酸 コラーゲン注入 |
レーザー治療 | IPL治療 | ステロイド注射 | |
---|---|---|---|---|---|
炎症後紅斑 | ○ | ○ | ○ | ||
炎症後色素沈着 | ○ | ○ | ○ | ||
萎縮性瘢痕 | ○ | ○ | ○ | ||
肥厚性瘢痕 | ○ | ○ | |||
ケロイド | ○ | ○ |
ニキビ治療において多く使用されているのが内服薬・外用薬で、すべてのタイプのニキビ跡に効果が期待できるといわれています。
薬の種類は多岐にわたって、それぞれ含有している成分によって抗菌・殺菌・角質の剥離などの作用が異なり、ニキビの症状ごとに合わせて使用することで、ニキビの炎症を抑えたり毛穴の詰まりを解消するなどの効果が期待できます。
ニキビ跡にも効果が期待できますが、効果はマイルドで治療期間に関しては数年単位になるといわれています。保険適用の治療となります。
5種類あるニキビ跡の中で、萎縮性瘢痕に効果が期待できる保険適用外の施術です。 萎縮性瘢痕の原因は、ニキビであった部位が炎症により真皮層まで傷つき、ニキビが治る過程で真皮層が完全に修復されず、正常な皮膚よりも真皮層が薄くなることにあります。
真皮層が薄くなり、正常な皮膚よりも凹んでしまった部位にヒアルロン酸やコラーゲンを注入することで、薄くなった真皮層を物理的に正常な皮膚に近い厚さにすることができ、萎縮性瘢痕を改善に導きます。
色素沈着をしてシミのようになった状態の炎症後色素沈着・赤みが残った状態の炎症後紅斑・皮膚が凹んだ状態のニキビ跡である萎縮性瘢痕に効果が期待できる施術です。
炎症後色素沈着・炎症後紅斑になったニキビ跡は、メラニンやヘモグロビンが原因です。レーザーの波長がニキビ跡の原因であるメラニンやヘモグロビンに吸収されて熱エネルギーとなり、メラニンやヘモグロビンを破壊することで、ニキビ跡を改善に導きます。
また、萎縮性瘢痕のニキビ跡には、真皮層にレーザーを照射して熱エネルギーを発生させるとで、コラーゲンの生成を促進、皮膚組織の再構築を促すことができる作用を利用して、皮膚表面の凹みを平らかにすることで改善が期待できます。
施術後に赤みやほてり、ひりつきが出る場合もありますが約2日~3日で治まるといわれています。施術後のメイクは可能とされますが、レーザーの種類によって24時間はメイク不可の施術もあります。保険適用外の施術のため、治療費は全額負担になります。
色素沈着をしてシミのようになった状態の炎症後色素沈着・赤みが残った状態の炎症後紅斑に効果が期待できる施術です。
炎症後色素沈着・炎症後紅斑の原因はメラニンやヘモグロビンです。IPL(光)の波長がメラニンやヘモグロビンに吸収されて熱エネルギーとなり、メラニンやヘモグロビンを破壊することで、ニキビ跡を改善に導きます。
波長の出力が比較的弱く、ダウンタイムがほとんどないため、施術直後からメイクが可能です。ただし、1回の施術の効果はマイルドなため、複数回の施術が推奨されています。保険適用外の治療になります。
肥厚性瘢痕やケロイドのニキビ跡に効果が期待できる保険適用の施術です。
ニキビの炎症が強くなると、真皮層まで傷つき皮膚の細胞が破壊されます。ニキビが治る過程で破壊された細胞は体外に排出され、新しく皮膚の細胞が作られます。肥厚性瘢痕やケロイドは、新しく皮膚の細胞が作られるときに制御がきかなくなり細胞を作りすぎてしまった結果、皮膚が盛り上がってしまいます。
盛り上がってしまった部位にステロイドを注射することで肥厚性瘢痕・ケロイドに改善が見られる臨床データがあります。ステロイド注射が肥厚性瘢痕・ケロイドにどのように作用するかのメカニズムは分かっていませんが、数々の臨床データから、ステロイド注射は肥厚性瘢痕・ケロイドの改善に期待できるといわれています。
ダーマペンの開発元であるダーマペンワールド社には、ダーマペン4のトレーニングドクターが在籍していて、様々な医療機関・ドクターにダーマペン4の施術トレーニングをおこなっています。どのような順番、圧力で皮膚にダーマペン4を滑らせるかなど、トレーニングドクターから直接レクチャーを受けたドクターであれば安心して施術を受けられます。
また、皮膚に穴を開ける施術のため、衛生管理ができていないと細菌感染をするリスクがあります。感染防止のためにも、DPスリーブと呼ばれる本体カバーをしているなど、衛生管理について信用できる医療機関を選ぶと安心です。