目の周りの皮膚は体の中でもっとも薄く、皮脂の分泌をおこなう皮脂腺も少ないことから乾燥しやすい傾向で、まぶたの開閉を担う眼輪筋(がんりんきん)の筋力低下などが原因で、下まぶたのシワ・クマ・たるみなどが目立ちやすくなります。主に加齢とともにあらわれる下まぶたのシワ・クマ・たるみなどを改善に導く美容医療の施術が、下眼瞼形成(かがんけんけいせい)です。
下眼瞼形成は、下まぶたの皮膚の切開や皮下にある脂肪・筋肉の一部切除を伴う外科的な方法や、切開が不要の注射による施術などさまざまな種類があって、シワやたるみなどそれぞれの症状と原因によって適した術式が異なります。
そのため、下眼瞼形成を受ける際は、事前に術式ごとの特徴と改善が期待できる下まぶたの症状やダウンタイム・リスクについて知って、自身に合った施術方法を検討しておくことが大切です。さまざまな術式がある下眼瞼形成の特徴を把握しておくことで、医療機関で受けるカウンセリング内容の理解をより深めることができます。
もくじ
下眼瞼形成(かがんけんけいせい)は、下まぶたを意味する下眼瞼(かがんけん)にあらわれるクマやシワ、たるみといった悩みを改善に導く施術を指します。
施術の種類としては、下まぶたの皮膚を切開して余分な皮膚や脂肪の除去をおこなう外科的な治療や切開を伴わない施術などさまざまで、皮膚のハリ・弾力を保つ物質の減少による下まぶたの小ジワや色素沈着によるクマなど、それぞれの悩みに対応した施術が選択されます。
自身の下まぶたの悩みに対してどのような下眼瞼形成が適しているか正確に知るためには、実際に医療機関でドクターの診断を受ける必要があります。下眼瞼形成によって改善が期待できる下まぶたの悩みは小ジワやクマ以外にも複数ありますが、症状ごとの原因を知るために、まずはまぶたの構造や施術で関係する部位について簡単に解説します。
眼球は眼窩(がんか)という頭蓋骨のくぼみに収まっていて、眼球を外部からの刺激や乾燥などから保護する役割を持つのが、まぶたを意味する眼瞼(がんけん)です。眼瞼は一般的に上まぶたと呼ばれる上眼瞼と、下まぶたと呼ばれる下眼瞼からなり、眼球の周囲に存在する筋肉である眼輪筋(がんりんきん)によって上下のまぶたを動かすことで、まばたきをおこなうことができます。
下まぶたは、上まぶたに比べると大きく上下に動くことはなく、まばたきをおこなう際の動きはわずかです。下まぶたの皮下には眼輪筋、眼球を外部の衝撃から保護する役割がある脂肪の眼窩脂肪(がんかしぼう)、眼窩脂肪を包んでいる眼窩隔膜(がんかかくまく)、まぶたのフチに存在するコラーゲン繊維が密集した板のような組織の瞼板(けんばん)があります。
基本的に下まぶたは上下に大きく動くことはないため、下まぶたの皮下に存在する筋肉などの組織が日常的に酷使されることが原因で生じる症状は少ないとされます。
また、下まぶたの皮膚は約0.6mmと極めて薄く、皮脂を分泌する器官の皮脂腺(ひしせん)や汗を分泌する汗腺(かんせん)がほとんどないという特徴があります。
皮膚の浅い層や下まぶたのように皮脂腺が少ない目もと・口もとにあらわれる細かいシワを「小ジワ」や「ちりめんジワ」といいます。下まぶたを含めて皮膚は外側から表皮・真皮・皮下組織の3層構造になっていて、小ジワやちりめんジワは基本的に真皮の層で生じます。
真皮層は、繊維状のタンパク質である「コラーゲン」同士を「エラスチン」という弾力性のあるタンパク質が束ねており、その間をゼリー状の物質である「ヒアルロン酸」が水分を抱えながら満たしていて、肌のハリと弾力・潤いを支えています。
しかし、主に加齢や紫外線、ターンオーバーとよばれる皮膚代謝の乱れなどによって真皮がダメージを受けると、皮膚のハリや弾力を保つコラーゲンとエラスチン、水分を蓄える役割があるヒアルロン酸が劣化・減少して、小ジワやたるみといった肌の悩みを引き起こす原因になります。
下まぶたに生じた小ジワやたるみの改善が期待できる主な施術としては、下まつげの生え際のすぐ下の皮膚を切開して皮膚を切除する手術や、皮膚のボリュームを補う作用があるヒアルロン酸注入、皮膚細胞の活性化を促す作用のあるベビーコラーゲン注射などが挙げられます。
皮膚は、紫外線や摩擦など外部からの刺激を断続的に受けると、刺激から皮膚細胞を守るために表皮の下層でメラニンを生成します。生成されたメラニンは通常、皮膚の新陳代謝であるターンオーバーによって古い角質とともに体外に排出されますが、外部からの刺激を断続的に受けてメラニンの生成量が排出量を上回ると滞留して、皮膚が茶色にくすんで見える色素沈着を引き起こします。
下まぶたの皮膚が色素沈着を引き起こして茶褐色~こげ茶色にくすんだ状態をクマといって、疲れ顔に見られたり実年齢より老けた印象を与えたりすることがあります。
色素沈着によるクマは、皮膚の新陳代謝であるターンオーバーを整えてメラニンの排出を促すレチノイン酸外用薬や、メラニンを熱または衝撃波で破壊して除去を目指す光やレーザーのマシンによる照射治療などで改善が期待できます。
加齢などによって骨が委縮したり眼球を支える役割がある筋肉や靭帯が衰えると次第に眼球が沈みこんで、眼球を覆っている眼窩脂肪が前方(皮膚の表面側)に押し出されて、下まぶたのすぐ下に膨らみやたるみが生じることがあります。眼窩脂肪の突出によって生じた膨らみやたるみを、目袋(めぶくろ)または眼袋といいます。
目袋は加齢以外にも、生まれつきの骨格や眼窩脂肪が多いことなどが原因で年齢を問わずに目立つケースがあります。また、色素沈着が原因ではなくて、突出した眼窩脂肪による目袋が下まぶたの下と頬の段差となり影が生じることでクマのように見える状態を「影クマ」といいます。
影クマはバギーアイ(Baggy eyelid)とも呼ばれていて、実年齢よりも老けて見えたり疲れた印象を与えることがあります。眼窩脂肪による目袋や影クマは、下まぶたの皮下にある眼窩脂肪を切除したり、下まぶたの下と頬の間に生じた窪みへ移動させる手術などによって改善を目指すことが可能です。
一般的にゴルゴラインと呼ばれている目頭付近から頬にかけて斜めに入ったシワは、加齢による眼輪筋の衰えや皮下脂肪の減少により表情筋の境目が目立ってしまうことが主な原因とされます。なお、ゴルゴラインの由来は某有名コミックスの主人公の顔にある特徴的なラインと似ていることからの俗称で、正しくはミッドチークグルーヴ(Mid Cheek Groove)といいます。
ゴルゴラインの改善が期待できる主な施術としては、皮膚に生じたシワなどの窪みを補う作用があるヒアルロン酸注入や、体内にもともと存在するカルシウムとリン酸イオンからなるカルシウムハイドロキシアパタイトを主成分とした皮膚充填剤を用いたレディエッセ注入などがあります。
本来は外側へ向かって伸びるはずのまつ毛が内側(眼球側)に向かって伸びてしまう症状を内反症(ないはんしょう)といって、一般的には逆さまつ毛とも呼ばれています。内反症が生じると眼球の角膜や結膜がまつ毛によって刺激を受けて、眼球に刺激や異物感を引き起こすことがあります。
内反症は、まぶたのフチに存在する瞼板を支える組織に生まれつき欠損があったり異常があることによる「先天性内反症」と、主に加齢によって下まぶたを支えている腱膜(けんまく)に緩みが生じてたるむことによる「老人性眼瞼内反症」があるとされています。また、内反症とは逆に、まぶたのフチが外側(皮膚の表面側)に反転してしまう症状を外反症(がいはんしょう)といって、内反症や外反症は下まぶたに限らず上まぶたにも起りうる症状です。
外反症は、下まぶたが外側にめくれて裏の赤い結膜が見えてしまう状態で、主な原因としては加齢による目の回りの皮膚や筋肉・筋膜の衰えが挙げられますが、顔面麻痺によっても生じることがあります。まぶたを正常に開閉できなくなるため、ドライアイや角膜が傷つくなどのリスクを伴います。
内反症や外反症が生じても、毛抜きなどで自己処理をおこなうことは眼球を傷つけたり感染症などを招く恐れがあるほか、単純な抜毛では症状が再発することがあるため控えてください。治療方法としては、まぶたの余分な皮膚を切除することでまつ毛の向きを変えたり、内側または外側に向いているまつ毛の毛根を破壊するといった施術があって、医療機関によっては健康保険が適用されるケースもあります。
シワやクマ・たるみといった下まぶたに生じる悩みごとに、適している下眼瞼形成は異なります。自身の下まぶたの悩みとその原因に合った施術を知るためには、医療機関でドクターによる診察を受ける必要があります。
術式 | 概要 | 期待できる効果 |
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経結膜脱脂術(けいけつまくだっしじゅつ) | 下まぶたの内側である結膜を切開して、余分な眼窩脂肪を除去する | ・目袋 ・影クマ |
下眼瞼切開術(かがんけんせっかいじゅつ) | 下まつげの生え際直下の皮膚を切開して、余分な皮膚や緩んだ眼輪筋を切除する | ・軽度な下まぶたのたるみ ・下まぶたの小ジワ |
下眼瞼除皺術(かがんけんじょすうじゅつ) | 下まつげの生え際直下の皮膚を切開して、余分な眼窩脂肪を除去した後にたるんだ下まぶたの皮膚を切除する | ・下まぶたのたるみ ・深いシワ ・目袋 |
ハムラ法(経皮的眼窩脂肪移動術:けいひてきがんかしぼういどうじゅつ) | 下まつげ直下の皮膚を切開して、突出した眼窩脂肪を下まぶたの下と頬の間に生じた窪みへ移動させると同時に余分な皮膚を切除する | ・下まぶたのたるみ ・深いシワ ・目袋 ・影クマ |
裏ハムラ法(経結膜眼窩脂肪移動術:けいけつまくがんかしぼういどうじゅつ) | まぶたの裏側である結膜を切開して、突出した眼窩脂肪を下まぶたの下と頬の間に生じた窪みへ移動させる | ・下まぶたのたるみ ・深いシワ ・目袋 ※主に切除するほど余分な皮膚がない場合に選択される傾向 |
下まぶたの内側である結膜を切開して、奥にある眼窩脂肪を一部切り取って除去する術式が経結膜脱脂術(経結膜脱脂法)で、医療機関によっては「下眼瞼脱脂術」ともいわれています。骨の萎縮や筋肉の衰えなどによって前方に突出した眼窩脂肪を結膜側から摘出することで、下まぶたの下と頬の間に生じた段差が解消されて、目袋や影クマの改善が期待できます。
下まぶたの内側である結膜からメスによる切開をおこなうため、下まぶたの皮膚表面に傷跡が残る心配がないことから、手術後のダウンタイムもほかの下眼瞼形成と比べて短い傾向にあります。眼窩脂肪を除去する際は、手術後に下まぶたの皮膚表面で凹凸が生じないように、一人ひとり異なる顔の骨格や眼窩脂肪の量にあわせて内側・中央・外側からバランスよく摘出します。
また、経結膜脱脂術は皮膚の切除をおこなわないため、主に加齢などによる肌のハリ・弾力を保つコラーゲンやエラスチンの減少による皮膚のたるみが生じていない若年層の方で、眼窩脂肪の突出が目立つ場合に選択されることが多いとされます。
手術後のダウンタイムとしては腫れやむくみ・赤みといった症状が2日~7日前後続く傾向で、アイメイクを含めたメイクは手術の翌日から可能です。主なリスク・副作用としては、過度な脂肪摘出による下まぶたの凹みや左右差、稀に手術部位からの感染症などが挙げられます。
手術の所要時間は片目あたり30分〜40分が目安で、切開した結膜を縫合する際の方法は医療機関によって異なり、手術の抜糸が不要な体内で自然に吸収されるタイプの糸による縫合、電気メスやレーザーによる処置などがあります。
手術の流れ |
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(1)ドクターによるカウンセリング・診察 (2)局所麻酔および静脈麻酔を使用 (3)下まぶたを反転させた後に下まぶたの内側である結膜を数mm切開 (4)奥にある眼窩脂肪を摘出 (5)吸収性の糸、または電気メスやレーザによる切開部位の縫合 |
料金の相場 |
両目あたり約25万円~40万円が目安 |
主に加齢によるコラーゲン・エラスチンの減少や眼輪筋の衰えなどが原因で、皮膚に小ジワやたるみが生じている中高年齢層の方が主な適応とされている術式が下眼瞼切開術(かがんけんせっかいじゅつ)です。下まつげの生え際直下の皮膚を切開して一度剥がした後に、余分な皮膚を切除して、眼輪筋に緩みがある場合はこれも切除して縫合するのが一般的な手術内容とされます。
余分な下まぶたの皮膚や眼輪筋の緩みが解消されることによって、小ジワやたるみの改善が期待できますが、切開部位の縫合をおこなうため、手術の5日~7日後に抜糸の処置を受ける必要があります。また、手術後のダウンタイムは約2週間ほと腫れ・痛み・むくみが生じる傾向にあって、傷跡が目立たなくなり自然に仕上がるまでに約3カ月を要するとされる術式です。
また、下まぶた皮膚の過剰な切除をおこなうと、まぶたのフチが外側(皮膚の表面側)に反転してしまう外反症のリスクを伴うため、失敗を防ぐためには下眼瞼切開術の症例件数が豊富で実績のあるドクターが在籍する医療機関で手術を受けることが大切です。
手術の流れ |
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(1)ドクターによるカウンセリング・診察 (2)局所麻酔および静脈麻酔を使用 (3)下まぶたのフチに沿って皮膚を切開 (4)余分な皮膚や緩みのある眼輪筋の一部を切除 (5)切除した組織の断端を縫合 (6)切開部位の縫合 (7)5日~7日後に抜糸 |
料金の相場 |
両目あたり約30万円~50万円が目安 |
下まぶたのたるみや目袋・影クマの改善を目的とした外科的な下眼瞼形成のひとつが、下眼瞼除皺術です。基本的な手術内容としては、下まつげの生え際直下の皮膚を下まぶたのフチに沿って切開して奥にある眼窩脂肪の一部を切り取って除去し、緩みが生じている眼輪筋を目尻側の靭帯に固定した後に、たるみのある下まぶたの皮膚を切除して、切開部位の縫合をおこないます。
突出した眼窩脂肪が取り除かれることで目袋の改善が期待できるほか、眼輪筋と皮膚の緩み・たるみを解消することによって、ゴルゴラインのような深いシワや下まぶたのたるみを改善に導きます。加齢に伴う皮膚のたるみや眼輪筋の衰えが生じていたり、眼窩脂肪の突出が目立つ中高年齢層の方が主な適応とされています。
手術の所要時間は片目あたり50分程度で、抜糸は手術の5日~7日後におこないます。また、下眼瞼除皺術は皮膚の切開や切除をおこなうためダウンタイム中は約2週間ほど腫れ・痛み・むくみがあらわれる傾向で、切開による傷跡が目立たなくなり自然に仕上がるまでに要する期間は3カ月ほどが目安です。
下眼瞼除皺術による主なリスク・副作用としては過度な脂肪摘出による下まぶたの凹みや感染症、一時的な白目のむくみなどが挙げられます。また、過度に皮膚を切除すると下まぶたの外反症を引き起こす可能性があるので、皮膚を切除する量についてはドクターと相談しながら慎重に決めてください。
手術の流れ |
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(1)ドクターによるカウンセリング・診察 (2)局所麻酔および静脈麻酔を使用 (3)下まぶたのフチに沿って皮膚を切開 (4)奥にある眼窩脂肪を摘出 (5)緩んだ眼輪筋を目尻の靭帯に固定 (5)余分な下まぶたの皮膚を切除 (6)切開部位の縫合 (7)5日~7日後に抜糸 |
料金の相場 |
両目あたり約30万円~50万円が目安 |
ハムラ法は米国の形成外科医であるDr.Hamra氏によって開発された下眼瞼形成で、下まぶたの皮膚表面から切開をおこなうことから、経皮的眼窩脂肪移動術(けいひてきがんかしぼういどうじゅつ)とも呼ばれている術式です。眼窩脂肪の突出によって生じた目袋・影クマ、主に加齢による下まぶたのたるみ、ゴルゴラインのような深いシワの治療を目的とした際に選択される傾向にあります。
ハムラ法(経皮的眼窩脂肪移動術)の手術内容としては、下まつげ直下の皮膚を切開した後に、奥にある眼窩脂肪の一部を切り離すことなく、下まぶたの下と頬の間に生じた窪みへ移動させる有茎(ゆうけい)の処置をおこなって、たるみのある余分な皮膚を切除して切開部位を縫合する手順が一般的とされます。
手術の所要時間は片目あたり50分前後が目安で、手術後は眼窩脂肪を移動させる処置をおこなった部位を安定させるために、5日ほど下まぶたをテーピングして固定することがあり、手術から5日~7日後に抜糸の処置をおこないます。下まぶたのテーピングによる固定の処置は、医療機関によって有無が異なります。
また、ダウンタイム中は1週間~2週間ほど主に腫れや内出血といった症状があらわれる傾向にあり、切開による傷跡が目立たなくなる自然な仕上がりまでは3カ月ほどを要します。手術によるリスク・副作用としては仕上がりの左右差や、眼窩脂肪を移動させる量が過剰であると下まぶたに凹みが生じる可能性があります。
手術の流れ |
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(1)ドクターによるカウンセリング・診察 (2)局所麻酔および静脈麻酔を使用 (3)下まつ毛のすぐ下を切開 (4)奥にある眼窩脂肪を切り離さずに下まぶたの窪みへ移動 (5)余分な下まぶたの皮膚を切除 (6)切開部位の縫合 (7)5日~7日後に抜糸 |
料金の相場 |
両目あたり約30万円~50万円が目安 |
通常のハムラ法と異なり下まぶたの皮膚表面ではなくて、下まぶたの裏側である結膜から切開をおこなう術式が裏ハムラ法で、経結膜眼窩脂肪移動術(けいけつまくがんかしぼういどうじゅつ)とも呼ばれています。下まぶたの皮膚切除をおこなう必要がない場合に選択される傾向の術式であり、まぶたの裏側を切開するため傷跡が目立つこともありません。
下まぶたの裏側(結膜)を切開した後に、奥にある眼窩脂肪の一部を切り離さずに下まぶたの下と頬の間に生じた窪みへ移動させることで、シワの窪みが補われてゴルゴラインのような深いシワが目立ちにくくなる効果や、眼窩脂肪の突出による目袋や下まぶたのたるみの改善が期待できます。また、切開部位の縫合は吸収性の糸が使用されるため、手術後の抜糸が不要です。
ハムラ法と同じように、裏ハムラ法も手術後は下まぶたを5日ほどテーピング固定して眼窩脂肪を移動させる処置をおこなった部位の定着を促す場合があります。手術の所要時間は片目で50分ほどで、ダウンタイムは腫れや内出血といった症状が1週間~2週間ほどあらわれるのが一般的とされて、まぶたの裏側から切開するため傷跡は目立ちませんが、過度な眼窩脂肪の移動により下まぶたの凹みや左右差のリスクがあります。
手術の流れ |
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(1)ドクターによるカウンセリング・診察 (2)局所麻酔および静脈麻酔の使用 (3)下まぶたの内側である結膜を切開 (4)奥の眼窩脂肪を切り離さずに下まぶたの窪みへ移動 (5)切開部位を吸収性の糸で縫合 |
料金の相場 |
両目あたり約35万円~55万円が目安 |
目頭の近くから頬へかけて斜めに入ったシワのゴルゴラインは、生まれつきの骨格などによっては年齢を問わずに生じることがありますが、皮膚の切開を伴わない注射(注入)の施術によって改善が期待できます。
注射による施術は外科的な手術と比べて身体への負担が少なくダウンタイムも短い傾向にありますが、効果の持続期間に限りがあるものがほとんどです。ゴルゴラインを改善に導くことが可能な注入の施術としては主に次のような種類があって、それぞれ薬剤ごとの特徴や持続期間などが異なります。
施術 | 特徴 | 効果の持続期間 |
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ヒアルロン酸注入 | 架橋剤が含まれた弾力性のあるヒアルロン酸を注入して、肌のボリュームを補う | 6カ月~24カ月 |
レディエッセ注入 | 骨や歯の主成分である固形物を粒子状にしてジェルで包んだ製剤を注入して、肌のボリュームを補う | 10カ月~18カ月 |
エランセ | コラーゲンの増生を促す働きのある製剤で、内側から肌質を改善に導く | 12ヶ月~36ヶ月 |
PRP(多血小板血漿) | 自身の血液から抽出した成長因子の作用がある成分を注射して、皮膚組織の再生を促す | 6カ月~12カ月 |
ヒアルロン酸はもともとヒトの体内に存在する物質であるため、外部から体内へ取り入れた際に異物と判断されてアレルギー反応を起こすリスクが低いとされて、美容医療では主にシワなど皮膚に生じた溝を埋めて目立たなくさせたり、注入した部位のボリュームを補うことを目的とした施術で使用されています。
ヒアルロン酸の注入剤はさまざまなメーカーから多様な種類が製造されていますが、大別するとヒアルロン酸の硬さによって2種類にわけられます。シワやほうれい線などの溝を埋めて目立たなくさせる施術では柔らかいヒアルロン酸、鼻や顎などの輪郭を整えたりボリュームを出す際は硬いヒアルロン酸によって施術がおこなわれる傾向です。
ゴルゴラインが気になる部位にヒアルロン酸注入をおこなうことで、皮膚に生じた溝が注入剤によって補われてシワが目立ちにくくなる効果が期待できます。施術後のダウンタイムもほとんどなく、稀に腫れや内出血があらわれるリスクはありますが生じた場合でも1週間ほどで落ち着く傾向です。
ヒアルロン酸は少しずつ体内へ吸収される性質があり、持続期間は注入剤によって差がありますが6カ月~24カ月ほどで、ヒアルロン酸を分解させる作用のあるヒアルロニダーゼという分解酵素製剤を注入することで元の状態に戻すことも可能です。ヒアルロン酸注入の施術料金は1ccあたり50,000円~120,000円程度が相場でゴルゴラインの改善を目的とした場合、注入量は片側あたり0.3cc~1ccが目安とされます。
体内にもともと存在するカルシウムとリン酸イオンから成るカルシウムハイドロキシアパタイトという成分を粒子状にして、粘着性のあるジェルで包んだ製剤を注入する施術がレディエッセ注入です。カルシウムハイドロキシアパタイトは人工骨の形成や歯科治療など、美容医療以外でも形成外科や歯科など幅広い分野で使用されています。
レディエッセは針を用いて皮下に注入する注入剤で、シワの溝を持ち上げボリュームを出す作用があり、ゴルゴラインのように深いシワの改善が期待できます。
ただし、ヒアルロン酸などと比べて硬さのある注入剤であるため、皮膚浅くに注入するとしこりや凹凸が発生するリスクがあり、注入は皮膚の深くにおこなう必要があります。そのため、皮膚浅くに注入する必要がある浅いシワの改善や目の下の涙袋などの柔らかい部位への注入は不向きとされます。
施術後は注入部位に腫れや内出血といった生じることがありますが、ほとんどの場合は2日~3日ほどで落ち着きます。効果の持続期間は10カ月~18カ月ほどですが、分解剤はないため、万が一仕上がりに満足ができなかった場合でもすぐに修正をおこなうことはできません。施術料金の相場は1.5ccあたり約100,000円~200,000円前後で、ゴルゴラインの治療に用いる注入量は片側につき0.5~1.0ccほどが目安です。
含有成分として、外科手術などで用いられる縫合糸の成分でもあるポリカプロラクトン(PCL)を70%、セルロースや水分などから成る増粘剤の一種であるカルボキシメチルセルロース(CMC)を30%の割合とする注入剤がエランセです。
欧州の安全基準条件を満たすことを証明するCEマークを取得していて、注入した部位のコラーゲン生成を促す作用があるほか、シワや窪みといった肌の溝が気になる部位にピンポイントで注入することで、肌のボリュームを補って改善に導く効果も期待できます。
エランセは主成分であるポリカプロラクトンを構成する分子の長さを変えることで注入剤が体内に吸収されるスピードを調節できる点が特徴で、持続期間ごとに3種類(約1年・約2年・約3年)の注入剤が存在します。3種類の注入剤はそれぞれ成分や作用は同一で、持続期間に差があるだけですが、エランセは分解剤がないため注入後は体内で自然に分解されるまで待つ必要があります。
施術後は軽い腫れや赤みなどが生じる場合がありますが数日~1週間ほどで落ち着く傾向で、主なリスク・副作用としては、エランセが面状に広がらないことで皮膚に凹凸やしこりが生じたり、毛細血管が傷ついた場合は内出血を引き起こす可能性があります。また、料金の相場は1ccあたり80,000円~180,000円ほどで、ゴルゴラインに対する施術は0.3cc~1cc前後が目安とされます。
PRPは自身から採取した血液を遠心分離機にかけて、血小板を多く含んでいる血漿(けっしょう)を抽出したもので、日本語では多血小板血漿(たけっしょうばんけっしょう)とも呼ばれています。PRPに含まれる血小板は細胞の活動を活性化させる成長因子を豊富に含んでいて、細胞の増殖や傷ついた組織の修復、皮膚のハリや弾力を保つコラーゲン・ヒアルロン酸・エラスチンを産生させる働きがあります。
軽度のゴルゴラインが気になる部位にPRPを注射することで、成長因子が放出されてコラーゲンやエラスチンなど増生が促されて、シワが目立ちにくくなる作用が期待できます。ただし、ヒアルロン酸注入などのように注入剤そのものが肌のボリュームを直接補う作用はないため、期待できる効果はほかの注入剤と比べておだやかといえます。
PRPによる施術の効果は2週間~4週間後あたりから徐々にあらわれる傾向にあり、一般的な効果の持続期間は6カ月~12カ月前後で、分解剤は存在しません。また、PRPの施術は自身の血液を用いるので通常は重篤な副作用やリスクはほとんどなく、施術後は稀に内出血や赤み・腫れなどの症状があらわれることがありますが2週間程度で治まるとされます。
注射による施術料金は80,000円~200,000円ほどが目安で、PRPは注射による施術のほかに、極細の針で肌に微細な針穴をいくつも形成して肌の自然治癒力を引き起こして皮膚細胞の再生をはかる「ダーマペン4」と組み合わせて施術をおこなうことも可能です。
下まぶたの逆さまつ毛(下眼瞼内反症)は、大別すると皮膚の切開を伴う外科的な手術とマシンや針による切開が不要な治療方法の2種類があります。前者はダウンタイムが長い一方で1度の手術で症状の改善が期待できる傾向にあって、後者はダウンタイムが短いものの複数回の施術が必要となることがあります。
ただし、先天的な原因による下まぶたの逆さまつ毛は成長とともに逆さまつげが解消することもあるため、重症ではない場合は角膜を保護する点眼薬や抗生物質などを使用して経過を見ることが一般的とされています。また、内反症の治療は医療機関によっては保険が適用となるケースがあるので、保険の有無が気になる方は各医療機関のお問い合わせ先やホームページなどから確認してください。
下まぶたの逆さまつ毛の改善が期待できる主な治療方法は、次のような種類があります。
治療方法 | 切開の有無 | 概要 |
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切開法 | 有 | 下まつ毛の生え際を切開して、下まぶたを支えている筋繊維の一部を切除して断端を縫い合わせて縮める |
睫毛電気分解(しょうもうでんきぶんかい) | 無 | 睫毛(下まつ毛)の毛根に細い針を刺して、電気を流して破壊することで、睫毛の脱毛作用を引き起こす |
下まぶたのまつ毛の生え際のほとんどが内側に(眼球側)に反っていて、まつ毛の多くが角膜に触れているなど、下眼瞼内反症の程度が重度で、主に加齢による下まぶたの筋繊維の緩みが原因である場合に選択される傾向にあるのが切開法による下眼瞼内反症の治療です。
切開法による下眼瞼内反症の治療では、麻酔を使用した後に下まつ毛の生え際の皮膚を切開して、下まぶたに余分な皮膚や脂肪がある際はこれらの切除をおこない、下まぶたを支えている筋繊維の緩みが解消されるように一部切除して断端を縫い合わせて縮めることで、まつ毛が外側を向くように促すとされます。下まつ毛の生え際にできた切開部位の縫合をおこないますが、非吸収性の糸を用いた場合は手術から5日~7日後に抜糸となります。
手術後のダウンタイムとしては主に腫れや赤みが生じて、腫れは2週間~4週間ほど、赤みは1カ月~3カ月ほど持続することがありますが、1回の手術で下眼瞼内反症の改善が期待できます。また、皮膚や皮下組織の切開を伴う手術であるため、主なリスクとしては手術の際に細かい血管が損傷した場合は内出血が生じる可能性がありますが、内出血は血栓ができて出血が塞がることで基本的には日数の経過に比例して治まるとされます。
また、メスによる切開ではなくて、皮下に存在する水分と反応して熱エネルギーを生じさせて皮膚組織を蒸散(気化)させる作用のある「炭酸ガスレーザー」による手術をおこなうことで、メスによる切開と比べて出血が抑えられて、手術後の腫れを軽減することが可能とされています。炭酸ガスレーザーは専用のマシンによっておこなわれるレーザー治療のひとつで、医療機関によってはマシンの取り扱いがない場合もあるため、検討する際は事前に各医療機関のホームページやお問い合わせ先から確認する必要があります。
手術の流れ |
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(1)ドクターによるカウンセリング・診察 (2)局所麻酔および静脈麻酔の使用 (3)下まぶたのまつ毛の生え際で皮膚を切開 (4)余分な皮膚や脂肪がある際は切除 (5)皮下の筋繊維を一部切除した後に断端を縫い合わせて緩みを解消する (6)切開部位の縫合 (7)非吸収性の糸で縫合をおこなった場合は5日~7日後に抜糸 |
料金の相場 |
両目あたり約20万円~45万円が目安 (保険適用の場合1割~3割負担) |
内反症が生じている下まつ毛の毛根を電気によって破壊して、脱毛作用を引き起こすことで角膜が傷つくことを抑制する施術が睫毛電気分解(しょうもうでんきぶんかい)です。施術の内容としては、麻酔を使用した後に、下まつ毛を意味する睫毛の毛根に細い針を刺して電気を流すことで毛根を破壊するという方法が一般的とされて、皮膚の切開をおこなわない施術です。
下まぶたを支えている筋繊維の緩みなどは生じていない一方で、まつ毛の生える方向に異常があり内側を向いてしまっている睫毛乱生(しょうもうらんせい)の際に選択されることもある施術とされます。皮膚の切開を伴わないので切開法による下眼瞼内反症の治療と比べると身体への負担が少なくダウンタイムが短い傾向にあり、施術後は軽いやけどのようなヒリヒリ感が数日ほど感じることがあります。
ただし、1回の施術で症状が改善されることは少なく、個人差はありますが十分な効果を得るためには通常2回~3回は施術を受ける必要があるとされて、稀に再発のリスクもあり、下眼瞼内反症の程度が重度である場合は切開法が適していると診断を受ける可能性があります。また、基本的に局所麻酔を使用しての施術となるので、施術中に痛みを感じることはほとんどないとされますが、局所麻酔の注射時に痛みを伴います。
手術の流れ |
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(1)ドクターによるカウンセリング・診察 (2)局所麻酔の使用 (3)内側を向いている下まつ毛の毛根に針を刺す (4)刺した針に電気を流して毛根を損傷させる (5)通常は日をわけて2回~3回ほど施術を受ける |
料金の相場 |
両目あたり約20,000円~が目安 (保険適用の場合1割~3割負担) |
いくつかある下眼瞼形成はそれぞれ切除・摘出・縫合・薬剤注入といった処置の有無と手を加える対象が異なるため、ドクターの診断のもとで改善したい下まぶたの悩みごとに適した施術で治療を受ける必要があります。また、下まぶたのたるみに加えて目袋や影クマも目立つなど、自身にとって複数の改善したい悩みがある場合は、それら複数の症状の改善が目指せる下眼瞼形成を選択することが大切です。
施術によっては同一の効果が期待できる下眼瞼形成もありますが、それぞれ切開の傷跡が残る部位や永続的な効果が期待できるかなどの違いがあるため、施術ごとの向き・不向きは、自身の希望によっても異なります。
施術(手術) | 向いている方 | 向いていない方 |
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経結膜脱脂術 | ・眼窩脂肪の突出による目袋や影クマを改善したい方 ・下まぶたの皮膚表面に切開の傷跡を残したくない方 ・下まぶたに重度のたるみが生じていない方 |
・切開を伴う手術に抵抗がある方 |
下眼瞼切開術 | ・下まぶた生じた小ジワを改善したい方 下まぶたのたるみが気になり始めた方 主に加齢による眼輪筋の衰えが生じている方 |
・切開を伴う手術に抵抗がある方 ・下まぶたの皮膚表面に傷跡が残ることに抵抗がある方 |
下眼瞼除皺術 | ・下まぶたのたるみを改善したい方 ・眼窩脂肪の突出による目袋を改善したい方 ・ゴルゴラインのような深いシワを改善したい方 |
・切開を伴う手術に抵抗がある方 ・下まぶたの皮膚表面に傷跡が残ることに抵抗がある方 |
ハムラ法 | ・下まぶたのたるみを改善したい方 眼窩脂肪の突出による目袋や影クマを改善したい方 ゴルゴラインのような深いシワを改善したい方 |
・切開を伴う手術に抵抗がある方 ・下まぶたの皮膚表面に傷跡が残ることに抵抗がある方 |
裏ハムラ法 | ・下まぶたのたるみを改善したい方 ・眼窩脂肪の突出による目袋を改善したい方 ゴルゴラインのような深いシワを改善したい方 下まぶたに切除するほど余分な皮膚がない方 |
・切開を伴う手術に抵抗がある方 |
ヒアルロン酸注入 | ・ゴルゴラインを改善したい方 ・切開を伴う手術に抵抗がある方 ・分解剤がある注射の施術を希望する方 ・ダウンタイムの短い施術を希望する方 |
・永続的な効果の持続が期待できる施術を受けたい方 |
レディエッセ注入 | ・ゴルゴラインを改善したい方 ・切開を伴う手術に抵抗がある方 ・ダウンタイムの短い施術を希望する方 |
・永続的な効果の持続が期待できる施術を受けたい方・分解剤のある注射の施術を希望する方 |
エランセ | ・ゴルゴラインが気になり始めた方 ・肌のハリや弾力を取り戻したい方 ・ダウンタイムの短い施術を希望する方 |
・永続的な効果の持続が期待できる施術を受けたい方・分解剤のある注射の施術を希望する方 |
PRP | ・ゴルゴラインが気になり始めた方 ・ダウンタイムの短い施術を希望する方 ・体内に異物を注入することに抵抗がある方 |
・永続的な効果の持続が期待できる施術を受けたい方・分解剤のある注射の施術を希望する方 |
切開法(下眼瞼内反症治療) | ・下まぶたの逆さまつげを改善したい方 ・逆さまつ毛の症状が重度である方 |
・切開を伴う手術に抵抗がある方 |
睫毛電気分解 | ・下まぶたの逆さまつげを改善したい方 ・睫毛乱生の傾向がある方 ・切開を伴う手術に抵抗がある方 |
・逆さまつ毛の症状が重度である方 |
眼窩脂肪の突出による目袋や影クマを改善したい場合は、下まぶたの皮下にある眼窩脂肪を取り除く下眼瞼形成が選択肢となりますが、過度な除去をおこなった場合、下まぶたのたるみを引き起こすことがあるとされます。また、もともと下まぶたのたるみがあるケースでは、眼窩脂肪を除去することによって、よりたるみが目立つようになる可能性があります。
突出した眼窩脂肪によって張っていた部位の皮膚が、眼窩脂肪が取り除かれることによって緊張(張り)がなくなり、緩んでたるみを引き起こすことが原因といわれています。また、過度な眼窩脂肪の除去は、手術後に除去した部位の凹みを引き起こすこともあります。
主な下眼瞼形成のうち、余分な皮膚の切除をこなわずに眼窩脂肪のみを除去する手術は経結膜脱脂術が挙げられます。そのため、目袋や影クマの治療を目的として経結膜脱脂術を検討する際は、ドクターによる診察の際に眼窩脂肪の除去によるたるみや凹みといったリスクが自身のケースで起こり得るかどうか確認することが大切です。
眼窩脂肪の除去によって下まぶたのたるみが生じる可能性がある際は、余分な皮膚の除去に加えて眼窩脂肪の除去または移動の処置をおこなう手術の、下眼瞼除皺術・ハムラ法・裏ハムラ法といった下眼瞼形成が適応と診断されることがあります。
下まぶたのたるみ治療などを目的として、下眼瞼形成による皮膚の切除をおこなう際、皮膚を過度に切除してしまうと手術後にまぶたの閉じづらさを感じたり、下まぶたが外側にひきつれて反転してしまう外反症といった日常生活に支障をきたす合併症を引き起こす可能性があります。
一度皮膚の切除をおこなった部位は基本的に元の状態に戻すことができないので、下眼瞼切開術や下眼瞼除皺術など皮膚の切除を伴う下眼瞼形成を検討するときは切除量についてドクターと相談しながら慎重に決める必要があります。過度な皮膚の除去によってまぶたが閉じづらくなったなどの合併症が起きた際は、皮膚の移植によって下まぶたで不足した皮膚を補う修正の手術で改善が見込めることもあるといわれています。
上まぶたを持ち上げて目を開く役割がある筋肉に異常があったり力が弱いなどの原因で、目をしっかりと見開こうとしても上まぶたが十分に持ち上げられず、下がって重く感じられたり視界が狭くなってしまう症状を眼瞼下垂(がんけんかすい)といいます。下眼瞼形成は主に下まぶたのたるみやクマなどの改善を目指すものであるため、上まぶたのトラブルである眼瞼下垂を改善させることはできません。
眼瞼下垂は手術によって上まぶたの皮膚の表面を切開して、上まぶたを持ち上げる役割のある筋肉である挙筋または腱膜を、上まぶたの瞼板と縫い合わせて固定することで、上まぶたがしっかりと持ち上げられるように促す治療により改善が期待できます。また、眼瞼下垂の治療は手術を受ける医療機関によっては保険が適用となることがあります。
下まぶたの施術には、たるみやシワを改善する以外に、目もとの印象を変える美容医療施術もあります。目尻を下げる、目の横幅を広げるなど目的よって選択される施術の種類は異なり、比較的体への負担が少ない注入法から外科的な手術までさまざまです。
ヒアルロン酸を下まぶたに注入することで、 ふっくらとした涙袋を作る施術で、涙袋に適度なボリュームを与えることによって、優しく若々しい印象の目もとへ導くことが可能です。ダウンタイムはほとんどなく、注入直後から効果を実感できる施術といえます。
眼球の周囲に存在する眼輪筋にタンパク質の一種であるボツリヌストキシン薬剤を注入することで、下まぶたを支える筋肉の緊張を抑制して、目尻の角度を下げてタレ目へ導く施術です。
ボツリヌストキシンは、脳が筋肉へ指令を出す際に活動する神経伝達物質の働きを抑制することで、筋肉の働きを一時的に麻痺させる作用があります。ダウンタイムはほとんどないといわれていますが、ボツリヌス注射の効果は約3カ月~4カ月とされるため、目もとの形状を維持したい場合は繰り返しの注入が必要です。
目尻側の皮膚を切開して、余分な皮膚を切除することで目尻側の白目の露出を増やすことで、目の横幅を外側に向かって延長する手術が目尻切開です。手術によって切開できる範囲は皮膚に隠れている白目の部位までに限られます。
手術後に腫れや赤みがあらわれるダウンタイムは約1週間~2週間とされ、仕上がりまでには一般的に約2カ月~3カ月間が必要とされます。また、さまざまな術式があって、目尻の皮膚を切除する際の形状や縫合の方法は医療機関によって異なります。
下まぶたの中心から目尻にかけて、下まぶたのラインを下げることでタレ目がちな優しい印象の目もとへ導くとされる手術がタレ目形成(グラマラスライン)です。白目の露出が増えるため、目が大きくみえるともいわれています。
下まぶたの皮膚を切開する術式と、下まぶたの裏側の結膜を切開する術式がありますが、どちらも腫れや赤みを伴うダウンタイムは約2週間とされて、仕上がりには約3カ月~4カ月間が必要とされる手術です。
目の周りの皮膚は身体のなかでもっとも薄いことから、加齢による影響や外部からの刺激を受けやすい部位といわれていて、主に30代以降からは下まぶたの小ジワやたるみ・脂肪による目袋・影クマなどが気になり始める方も少なくありません。また、下まぶたは眼球の動きに関わる重要な筋肉や神経も多いため、下眼瞼形成の施術を受ける際は外科的な治療方法のほかに注入施術など身体への負担が少ない施術も含めて、慎重に検討する必要があります。
下まぶたに生じたたるみなどは、症状によっては注入施術ではなく、外科的手術が適応となることもあります。そのため、まずは下眼瞼形成の施術件数が多く経験が豊富なドクターや目もとの解剖学に精通しているドクターが在籍している医療機関で、自身の悩みや改善したい症状を相談して最適な治療法を提案してもらうことが大切です。