目頭切開は、目頭を覆う蒙古ひだの張りを切開または切除して解消することによって、目の横幅を広げて大きく見せる手術です。蒙古ひだによって隠れていた白目が露出することで、左右の目と目の距離が離れているなどの悩みを改善に導くことが可能です。
目頭切開は皮膚の切開をおこなう際の形状や手順、縫合の方法などによってさまざまな術式があり、それぞれの術式ごとに仕上がりの特徴が異なります。また、もともとの目の形状や理想とする仕上がりによっては、目頭切開が向いていなかったり切開法による二重術や目尻切開といったほかの手術の組み合わせが必要となる場合があります。
そのため、目頭切開の手術を検討する際は、事前に術式ごとの特徴やどのような方に向いている手術であるか、ダウンタイムとリスク、ほかの目もと整形術との違いと併用することによる効果について知っておくことが、より自身に合った目もと整形の手術の選択につながります。
もくじ
目頭側の白目を覆うようについている薄い皮膚を蒙古ひだと呼び、この蒙古ひだを切開または切除することで、目頭にあるピンク色の涙丘(るいきゅう)という粘膜を露出させる手術が目頭切開です。蒙古ひだの有無は遺伝によって決まるとされ、アジア人の目もとに多くみられる傾向で日本人の約8割が蒙古ひだを持っているといわれています。
蒙古ひだが張っていることで視力が落ちたり視界が悪くなるといった健康上の影響はありませんが、蒙古ひだによって白目が覆われていると目が小さく見えたり目と目の間が離れて見えたりする原因となります。目頭切開をおこなうことによって目の横幅が広がって見えるようになり、印象的なパッチリとした大きな目もとに導くとされています。
目頭切開は蒙古ひだがあれば一重まぶたでも手術を受けることが可能です。また一度、蒙古ひだを切除すると仕上がりは半永久的に持続するとされます。ただし、目頭切開は蒙古ひだの張りを改善することにより「目の横幅を広げて大きく見せる手術」であって、目そのものを大きくする効果は期待できません。
目頭切開をおこなうことによるメリットは次の通りです。
蒙古ひだの張りが少ない目もとは目頭切開をおこなっても目の横幅が広くなる範囲には限りがあるため、変化を実感しにくいとされます。また、もともと顔のパーツが中心に寄っている求心顔(きゅうしんがお)と呼ばれる顔立ちは、目頭切開をおこなうことで目もとがさらに中心へ寄ってしまうことから、目の横幅を広げたくないケースでは不向きな傾向にある手術です。
目頭切開は蒙古ひだの切開または切除をおこなうため、手術後はすぐに元の目もとへ戻す修正をおこなうことができません。理想とする顔立ちや目もとの仕上がりに対して目頭切開が適応されるのかなど、ドクターからの客観的なアドバイスを踏まえて冷静に手術を検討することが大切です。
目頭切開は切開の形状や手順、縫合の処置などクリニックによってさまざまな術式があります。ここでは一般的な術式とされる「三日月法」「Z法」「W法」「リドレープ法」それぞれの特徴について説明をおこないます。もともとの目の形状や理想とする仕上がりのデザインは一人ひとり異なるため、実際の手術ではドクターによる診断のもと適切な術式が選択されます。
蒙古ひだを三日月状に切開して余分な皮膚の切除をおこない、切開部位を縫合する最もシンプルな術式とされます。切除する皮膚の量を調節しやすいことや仕上がりが予測しやすいといったメリットがある一方で、皮膚を切除して縫い合わせるだけなので自然治癒力により、後戻りしやすい術式ともいわれています。
三日月法は後戻りの力が働くことで術後にひきつれをおこすなどのリスクがあり、これらの欠点を補うために次のZ法やW法という術式が開発されました。
蒙古ひだをZ型に切開することで、三角形の皮膚の弁をAとBとして2点つくり、A→BをB→Aのように場所を入れ替えて縫合することで目頭の幅を広げる術式です。切開線も短く皮膚の切除もおこなわないため、ひきつれや後戻りのリスクが低いという特長があります。また、皮膚の切開をおこなわないため、入れ替えた蒙古ひだを戻すことで修正が可能とされている術式です。
Z法は目の形やデザインの角度次第で涙丘の露出を調節できますが、一般的に涙丘の露出の少ない自然な仕上がりを希望する方に適した術式とされます。傷跡がほかの術式と比べると少なく、目頭から二重幅が離れている平行二重を自然に形成することができる術式といわれています。
W法は考案者の名前からとって「内田法」とも呼ばれている術式です。蒙古ひだを横W字型に切開して余分な皮膚を切除した後、W字の中央にあたる三角形の皮膚の弁を目頭に差し込むようにして縫い縮めることで目頭の幅を広げます。皮膚を切除する範囲が調節できるのでデザインの再現度が高いという特長があります。
皮膚の切除をおこなう緻密な作業をおこなうことからドクターの技術が仕上がりを左右する術式ともいわれており、また、Z法による目頭切開と比べると手術による傷が大きく長いダウンタイムを伴う傾向です。
リドレープ法では目頭から眼瞼縁まで皮膚を切開します。蒙古ひだを形成している目頭付近の眼輪筋を切開してボリュームを減らして、余分な皮膚を最小限に切除した後に、ぴったりと合う形にトリミングして目の下の切開ラインに沿って縫合することで目頭を広げます。
自然治癒力によって後戻りしようとする力が分散されることや、傷跡がまぶたの縁のラインに沿ってできるため目立ちにくいという特長があります。しかし、目の下を切開するため手術後は一時的に涙袋が硬くなったり、縫合端が盛り上がる「ドッグイヤー」とよばれる症状があらわれる可能性があります。
リドレープ法は蒙古ひだ上部の張り出した皮膚を改善に導く効果はほとんどないことから、平行型の二重よりも、二重のラインが目頭からつながったように始まる末広型二重と相性の良い術式とされます。
目もとには一般的に美しく見えるとされる黄金比率があり、その比率は「左目の幅:両目頭間の幅:右目の幅=1:1:1」とされます。この比率をもとにデザインを決定することで自然な仕上がりを目指すことができ、目頭切開では目頭側の幅を広げることによって目の位置を中心に寄せて、バランスを整えることができます。
目頭切開はあくまで目頭側の幅を広くすることを目的とした手術で、理想の二重デザインや目の大きさを目指すためには、ほかの目もと整形術の併用が必要となることがあります。
下記では、目頭切開と併用しておこなわれる手術に関係するまぶた周辺の組織や役割と、それぞれの手術を併用することによって得られる変化について説明します。
・前頭筋(ぜんとうきん)
眉を引き上げる役割があり眉の上から額に位置する筋肉
・眼窩脂肪(がんかしぼう)
眼球の周囲を覆う脂肪で、加齢などにより垂れ下がってくると目のくぼみやたるみが生じる
・眼輪筋(がんりんきん)
主にまぶたを閉じる際につかわれる表情筋で、目の周囲を取り囲むように覆っている
・眼瞼挙筋(がんけんきょきん)
眼球の後方から上部に存在する筋肉で、収縮することでまぶたを開く役割がある
・挙筋腱膜(きょきんけんまく)
眼瞼挙筋と眼球を保護する役割がある瞼板を結合している薄い膜状の組織で、眼瞼挙筋の収縮と連動して挙筋腱膜が瞼板を引っ張ることでまぶたが開かれる
・ミュラー筋
挙筋腱膜の裏に存在する筋肉で、挙筋腱膜と同様に眼瞼挙筋と瞼板をつないでいて、収縮することにより挙筋腱膜が瞼板を持ち上げる働きを補助する役割がある
・瞼板(けんばん)
上下まぶたのフチに存在するコラーゲン繊維が密集した板のような組織で、眼球を保護する役割があり眼瞼挙筋とミュラー筋の収縮によって引き上げられる
切開法による二重術は、上まぶたをメスで切開して皮膚と挙筋腱膜を縫い合わせることで二重のラインを作る手術です。まぶたに余分な脂肪や皮膚のたるみがある場合はそれを取り除きスッキリとした目もとへ導きます。
直接皮膚を切開するため、目尻に向かって徐々に二重の線が広がっていく「末広二重」や目頭から目尻にかけてほぼ同じ幅で二重の線がのびる「平行二重」などさまざまなデザインを実現できるとされています。
とくに蒙古ひだが発達している目もとの場合、目頭切開と組み合わせることで、より平行二重や幅の広い二重に仕上がりやすくなる効果が期待できます。
目尻を意味する外眼角(がいがんかく)の皮膚と粘膜を2mm~4mm程度切開して、切開部を縫合することで目尻を外側に広げる手術が目尻切開です。小さな目を切れ長の目にしたり、目尻に緩やかなカーブを作ることでつり目の改善が期待できて、優しい印象の目もとへ導きます。また、目尻側の面積が広がることによって小顔に見せる効果も期待できるほか、目頭切開と組み合わせて受けることで、より大きな印象の目を目指すことが可能です。
目を開く力が弱いことで、まぶたが下がってしまう症状を眼瞼下垂(がんけんかすい)といいます。眼瞼下垂手術は、上まぶたの皮膚表面を切開して、まぶたを開く筋肉である眼瞼挙筋(または挙筋腱膜)を縫合糸をつかって瞼板と縫い留める手術です。
眼瞼挙筋(または挙筋腱膜)と瞼板が固定されることで、眼瞼挙筋が収縮した際に瞼板がしっかりと引き上げられて、まぶたが十分に持ち上げられ目を大きく開くことが可能であり、目頭切開と組み合わせることで、より大きな目の印象に導くとされます。
皮膚の切開を伴うため、手術部位の腫れや赤みなどが落ち着き完成するまでには一般的に6カ月ほどかかる傾向です。通院や日常生活での注意事項など、ドクターの指示に従うことがきれいな仕上がりを左右するといわれています。
経過 | 説明 |
---|---|
【4日~7日目】 抜糸 |
通常4日~7日目で抜糸となります。抜糸まではコンタクトレンズの着用やアイメイクはできません。 |
【1カ月~2カ月】 腫れや内出血が落ち着く |
術式や個人の体質によって異なりますが、一般的に腫れは3日〜5日程度、内出血は1週間〜2週間程度、赤みは1カ月〜2カ月程度で落ち着くといわれています。 |
【6カ月】 ほぼ完成した状態になる |
目頭切開によって切開した部位が落ち着いて、自然な見た目に仕上がるまでには半年程度かかるとされています。 |
ダウンタイムについては手術後の約1週間が赤みや腫れのピークで、その後は徐々に落ち着き始めます。長時間の読書やテレビ鑑賞など目の負担となる行為は控えて、なるべく手術部位に触れないように過ごしてください。
また、当日は入浴ができません。翌日以降は首から下のシャワー浴ができるようになり、目の付近を濡らさなければ洗髪・洗顔も可能です。ただし、体を温めると血行が良くなり内出血や腫れが悪化したり長引く可能性があるため、手術後の後3日間程度はシャワー浴にし、患部の炎症を抑えるために保冷剤を包んだタオルなどで冷やすことが推奨されています。
そのほか、コンタクトレンズの着用や激しい運動、飲酒は抜糸をおこなうまでは控えてください。アイメイクは抜糸後から可能になります。また、抜糸後は患部の保湿とUVケアに注意することで傷跡が目立ちにくくなり、色素沈着も抑えることができます。
目頭切開の手術を受けることによるリスクは、以下のようなものが挙げられます。
リスク | 症状・原因 |
---|---|
内出血・腫れ・赤み | 個人差はありますが、内出血や腫れ、赤みは一般的に見られる症状です。麻酔の際の注射針によって皮下の細かい血管が傷つけられると内出血が起きることもあります。これらの症状は手術後の1週間がピークの目安ですが、その後は徐々に落ち着くとされます。また縫合跡がケロイド状となり皮膚が隆起するケースも少なくありません。 |
感染症や化膿 | 持病などで細菌への抵抗力が弱まっている場合、手術後の血腫などが原因で起こり得る症状です。 |
血腫 | 手術によって出血が生じ皮膚の下に血液が溜まることで起こります。 |
左右差・不自然さ | カウンセリングが不十分であったり医師の技量不足などの原因によって、左右差や過剰切開による不自然な仕上がりなどの問題が生じる可能性があります。 |
目頭切開の失敗事例には以下のようなものがあります。ドクターが客観的に診て左右差が明らかであるなど再手術した方が良いと判断される場合には、無料で修正対応可能な保証制度を用意している医療機関もあります。保証期間や再診にかかる費用などは医療機関によって異なるため、事前に各医療機関のホームページなどを確認してください。
ドクターとのデザインのすり合わせ不足やドクターの技術不足、もとの目頭の形状などによっては、イメージしていた仕上がりにならないことがあります。このような失敗を防ぐためには以下のことに気をつけてください。
蒙古ひだが発達している目もとは、とくに後戻りのリスクが大きいとされます。ドクターと相談し、自身の目もとの状態に合わせて適切な術式を決定してください。また、目頭切開だけでは理想の目もとを形成することが難しい場合、ほかの目もと整形術と組み合わせて手術を受けることも選択肢のひとつとなります。
目頭切開の手術によって目頭部分の白目の露出を増やしすぎると、違和感のある不自然な目もとやきつい印象になってしまうことがあります。白目を露出させる範囲については、ドクターとしっかりと相談して客観的なアドバイスを受けつつ、理想とする目もとの仕上がりにあわせて最適なデザインや術式を提案してもらうことが大切です。
目頭切開の症例件数が少なく実績が豊富ではないドクターのもとで手術を受けた場合、目頭に不自然な凹みや縫合部位がケロイド状に皮膚が隆起した傷跡が残ってしまう可能性があります。
不自然な凹みや傷跡の失敗リスクを防ぐためには、目頭切開の症例件数が多く、一人ひとり異なる蒙古ひだの発達具合や目もとの形状などに応じて、どのような術式が最適であるかしっかり説明をおこなってくれるドクターや形成外科としての経歴を持つドクターなどのもとで手術を受けることが大切です。
過剰な皮膚の切開による仕上がりの失敗は、蒙古ひだを形成する手術によって修正が可能な場合もあります。目頭側の皮膚を切開して皮膚の弁を作ることで涙丘を覆う方法、あるいは目頭をVの字に切開してYの字に縫合するといった方法によって、再び蒙古ひだを形成します。ただし、修正術は目頭切開の手術から少なくとも半年間はあける必要があるとされていて、蒙古ひだの切除をおこなっている範囲によっては修正ができないことがあるため、修正が可能であるかについては医療機関でドクターによる診断を受ける必要があります。
また、完全に本来の目もとに戻すことは難しいとされているため、仕上がりの失敗を防ぐためには手術前の入念なデザイン決めやシミュレーション、実際に手術を受ける医療機関やドクター選びが重要です。
目頭切開の手術は日帰りで受けることができ、医療機関によって多少の違いはありますが、おおよそ次のような流れで進めらます。手術が片目か両目か、またほかの手術の併用などにより所要時間は異なります。仕上がりのイメージをしっかりと確認し、納得した上で進められるようカウンセリング・シミュレーションの時間を大切にしてください。
(1)事前準備
血行を促進する薬を服用している方は必ずドクターに相談し服用の指示を仰ぎましょう。また前日は飲酒を控え、体を締め付けない服装を心がけてください。未成年者でも目頭切開の手術を受けることは可能ですが、その際は保護者の同意書が必要になります。
(2)カウンセリング・シミュレーション
蒙古ひだの張り出しや目もとの形状などを確認し、シミュレーションをおこないながら術式や目指すデザインを決定します。目頭切開の手術について不安な点や疑問点がある際はこのタイミングで相談して、納得できるまでドクターに確認しましょう。
(3)デザイン
皮膚の切開をおこなう部位を細かくマーキングします。
(4)麻酔・手術
局所麻酔をおこない、カウンセリング時に決めた術式により手術を開始します。目頭切開のみをおこなう際の所要時間は片目で30分程度、両目で1時間程度といわれていますが、二重整形などほかの手術を併用する場合はさらに時間がかかります。
(5)冷却・終了
手術後は腫れなどを落ち着かせるために患部の冷却をおこないます。鎮痛剤などを処方され、当日帰宅することが可能とされます。また、当日の入浴や激しい運動などは血行が促進されて内出血や腫れが悪化する可能性があるため禁止されています。
美容を目的とした目頭切開の手術は保険が適用されない自由診療にあたるため、料金は医療機関によって異なりますが、相場は片目で80,000円〜200,000円、両目で100,000円〜400,000円ほどが目安です。
目頭切開は蒙古ひだの切除や皮膚の入れ替え、トリミングといった非常に緻密な作業を伴うことから、ドクターの技術が仕上がりを左右するとされています。
皮膚を切除した範囲が広くなければ修正も可能とされていますが、左右差のある仕上がりや手術後に傷跡が残るなどの失敗を防ぐためには、一人ひとり異なる蒙古ひだの発達具合と理想とする目もとのイメージごとにそれぞれ最適な術式が選択できる、目頭切開の症例件数が多くて実績が豊富なドクターのもとで手術を受けることが大切です。
また、目頭切開の手術だけでは理想とする目もとに仕上げることがむずかしい場合は、組み合わせるべきほかの手術を提案してくれるドクターや、カウンセリング・シミュレーションで事前に抱いたイメージと手術後の仕上がりに行き違いがないように、カウンセリングから執刀まですべて同一のドクターが担当している医療機関で手術を受けるという選択肢もあります。