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ガミースマイル治療におけるボツリヌス注射の効果と失敗しないために知っておくべきこと

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笑う女性

笑った際に歯茎が必要以上に見えてしまうガミースマイルには、歯の並びや骨格など複数の原因がありますが、その原因のひとつとして筋肉の過剰発達があげられます

過剰発達している筋肉に、筋肉の働きを抑制するボツリヌス注射をおこなうと、筋肉麻痺が生じるためガミースマイルの改善が期待できます。

ただし、ボツリヌス注射はリスクや副作用が生じる場合があり、効果は一時的であるため、継続してボツリヌス注射をおこなう必要があります。

また、筋肉の過剰発達以外でガミースマイルが生じている場合は、別の施術が必要になるため、ガミースマイルの原因だけでなくほかの治療法も併せて知っておくことで、満足のいくガミースマイル治療を受けることができるといえます。

ガミースマイルの症状と原因

ガミースマイルの特徴

ガミースマイルとは、一般的に歯茎といわれる歯肉を指す「gum」に由来していて、笑った際に必要以上に歯茎が見えてしまう症状を指します。

ガミースマイルが原因で人前で笑えないことから、精神的に支障をきたす場合もある深刻な症状で、日本では20代~30代の10%の方が、ガミースマイルに悩まされているといわれています。

ガミースマイルは遺伝による影響が強く、ガミースマイルになりやすい骨格や歯並びであったり、もともと筋肉が強い場合に発症する確率が高くなります。幼少期の指しゃぶりや頬杖、抜けた歯の放置するなどといった、日常生活での癖や習慣によって生じることもあります

また、子どもの場合は、乳歯と永久歯が生え変わる時期にガミースマイルが改善されることもありますが、自然に治ることはほとんどなく多くは治療が必要になります。 骨や歯の成長の余地がある子どもには、歯列矯正などの根本的な治療が勧められています

ガミースマイルが生じる原因

ガミースマイルが生じる原因として以下があげられますが、ひとつの原因ではなく、いくつかの原因が組み合わさることでガミースマイルが生じる傾向にあります。

上唇挙筋の働きが強い

唇の開閉に関与している上唇挙筋(じょうしんきょきん)や上唇鼻翼挙筋が発達しすぎると、必要以上に上唇が持ち上げられ、歯茎が見えやすくなります。

筋肉の発達が原因のため、筋肉を緩めて働きを抑えるボツリヌス注射で改善が期待できます。

口腔前庭部が広い

笑顔になる際、上唇は歯茎と上唇の境目まで持ち上げられるため、上唇と歯茎の間のスペースである口腔前庭部(こうくうぜんていぶ)が広い方や歯茎が長い方は歯茎が露出しやすく、ガミースマイルになりやすい傾向にあります。

また、唇の薄い方は歯茎を隠すことがむずかしいため、ガミースマイルになることもあります。

上唇の粘膜と、歯肉の粘膜を縫合する「上唇粘膜切除術」をおこなうことで、上唇の過剰な持ち上がりを防ぐことができます。

骨格や歯並び

上顎の骨が前に突出している

日本人を含むアジア人は、上顎骨(じょうがくこつ)などの口周りの骨が突出していて、それに伴って歯茎も長くなることで、ガミースマイルになりやすい傾向にあります。

上顎骨の突出によるガミースマイルの場合は、上顎骨をけずり後ろに下げることで突出が目立ちにくくなり、歯茎の露出も抑えることができます。

また、上顎骨が突出していると、ガミースマイルだけでなく出っ歯や、上下の前歯に隙間が空く開咬(かいこう)、上の歯が下の歯にかぶさる過蓋咬合(かがいこうごう)になりやすく、骨を削る施術だけでは治らない場合があります。

出っ歯や開咬には「歯列矯正」、過蓋咬合には歯のかみ合わせを浅くする「マルチブラケット装置の装着」など、それぞれの症状に合った治療をする必要があります

歯の生え方

通常よりも歯が小さい場合や、歯が斜めに生えている場合は、その分歯茎の面積が多くなることで、ガミースマイルになることがあります。

歯の並びや歯の位置を矯正する「歯列矯正」や、歯茎のラインをあげて本来見えるべき歯を露出させる「歯冠延長術」(しかんえんちょうじゅつ)をすることで、ガミースマイルが改善されることがあります

歯茎が発達している

歯茎の発達により歯に歯茎がかぶさり、歯よりも歯茎の面積が多くなると、笑った際に歯茎が露出しやすくなります。 歯に覆いかぶさった歯茎を取り除く「歯肉整形」をおこなうことで歯茎が目立ちにくくなります

筋肉の異常発達によるガミースマイルを改善するボツリヌス注射

ガミースマイルが生じる原因のひとつである上唇挙筋と上唇鼻翼挙筋の異常発達は、遺伝だけでなく、強く噛みしめたり舌を過度に使うなど、口周りの筋肉を過度に使用することによります

この場合は、筋肉の発達による収縮力を抑えることで、過度な上唇の持ち上がりを防ぐことができるため、筋肉を緩める作用があるボツリヌス注射が有効とされます。

また、筋肉だけでなく骨格や歯並びなど複数の原因によるガミースマイルの場合は、ボツリヌス注射によって完全な改善はむずかしくなりますが、部分的な改善は期待できるといえます。

ボツリヌス注射の成分

ボツリヌス注射の成分は、食中毒の原因でもあるボツリヌス菌が入っているのではなく、ボツリヌス菌が生成するボツリヌストキシンというタンパク質の一種を使用しています。

身体に害を及ぼすボツリヌス菌を分解・精製したボツリヌス製剤において、一瓶に含まれているボツリヌストキシンは中毒になる危険量の約1000分の1とされているため、身体に害はないといわれていますが、あまりにも高い濃度のボツリヌス製剤を注入すると、中毒になる可能性があります

ボツリヌス注射の作用

ボツリヌス注射は筋肉と神経のつなぎ目に作用して、脳から筋肉へ指令するときに産出されるアセチルコリンという神経伝達物質を抑制する働きがあります。これによって、筋肉の働きが抑制され、一時的な筋肉麻痺を生じさせることができます

神経伝達物質を抑制する働きがあることから、美容医療ではエラの張りやふくらはぎのふくらみの改善、多汗症やワキガの改善などにも使用されています。

また、医療で使用されるボツリヌストキシンでは、アレルギー反応が起きることが少ないため、アレルギーテストが不要とされています。

ただし、アレルギー性の副作用である発疹、かゆみ、腹痛、意識が朦朧とするなどの症状が生じた場合は、医療機関を受診してください。

ボツリヌストキシンの量を表す「単位」

ボツリヌス製剤は粉末でバイアルとよばれる瓶に入っており、施術で使用する際は、生理用食塩水で希釈して注入します。

量の表し方は、㏄やmlでなはく「単位」であらわされ、0.1mlあたりに必要な単位が含まれるように、生理用食塩水で調整します。生理用食塩水の量が多くなるほど、施術で使用するボツリヌス製剤の濃度は薄くなります。

注入する部位や用途によって使用するボツリヌス製剤の種類や量、0.1mlあたりに必要とする単位が異なるため、部位や用途にあわせて、希釈する生理用食塩水の量を調整する必要があります。

ボツリヌス注射でガミースマイルの治療をおこなう場合は、患者のガミースマイルの状態や求めている形状によって異なりますが、5単位~20単位を用います。

一般的に中毒になるボツリヌストキシンの量は、3万単位といわれているので、良質で国に認められているボツリヌス製剤を使用し、適切な希釈濃度で、禁忌の方や、使用するべきではない方への施術を避ければ、50単位~100単位の注入では中毒は生じにくいとされています。

ボトックスは製品の名前

ボツリヌス注射は、ボトックス注射とも呼ばれていますが、ボトックスは、アラガン社の製品の名前であり、施術の名称ではありません。

アラガン社のボトックスは、厚生労働省に認可されている唯一のボツリヌス製剤で、美容目的で正規購入ができる唯一の製品ですが、日本の厚生労働省にあたるアメリカのFDAや、韓国のKFDAに承認されているボツリヌス製剤も個人輸入が可能なため、多くの医療機関で使用されています。

製品名 国の承認
Dysport(ディスポート) FDA(アメリカ食品医薬品局)
Zeomin(ゼオミン) FDA(アメリカ食品医薬品局)
Regenox(リジェノックス) MFDS(韓国食品医薬品安全省:旧KFDA)
Neuronox(ニューロノックス) MFDS(韓国食品医薬品安全省:旧KFDA)

ボツリヌス注射を打つ場所

ボツリヌス注射は、小鼻の横にある上唇挙筋と上唇鼻翼挙筋に注入することで、筋肉の過剰な働きを抑制し、上唇の過剰な持ち上がりを抑えることができます。

ガミースマイルの状態にもよりますが、5単位~20単位のボツリヌス製剤を、過剰発達が見られる左右の筋肉に1点~3点に分けて注入をおこないます。

笑った時に左右差が出ないように、ボツリヌス製剤の量や注入する回数を調整する必要があります。

歯の生え方や上顎骨の歪み、筋肉の左右差によって、片側だけガミースマイルの症状が生じる場合もあります

歯列や上顎骨が原因の場合は、左右差を考慮して歯列矯正や骨切り手術などの治療をおこない、筋肉によって生じている場合は、左右差が均等になるようにボツリヌス製剤を注入します。

ボツリヌス注射による痛み

医療機関によっては、痛み軽減のため施術前に麻酔クリームを塗布することがあります。

全ての医療機関で扱っているわけではないので、事前に医療機関にご確認ください。

痛み軽減のために使用する極細の針

ボツリヌス注射で使用される一般的な針の太さは30G~32Gですが、注射の際に感じる痛みを軽減するために、34Gという産毛ほどの細い針を使用している医療機関があります。

注射の針の細さは「G(ゲージ)」で表され、数字が大きくなるほど細くなり痛みが軽減されます。

医療機関によっては34Gの針の使用にあたり、追加で料金がかかる場合があるので、施術の前に34Gの針の取扱いや追加料金の有無について医療機関にご確認ください。

ガミースマイル治療におけるボツリヌス注射の効果の持続期間

ガミースマイル治療におけるボツリヌス注射の効果は、施術後から2日~3日であらわれ、4カ月~6カ月効果が持続します。

ボツリヌス注射が効果を発揮しているときは、筋肉の活動量が抑制され筋肉自体が縮小するため、2回目以降のボツリヌス注射では、効果の持続が長くなる傾向にあります。

ボツリヌス注射は、ガミースマイルの完治を目指す治療ではないため、効果を持続させるには定期的な施術を受ける必要があります。ただし、短期間で100単位以上の注入をおこなうと、中和抗体がつくられ効果があらわれにくくなることがあるため、注意が必要です。

ガミースマイル治療におけるボツリヌス注射で失敗した際の対処法

ガミースマイル治療における失敗

ボツリヌス製剤を注入する部位は、表情筋の一つである上唇挙筋と上唇鼻翼挙筋のため、効果が効きすぎてしまうと、唇があがらなくなり不自然な笑顔になることがあります

また、唇が持ち上がらないため人中という鼻先と上唇との間にある縦の溝が伸びて見えることがあります

そのため、施術の前のカウンセリングで、自身が求めている形状を把握・医師に伝達し、入念にシミュレーションをおこなうことが重要です。

ボツリヌス注射の効果を弱めたい場合は修正注射

ボツリヌス注射後に、不自然な笑顔や表情になった左右差が生じた物を食べられなくなったなど、ボツリヌス注射の効果を弱めたい場合は、アセチルコリン塩化物というボツリヌストキシンの修正注射があります。

修正注射は、ボツリヌス製剤を取り除くのではなく、一時的に作用を弱め、筋肉の可動域を広げることが目的なので、一度の注射で3日~4日程度で効果が薄れ、元に戻ります。

そのため、継続的に効果を弱めたい方は1週間~2週間の間隔で2回~3回の修正注射をおこなうことで、麻痺した筋肉が動くようになり、自然な表情に戻すことができます

修正注射は最終手段のため、施術前にシミュレーションをおこない、自身が求めている唇の形状を伝えることが大切です

ボツリヌス注射によるガミースマイルの治療で事前に知っておくべきこと

ボツリヌス注射によるガミースマイルの治療は、自費診療のため医療機関によって値段が異なります。注入量は、症状によって異なりますが、5単位~20単位程度です。

製剤名 値段
ボトックス 15,000円~41,800円
ディスポート 25,000円~46,200円
ゼオミン 17,300円~40,000円
リジェノックス 10,000円~32,780円
ニューロノックス 15,000円~40,000円

施術を受ける際にドクターとの相談が必要な方

  • 避妊していない方
  • 脊髄・末梢神経の病気を患っている方
  • 呼吸器疾患、緑内障の方
  • ボツリヌス菌で食中毒にかかったことがある方
  • 尿路感染症の方

ボツリヌス注射を受けられない方

  • 妊婦・授乳中の女性
  • 全身性の神経筋接合部の病気がある方
  • 以前にボツリヌス毒素に異常反応が起きた方

施術の流れ

(1)カウンセリング

理想の形状を医師と確認し、不安なことなどはカウンセリングの際に聞きましょう。

(2)施術

麻酔が必要な方は、麻酔クリームなどをおこないます。
施術の時間は2分~5分です。

(3)クーリング

施術後に、腫れや痛みなどを抑えるため、10分程度患部を冷やして終了です。

ガミースマイル治療におけるボツリヌス注射の経過と副作用

施術後は、まれに以下のような副作用が生じることがあります。

治るまでの日数 起こりうる副作用
当日~2日 腫れ、疼痛
2日~1週間 注射針の傷跡
~2週間 内出血
~1カ月 飲食がしづらい

施術後から1カ月程度は、上唇の筋肉が麻痺しているので、ストローが使いづらかったり、麺がすすりづらかったりしますが、ボツリヌス注射の効果が薄れるのと同時に解消します。

ボツリヌス注射の後に気を付けるべきこと

血行の促進を控えることで、腫れや痛みなどを生じさせない、または症状を抑制することができます。

そのため、ボツリヌス注射の施術後は以下のことに気をつけて過ごしてください。

おこなえるまでの目安 行為
当日から シャワー、メイク、洗顔
翌日から 入浴、軽い運動
腫れが引いてから 激しい運動、飲酒
1カ月後から 顔のマッサージ

ガミースマイル治療におけるボツリヌス注射以外の施術方法

上唇粘膜切除術

上唇粘膜切除術とは、上唇の粘膜と、歯肉の粘膜を切除・縫合して、上唇の過度な持ち上がりを抑制する方法です。

上唇と歯茎と間が広い口腔前庭部が広い方や、上唇と歯茎の境目から歯の生え際までが長い方に向いている手術です。

上唇粘膜切除術は、歯が埋まっている顎骨(がっこつ)の穴である歯槽の整形をする歯冠延長術と併用しておこなうこともあります。

ボツリヌス注射と違い粘膜を切除・縫合する施術なので、腫れや内出血などが生じ、ダウンタイムが必要な手術ですが、約1週間で強い腫れや内出血がおさまり、一度の手術で長期的なガミースマイルの改善が期待できます

しかし、手術後に上唇挙筋と上唇鼻翼挙筋の発達が見られた場合、笑った際に引っ張られるような違和感を覚えることがあるため、手術前に適切な判断をおこなってくれるドクターを選ぶことが重要です。

骨切り術

骨切術は、上顎骨が突出が原因でガミースマイルになってしまう方に向いている手術です。 上顎骨を削り、骨を後ろに下げることで、骨の突出を改善することができ、相対的に歯茎の長さが短くなるため、ガミースマイルが改善されます。

骨を削る外科的な手術のため、大きな腫れや痛み約2週間、骨の固定のため1カ月間ほど手術部位をゴムで固定するなどダウンタイムが長く、通院が必要な手術ですが、一度手術をすることで、ガミースマイルの再発の可能性が軽減されます。

歯科矯正

歯科矯正は、歯並びや歯の位置を改善する方法なので、歯並びが原因でガミースマイルになってしまう方に効果的な施術です。

ボツリヌス注射や骨切り術などと異なり、施術の直後から効果を得られるわけではなく、ワイヤーやマウスピースを使用し、長い時間をかけて歯の位置を変えるため、直後から効果を求めている方には不向きな施術です。

しかし、歯科矯正をして歯の並びや噛み合わせを治すことで、虫歯や歯周病などを防ぐことができます

歯肉整形

歯肉整形とは、歯にかぶさっている歯肉を切除し歯の露出を増やす方法で、歯茎が発達し歯にかぶさっていることが原因でガミースマイルになっている方に向いている施術ですが、歯肉は時間の経過とともに再生するため、後戻りしやすい傾向にあります

ボツリヌス注射によるガミースマイル治療のメリット・デメリット

ボツリヌス注射は、永久的に持続する施術ではないため、継続して注入をおこなう必要がありますが、一時的に治したい方や、手術をおこなう前のシミュレーションとして、どういう仕上がりになるか試してみたい方におすすめな方法です。

また、ボツリヌス注射は、ほうれい線の上にある筋肉に注入するため、副次的な作用でほうれい線が薄くなることもあります。

歯が小さい、歯列の矯正が必要、歯茎が長いといった、筋肉以外の原因でガミースマイルが生じている方は、ボツリヌス注射での改善は見込めないので、自身の原因にあった治療をすることが推奨されています

ボツリヌス注射によるガミースマイル改善で選ぶべき医療機関

ボツリヌス注射は、様々な症例の改善ができることから、取扱っている医療機関が多くあります。

ただし、ボツリヌス製剤のなかにはアレルギー反応や肉芽腫が生じる質の悪いものもあるため、厚生労働省やFDAなど、国が承認している薬剤を使用している医療機関で施術をおこなうことで、副作用やリスクを軽減することができます

また、各製薬会社には、講習や実技セミナーをおこない、終了後に認定書が授与される認定医および指導医制度があるため、ボツリヌス注射に不安のある方は、認定書を保持しているドクターがいる医療機関を選ぶのもひとつの方法といえます。

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