CRF(コンデンスリッチファット)注入、マイクロCRF(マイクロ・コンデンスリッチファット)注入は脂肪注入のひとつです。
脂肪注入は、自身から採取した脂肪を顔の深いシワや目もとのくぼみ・頬やこめかみの凹みなどに注入することで肌にハリを持たせ、たるみの改善を目指して若々しい印象に導く治療方法です。
また、脂肪注入は豊胸にも用いられます。シリコンバッグなどの人工物を挿入する施術と比較すると拒否反応が少なく、触感や見た目も自然に仕上がるというメリットがあります。
ただし、注入した脂肪に、活動していない死活細胞や老化細胞、細胞破片などの不純物が混在する従来の脂肪注入では、脂肪細胞が定着せずに、壊死してしまってしこりとなったり、カルシウム塩が沈着して細胞組織が硬くなってしまう石灰化がおこるリスクがあります。
CRF(コンデンスリッチファット)、またはマイクロCRF(マイクロ・コンデンスリッチファット)は、特殊な技術によって不純物はもちろん、老化で弱った脂肪細胞も徹底除去したもので、定着に有利な脂肪細胞だけが濃縮された濃縮脂肪細胞です。
CRF注入を受ける前に、その効果やメリットだけでなく、ダウンタイムや注意点も詳しく知っておけば安心して施術が受けられます。
もくじ
ヒトの皮膚は外側から表皮層・真皮層・皮下組織(主に脂肪の層)の3層から成り、その下に表情筋と呼ばれる筋肉、骨があります。
たるみの原因は、1)表皮層の水分量の減少や真皮層でハリや弾力を保つコラーゲンやエラスチンの減少、2)脂肪などの皮下組織の下垂および減少、3)表情筋のゆるみと筋力低下、4)皮膚と骨をつないでいる支持靭帯のゆるみ、5)骨の容積減少、の5つが考えられます。
骨は加齢とともに萎縮します。骨の組織は、つねに古い骨が壊される骨吸収と、新しい骨がつくられる骨形成というサイクルをくり返していますが、年齢を重ねると、骨吸収が骨形成を上回り、徐々に骨が痩せていきます。
皮膚と筋肉を支えている支持靭帯は骨に付着しているため、骨が痩せてくると靭帯も下がったり伸びたりして一緒に変形し、たるみが生じる原因となります。
加齢とともに骨や皮下脂肪は減少するので、くぼんでしまった頬やこめかみにCRFを注入することでボリュームを補い、頬骨の位置を高くふっくらと見せ、若々しい印象に導きます。
また、CRFを注入することでほうれい線や口もとのシワ(マリオネットライン)、目の下の深いシワ(ゴルゴライン)などを目立たなくする効果も期待できます。
CRFは、採取した脂肪を、日本の厚生労働省に該当するアメリカFDAの認可を受けた機器「LIPOMAX-SC」で外気に触れないまま遠心分離にかけ、脂肪壊死やしこり、石灰化の原因になる死活した細胞や老化細胞、細胞膜などの不純物を除去した濃縮脂肪細胞です。
CRF注入は、特殊な濃縮(コンデンス)技術で生成された良質な濃縮脂肪細胞だけを注入するため、高い定着率を実現し、吸引した脂肪を最大限に活かすことができるとされています。
注入された脂肪細胞は100%そのまま残るわけではなくて、その内の何割かは注入後に収縮したり、壊死してしまいます。注入した脂肪細胞のうち、残った脂肪細胞の割合を定着率と呼んでいます。
定着率を決定する要因には「脂肪細胞の質」「注入部位」「注入量」「出血」「冷却」「安静」「ドナー部位」「年齢」「採取方法」「注入方法」などが関係しています。注入部位は皮下に余裕のある部位のほうが定着率は高くなります。
注入量は多ければいいというものではなく、多すぎると内部の緊張が高くなり脂肪細胞を圧迫してしまいます。出血も脂肪細胞ひとつ一つが隣接する血管から栄養を受け取るための血行の再開を妨げるので注入後の患部の冷却や安静は重要です。
CRFは、不純物はもちろん老化で肥大化した脂肪細胞も徹底除去して定着に有利な脂肪細胞と幹細胞だけが濃縮されています。これにより、1ccあたりの細胞密度は高まり、より多くの脂肪細胞・幹細胞を注入できるようになりました。
注入脂肪の定着率が高いということは、定着せずに壊死してしまう脂肪細胞が少ないということです。壊死した脂肪細胞は体内で分解されて排出されなかった場合、しこりの原因となるので、従来法より定着率が高いCRF注入では、しこりになるリスクを軽減します。
CRFをさらに「ジェリリング」という専用装置にかけ、大きな脂肪を圧力で破砕し、健康でより微細(マイクロ)な脂肪細胞と幹細胞を、さらに濃縮・抽出したものがマイクロCRF (マイクロ・コンデンスリッチファット)です。
マイクロCRFは採取した脂肪から10%しか得られませんが、目の下のたるみによるクマなど特に皮膚の薄い部位への注入にはマイクロCRFが適しています。
マイクロCRFを使用すると、CRFよりもさらに脂肪の定着率が上がり、周囲組織ともよく馴染みます。また、濃縮された大量の幹細胞にはコラーゲンの生成を促す作用があり、周辺組織が再生され、肌のハリや弾力の改善効果も期待できます。
従来の脂肪注入の場合、顔周りへ注入すると、脂肪細胞の大きさにばらつきがあるため、肌表面がでこぼこになることがありました。
これに対し、マイクロCRFは微細でのびがよく、滑らかな脂肪を注入するため、自然な仕上りが得られ、目の周りなどの皮膚が薄い繊細な部分への注入も可能となりました。
CRF注入は豊胸にも用いられています。
シリコンバッグ豊胸の効果は半永久的に持続するといわれていますが、人工物であるシリコンバッグはやがて劣化するため、挿入から10年前後で入れ替えが必要になるケースがあります。
また、従来の脂肪注入では、注入した脂肪が壊死して定着せず、しこりとなったり石灰化を起こすリスクを伴う、という事実も存在しました。
CRF豊胸は、不純物を除去した良質な濃縮脂肪細胞を注入することで、しこりや石灰化のリスクを軽減するとされています。
脂肪が定着する術後6カ月以降のボリュームダウンがほとんどなく、70%~80%のボリュームを維持できるといわれています。定期的なメンテナンスが不要で、長期的な効果が見込める方法です。
注入量としては片方の胸に250ccを超えてしまうと、胸の内圧が高くなりすぎて脂肪が死滅してしまい、定着率が急激に下がってしまうので、注入量は片方の胸に最大でも250ccまでが目安です。
顔周りにCRF注入、またはマイクロCRF注入を受ける場合、ほとんどのケースで1回の施術で脂肪が定着することにより効果が長期的に持続します。
豊胸の場合、一度のCRF注入でおよそ1~1.5カップのサイズアップになるので、3カップ以上のサイズアップを望む方は再注入が望ましいです。
注入のたびに脂肪吸引をするのでは負担が大きいので、一度目の脂肪吸引で多めに脂肪を採取し凍結保存することも可能です。脂肪の保存は-80°の冷凍保存が有効とされ、保存期間は約8カ月とされています。
CRF・マイクロCRFの施術では麻酔が使用されるため、脂肪吸引の際も注入の際も痛みを感じることはほとんどないとされています。
ただし、クリニックによって局所麻酔や全身麻酔など麻酔の方法が異なりますので、詳しくは各医療機関へお問い合わせください。
CRF・マイクロCRFの施術後は数日~1週間程度、軽い痛みや腫れ、内出血が現れますが、顔の場合はメイクやマスクで隠せる程度といわれています。
脂肪の採取部分には内出血や筋肉痛のような症状が現れますが、1週間程度でおさまるとされています。
極細の針で注入をおこなうため針穴に赤みが残ることがありますが、時間の経過とともに消失していきます。傷跡として残ることはほとんどありません。
脂肪採取部には多少傷あとが残ることがありますが、太ももの内側など、目立たない部位から採取します。
CRF・マイクロCRFは、採取した脂肪を外気に触れないまま遠心分離にかけて無菌状態で注入するので感染症のリスクが少なく、しこりや石灰化の原因になる死活した細胞や老化細胞、細胞膜などの不純物を除去した良質な濃縮脂肪細胞のみを注入するので、脂肪壊死やしこり、石灰化のリスクが少ないとされています。
注入後に脂肪が硬くしこりのようになることがありますが、通常は一時的で、時間の経過とともに自然に柔らかくなるとされています。肌表面に多少の凸凹が生じることがありますが、通常は時間の経過とともになじんでいくといわれています。
注入部位の血行が良くなると、腫れ・赤み・痒みが出たり増したりすることがあるので、施術後24時間は刺激の強い食事・飲酒・激しい運動・長時間の日光浴・サウナなど高温の場所で長時間滞在は避けてください。
また、しばらくの間は必要以上に注入部位を触らないようにし、顔のエステやマッサージ、うつぶせ寝は最低1週間程度控えてください。
やせ型で皮下脂肪がない方は注入するほどの脂肪が採れないと判断されることがあります。脂肪吸引する部位としては太ももが一般的ですが、臀部、腹部、側腹部、膝まわりなど小量でも注入用の脂肪採取ができる部位を見つけて施術がおこなえるケースもあるので、医療機関にご相談ください。
麻酔アレルギーがある方は施術が受けられない可能性があります。カウンセリングや診察の際にドクターにご相談ください。
シワやくぼみを埋めたりボリューム形成をおこなう施術にはCRF・マイクロCRF注入のほか、従来の脂肪注入、ヒアルロン酸注入という方法もあります。
ヒアルロン酸注入も従来の脂肪注入も、ボリュームを補充することでシワやたるみの改善を目指す治療ですが、注入成分・定着率・効果の持続期間・治療回数・ダウンタイムの症状などが異なります。
豊胸には、CRF注入以外に従来の脂肪注入、ヒアルロン酸注入、シリコンバック挿入などがあり、それぞれメリット・デメリットが異なります。
※自己脂肪注入(チュメセント注入・脂肪吸引・脂肪細胞収集・フィルタリング・脂肪注入)にて、体と顔に臨床使用することに認可。 形成外科・外科・皮膚科・産婦人科・美容外科の領域を定めている。
引っ掛かりのある特殊な糸(スレッド)を皮膚下に入れて顔や首元のたるみを引き上げる治療がスレッドリフト(糸リフト)です。
たるみの原因のひとつには、真皮層でハリや弾力を保つコラーゲンやエラスチンの減少があげられます。コラーゲンやエラスチンは、紫外線など外部からの刺激や、加齢・ストレスなどの内部要因によって劣化・減少していきます。
肌のハリや弾力が失われた皮膚は重力に逆らえずたるみはじめます。そこでたるんだ皮膚を糸で物理的に引き上げる方法がスレッドリフトです。
スレッドリフトは、挿入した糸のまわりで皮膚組織の再生の働きが起こり、コラーゲンの生成が活性化されることで、引き上げ効果のほかに小ジワの改善・肌のハリ・毛穴引き締めといった効果が期待できます。
スレッドリフトで重力に負けてたるんでしまった皮膚を引き上げつつ、CRF・マイクロCRF注入で皮下組織(脂肪)や骨が痩せた部分のボリュームを補うと、たるみを改善しつつ、さらなる若返り効果が期待できます。
目の下の黒いクマ(影クマ)の多くのケースでは、目袋と呼ばれる眼窩脂肪の突出とその下のメーラーファットと呼ばれる頬の脂肪部分のくぼみが影になって見えるものです。
この場合、ふくらんでいる眼窩脂肪を経結膜脱脂法で切除し、その下のくぼみの部分にCRFを注入することでクマの改善が期待できます。
1) 専用シリンジで脂肪を摂取
CRF用の専用シリンジを用いて脂肪吸引をおこない、外気に触れないまま脂肪を採取します。
2) チュメセント液(麻酔液)を廃棄
1のシリンジを10分間立てておくと、脂肪とチュメセント液(麻酔液)とに分離するので、チュメセント液(麻酔液)のみ廃棄します。
3) 摂取した脂肪を遠心分離
チュメセント液(麻酔液)を廃棄したシリンジを専用機器LIPOMAX-SCにセットし8分間4000回転、遠心分離します。
CRFの抽出技術は遠心分離だけではありません。特許技術の「ウェイトフィルター」によって圧力を加えると、死活細胞や老化細胞は細胞膜が薄く弾力性もないため、押し潰されてオイルとなります。このオイルを取り除くことで、健全で若い脂肪細胞(CRF)だけを抽出することができます。
4) 脂肪が三層に分かれる
遠心分離すると、上から排泄オイル(死活細胞・老化細胞)、脂肪、血液や細胞膜などの不純物の三層に分かれます。
5) 脂肪以外を廃棄
三層に分かれたうちの、上の排泄オイル(死活細胞・老化細胞)と下の不純物とを廃棄し、脂 肪のみをシリンジ内に残します。シリンジ内に残った脂肪がCRFです。
6) マイクロCRFの抽出
抽出した健全な脂肪細胞をシリンジのままマイクロCRF専用装置Filler Gellerにかけます。この装置に搭載された、脂肪細胞をカットするミキサーのような機能で脂肪細胞を粉砕すると、カットされる面積が広い大きな細胞だけが粉々になり、小さな脂肪細胞は傷つかずに残ります。
これらを再度分離させることで、生き残った良質で微細な脂肪細胞であるマイクロCRFだけを抽出します。
CRF豊胸術は脂肪吸引の費用を含めて1,000,000円程度が相場です。
マイクロCRFの費用相場は、脂肪採取・加工料が250,000円程度かかり、注入部位によって料金がプラスされます。
目の下のクマ・凹み・たるみ・目の上のくぼみで100,000円~300,000円程度、こめかみ・頬のコケで200,000円~350,000円程度、ほうれい線で100,000円~250,000円程度が相場となります。
CRF・マイクロCRF注入をおこなうには、日本の厚生労働省にあたるアメリカのFDAが認可した専用遠心分離機器LIPOMAX-SCと特許技術のウェイトフィルターが必要です。
しかし、類似サービスを独自に展開する医療機関も存在するため、CRF注入療法の正しい普及を目的に活動する日本医療脂肪移植研究会CRF協会では、専用機器を使用した正規のプロセスをおこなっている医療機関だけに認証マークを発行しています。
安心してCRF・マイクロCRF注入を受けるためにはCRF協会から発行された認証マークを掲げている医療機関を選ぶことが重要です。