鼻の形を整える施術は数多くありますが、鼻尖形成術もその一つです。鼻尖とは鼻先のことを指していて、鼻尖形成術は鼻先を高くしたり細くする施術です。
鼻尖形成術には複数の施術方法があり、鼻先の脂肪や鼻骨の形、希望のデザインによって推奨される施術が異なります。しかし、鼻尖形成術の施術には限界があるため、必ずしも自身の希望したデザインに形成できるわけではありません。無理に形成しようとすると失敗するリスクが高くなります。
鼻尖形成術をおこなう前に、施術ごとの特徴やリスク、副作用、注意点を知っておくことが大切です。また、鼻の形成は顔の印象が大きく変わる施術であるため、施術をおこなう医療機関やドクターを慎重に選ぶことも大切です。
もくじ
鼻尖形成術は、鼻先の形を整える施術です。そのため、鼻筋を通したり鼻全体を高くしたい、鼻を長くしたい方には向かない施術です。鼻尖形成で期待できるのは以下のような方です。
オープン法は鼻の穴の内側と鼻の間の鼻柱を切開し、視野を広く確保して鼻の手術をおこなう方法です。
切開部分から皮膚をめくりあげて術野を露出させることができる方法で、手術部位を目視しながら手術がおこなえるため希望のデザインにより近づけることができるとされています。
一方で、切開の範囲が広いため傷跡が残ります。ただし、傷跡は正面からは見えにくい位置とされています。
クローズ法は鼻の穴の内側のみを切開して、鼻の穴から鼻の施術をおこなう方法です。
オープン法に比べて術野が見にくく縫合の位置などバランスを整えるのが難しい切開方法です。また、鼻の穴が小さいと移植する軟骨などが壊れてしまうケースも報告されています。
しかし、外見上に傷がつかないメリットがあります。
鼻尖形成術にはどのような形の鼻先にしたいか、ダウンタイムを短めにしたいかなどをもとにおこなう施術を決定します。鼻尖形成の施術は大きく3つに分かれていてどの組み合わせで施術をおこなうかは鼻骨の状態の診断と併せてドクターに相談する必要があります。
鼻には、下から見たときに鼻の穴に沿ってM字を書くように配置されている鼻翼軟骨(びよくなんこつ)があります。西洋人は鼻翼軟骨のM字のトップ部分の2カ所が離れていることがほとんどですが、日本人を含む東洋人の場合、M字のトップは離れていますが距離が近いことがほとんどです。
西洋人のように距離が離れている場合、離れている部位を縫合することで鼻先が細く高くなるとされていますが、東洋人の場合はもともとの距離が短いため大きな変化は期待できないとされています。ただし、鼻翼軟骨の形状には個人差があるため、東洋人であっても鼻翼軟骨を縫合することで十分に鼻先を整えることができるケースもあります。
東洋人に対して鼻尖形成術を鼻翼軟骨を縫合する方法でおこなう場合、西洋人に比べて鼻の先にある軟部組織(おもに脂肪)が厚いことが多く、たとえ鼻翼軟骨のM字のトップが離れていて鼻翼軟骨を縫合することで変化があるとしてもごくわずかといわれています。そのため、東洋人に対して施術をする場合は、鼻先にある軟部組織を一部切除しておこなわれることが多くあります。
鼻翼軟骨を縫合する方法は、鼻翼軟骨の形状に個人差があることやドクターによって縫合をどのようにおこなうかなど細かい手技が異なります。そのため、施術を受ける際はしっかりとドクターの説明を聞き、不明点や不安な点がないようにすることが大切です。
参考文献:地域別に見る外鼻,顔面並に頭部形態の変化及びそれらと鼻中隔畸形との関係
鼻翼軟骨を縫合する方法には、鼻翼軟骨を変形させてから縫合する方法があります。医療機関によっては3D法と呼ばれていることもあります。
M字の鼻翼軟骨の両翼を切断し、軟骨を4本にします。内側の2本を立てて支柱にし、外側の2本を内側の支柱それぞれに縫合します。このさい、支柱の上が出るように縫合します。ほとんどの場合、支柱になった鼻翼軟骨の強度が低いため、自身の軟骨(自家軟骨)や医療用素材の人工プレートなどを用いて補強します。
支柱の補強に自家軟骨を使用する場合は、耳介軟骨(じかいなんこつ)や鼻中隔軟骨(びちゅうかくなんこつ)が用いられます。
耳介軟骨は耳の後ろのしわに沿って切開して採取するか、耳珠(じじゅ)と呼ばれる耳の穴の入り口を穴の中から小さく切開し外耳道から採取します。耳介軟骨もやわらかいため、複数枚重ねて支柱の補強に用いられることもあります。耳介軟骨は耳の形や機能に影響の少ない部位を切開して採取できるため、体への負担が少ないとされています。
鼻中隔軟骨は、鼻の穴を左右に分けている壁のような鼻中隔にある硬い板状の軟骨です。すべてを採取してしまうと鼻を支えられなくなるため、鼻の構造を維持するために必要なL字部分を残して採取がおこなわれます。鼻部分の軟骨のため、鼻尖形成術と同時におこなわれ鼻以外に傷ができることはありません。
医療用素材の人工プレートを用いる場合、おもに体内に吸収されるPCL(ポリカプロラクトン)やPDO(ポリジオキサノン・PDOとも表記)をプレート状に加工したものが使用されます。PDOは1年程度、PCLは2年程度で体内に吸収されるといわれています。
参考文献:耳介軟骨による中間挿入移植を併用した顎関節形成術について
参考文献:Feasibility of a polydioxanone plate as an adjuvant material in rhinoplasty in Asians
鼻尖形成術では、自家軟骨を使用したり、人口軟骨、医療用素材の人工物を使用する方法があります。鼻翼軟骨を縫合する方法と併用されることが多い施術です。
鼻翼軟骨を縫合したあと、縫合した部分の上に自家軟骨や医療用人工物を挿入して鼻翼軟骨に縫合することで鼻先に高さを出すことができます。また、自家軟骨や医療用人工物を縫合する位置によって鼻先の角度を変えることができます。
自家軟骨を使用する場合は、鼻翼軟骨を変形させて縫合する方法で使用した自家軟骨と同様に耳介軟骨が使われます。耳介軟骨を採取したあと鼻尖に挿入する為に形を整えます。耳介軟骨の形については希望する鼻先のデザインに応じて丸型や四角型、L字型にするなどの方法があります。希望のデザインに応じて重ねて使用されることもあります。
医療用人工物を使用する場合も、鼻翼軟骨を変形させて縫合する方法と同様体に吸収されるPCLやPDOがおもに使用されます。鼻翼軟骨を変形させて縫合する方法と違い、プレート状に加工したものではなく、糸状にしたPCLやPDOをメッシュにして、ドーム状、ボール状に加工したものが使用されます。医療用人工物を挿入することで鼻先に高さを出します。
鼻翼軟骨を縫合したあとに自家軟骨や医療用人工物を挿入する場合も、鼻翼軟骨の強度が低いことが多いため、鼻翼軟骨を変形させて縫合する方法と同じく鼻翼軟骨の間に鼻翼軟骨を補強するための支柱を縫合する必要があるといわれています。
鼻翼軟骨を変形して縫合する方法と併用することはほとんどない施術方法です。
鼻翼軟骨切除する方法には2種類あります。鼻翼軟骨の形や大きさに応じておこなうかおこなわないかが決定される方法です。原則として鼻翼軟骨が大きかったり張り出している場合に必要とされています。施術の必要がある場合は、鼻翼軟骨の縫合や軟骨や医療人工物を挿入する前におこなわれます。
鼻翼軟骨は上から見るとハートのような形になっています。ハート形の2カ所の山部分から中央の谷部分程度までを細い楕円形に切除することで鼻翼軟骨がシャープになり鼻先を細くする効果が期待できるとされています。ただし、鼻翼軟骨が上部にずれるため、鼻の角度が上向きになる(アップノーズ)傾向にあるといわれています。
また、鼻翼軟骨のハート形の両翼の一部を縦に切除して両翼を小さくすることで鼻先を細くする方法もあります。こちらの方法はハート形の山から谷部分までを切除する方法に比べると鼻翼軟骨が上にずれる可能性が低いとされています。
鼻翼軟骨の大きさや希望する鼻の形によってはハート形の山から谷部分までを切除する方法と、両翼の一部を縦に切除する方法の両方を併用することもあります。
施術当日
腫れやむくみ、赤み、内出血、痛みなどがあります。入浴は避けてください。洗髪や顔を濡らさなければシャワーは可能です。ただし、長時間のシャワーは避けてください。
施術から3日~5日
腫れやむくみ、赤み、内出血、痛みなどがあります。痛みに関しては、医療機関から痛み止めが処方されます。患部を固定するためのギプスは3日~5日ほどで外すことが可能です。
施術から7日前後
抜糸をおこないます。腫れやむくみ、赤み、内出血などの症状が引き続きあります。抜糸後からメイクが可能です。
施術から1週間~3週間
腫れやむくみ、内出血などの症状が落ち着きます。傷跡の赤みも落ち着き始めますが、完全には消えないことがほとんどです。
施術から1カ月~3カ月
鼻先が硬くなります。傷跡の赤みが落ち着き、周辺の皮膚に比べて少し白くなっていきます
施術から3カ月~6カ月
鼻先がやわらかくなっていき、鼻がなじんでいきます。ただし、鼻先の硬さは施術前よりも硬くなることがあります。
鼻尖形成術の施術後は、ギプスを外す際と抜糸の際に通院が必要になります。ギプスは施術から3日~5日ほどで外すことが可能で、抜糸は施術から7日程度でおこなわれます。
また、鼻尖形成術では抜糸後にも定期的に状態の確認が必要といわれています。医療機関によって差はありますが、おおむね1カ月後・3カ月後・6ヵ月後におこなわれることが多いといわれています。
血液や血管で運ばれる酸素は傷を治すために重要な役割を担っています。しかし、喫煙をしていると血管が収縮してしまい、必要な血液や酸素が足りず傷の治りが悪くなるといわれています。そのため術前2週間~術後最低1カ月は禁煙が推奨されています。
血液や酸素は傷を直すために重要な役割をになっていますが、過度に血流が活発になりすぎると内出血が過度になったり腫れが長引いてしまう弊害があります。そのため、術後の飲酒や激しい運動、サウナなど血流が活発になりすぎる行動は施術から1カ月程度避けてください。
施術後は3日~5日程度ギプスをして鼻を固定しますが、衝撃や圧を与えてしまうと鼻が変形してしまう原因になります。鼻をぶつけるような行動や長時間の眼鏡の着用、うつぶせ寝などは避けてください。
鼻水には雑菌が含まれていて、術後に感染症の原因になる場合があります。また、強く鼻をかむことで術部の炎症を強く引き起こしてしまう可能性があります。鼻炎や花粉症などのアレルギーをお持ちで、鼻水が出やすい・強く鼻をかむことがある場合は施術の前にドクターに伝えて適切な対処方法をご相談ください。
鼻尖形成術の施術は無菌状態でおこなわれますが、ごく稀に細菌が入り感染症にかかってしまう可能性があります。
また、施術中が原因ではなく、施術後の生活において患部に細菌が入り感染症にかかる可能性もあります。施術後は患部を清潔に保ち感染症の防止に努めてください。
施術後、赤みがなかなか引かない、腫れが続く、膿が出てくるなどの症状がある場合は感染症にかかってしまっている可能性があるので、すぐに医療機関にご相談ください。
施術部位の血流が滞ったり、内出血をして血液が溜まりすぎたりすると、皮膚が壊死してしまう可能性があります。
皮膚が壊死する可能性はきわめて低いとされていますが、少しでも施術部位に違和感を感じた場合はすぐに医療機関に相談をして、問題のない状態なのかをご確認ください。
移植軟骨触知とは、鼻尖形成術で軟骨を移植した場合に発生する可能性があるリスクです。鼻翼形成術で移植した軟骨が皮下に触れたり浮き上がってきてしまう状態で、施術から数カ月~数年で発生してしまう可能性があります。
移植軟骨触知が発生した場合は、軟骨の抜去などが必要になる可能性がありますので、施術をおこなった医療機関にご相談ください。
隆鼻術は鼻尖形成で使用されるPCLやPDOなど体内に吸収される素材でできた溶ける糸や自家軟骨、プロテーゼと呼ばれる医療用シリコン、ヒアルロン酸を使用して手術をおこないます。
鼻筋に溶ける糸や自家軟骨などを挿入することで鼻を全体的に高くすることができるとされています。鼻尖形成術ど同時におこなうことができます。
鼻中隔延長術(びちゅうかくえんちょうじゅつ)とは、鼻中隔(鼻の穴を左右に分けている壁)に溶ける糸を挿入したり、自身の軟骨を移植することによって鼻の長さや角度を整える施術です。
鼻尖形成術と同じくPCLやPDOを材料とした溶ける糸や耳介軟骨を使用します。また、耳介軟骨のほかに鼻中隔軟骨、肋軟骨を使用することもあります。鼻尖形成術と同時におこなうことができます。
鼻翼形成術は鼻翼(小鼻)を小さくする施術で、鼻翼縮小術(びよくしゅくしょうじゅつ)とも呼ばれています。
両側の鼻の孔の根元部分を少量切除して縫合することで鼻翼を縮小させることができるとされています。鼻翼形成術も鼻尖形成術と同時に施術を受けることができます。
鼻尖形成術の費用相場は、200,000円~800,000円と大きく幅があります。
などさまざまな要因によって費用が決定されている傾向にあります。切開方法や術式に関しては、ドクターの診察・カウンセリングを受けた上で決定されます。料金について詳しく知りたい場合は、ドクターの診察・カウンセリングをお受けください。
1)診察・カウンセリングとデザインをおこなう
診察・カウンセリングの際に希望する鼻のデザインをドクターに伝えます。この際、希望の鼻の形を詳しく伝えて仕上がりについてすり合わせをおこなうことが大切です。医療機関によってはPCでシミュレーションがおこなえることもあります。仕上がりのデザインのすり合わせを怠ると期待外れの施術につながります。希望する鼻の形によってはほかの施術が向いている場合もあるため、ドクターからの意見を聞いて施術を決定することも大切です。診察・カウンセリングに納得するまで施術をおこなうのは控えてください。
2)洗顔をする
メイクや肌に汚れがあると、術後の感染症のリスクが高くなります。そのためメイク落とし・洗顔をおこなって、清潔な状態にします。
3)麻酔をおこなう
鼻尖形成術では局所麻酔、静脈麻酔、全身麻酔が使用されることがほとんどです。どの麻酔を使用するかは術式や医療機関の方針によって異なりますが、原則として麻酔が効けば痛みを感じることはありません。希望する麻酔方法があれば事前におこなえるかどうか医療機関にご確認ください。
4)鼻尖形成の施術
自家軟骨を使用する場合は、まず自家軟骨を採取します。自家軟骨を採取するかどうかや術式、医療機関によって異なりますが、全体を通して約1時間~3時間ほどかかるといわれています。麻酔から覚めると痛みがあるといわれていますが、原則として医療機関で痛み止めの処方があります。
鼻尖形成術は鼻先を細くしたり高くする施術ですが、どのような鼻の形を希望するかで術式を選択する必要があります。間違った施術を選択すると希望する形にならないなどのリスクがあるため、ドクターの診察・カウンセリングの際にはしっかりと希望を伝えることが大切です。PCのソフトを使用してシミュレーションをおこなえる医療機関であれば、希望のイメージが伝えやすくなります。
また、担当するドクターによって縫合方法や挿入する自家軟骨などの形の作り方、鼻翼軟骨の切開位置など細かい術式が異なります。一つの医療機関、一人のドクターだけに診察・カウンセリングを受けて施術を決定せず、さまざまな医療機関・ドクターに相談をすることも大切です。
さらに、オープン法やクローズ法で患部を切開したあとの剥離が足りない、支柱の強度が足りない、鼻先の軟部組織を切除しすぎてしまうなど施術に過不足があると施術が失敗してしまう可能性が高くなります。施術の過不足で起こりうる失敗は、鼻先の少し上から盛り上がったようになってしまうポリービーク変形や鼻先と小鼻の間を洗濯ばさみで摘まんだような凹みができるピンチノーズ変形などがあります。施術の過不足が原因で失敗してしまうリスクを回避するには症例数の多いドクターを選ぶことが大切です。
鼻尖形成術の施術では麻酔を使用しますが、全身麻酔・静脈麻酔をおこなう場合は麻酔科医の立ち合いが必要です。麻酔科医には厚生労働省が法律で定めている麻酔標榜医や日本麻酔科学会の認定医がいます。どちらも麻酔の実施に関して十分な経験をつんでいて相当な知識があると認められている麻酔科医です。施術を受ける医療機関に麻酔標榜医や日本麻酔科学会の認定医が在籍していると安心して施術が受けられます。