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海外で肝斑治療につかわれるクリーム「シスペラ」とハイドロキノンの違い

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海外で肝斑治療につかわれるクリーム「シスペラ」とハイドロキノンの違い

シスペラ(Cyspera®)は、アメリカの皮膚科学会であるAAD(American Academy of Dermatology Association)の2013年の年次総会で、30名の肝斑患者を対象とした症例につかわれた化粧品クリームです。

日本では、メラニンを合成する酵素を抑制する「ハイドロキノン」が化粧品に2%までの配合が認められていますが、そのハイドロキノンとの違いと、安全に使用するための注意点を確認していきます。

シスペラの配合成分

システアミンシスペラにはさまざまな成分が配合されていますが、なかでも注目されている成分が「システアミン(cysteamine)」です。

システアミンシステアミンを黒い金魚に注射すると白く脱色することが、1966年Chavin博士の研究チームによって、発見されました。さらに1968年には Pathak博士とBleehen博士の研究チームにより、ハイドロキノンよりも効果があることが示されています。

このように、従来システアミンの効果は示されていたものの、製品化されてこなかった理由は、システアミンの刺激的な臭いにより、皮膚への塗布剤として製品化することが困難だったことが挙げられます。

しかし、2012年にScientis社が外用剤として成分を安定化させて、強力に臭いを減少させる新しい技術を開発。それにより、システアミンを5%配合したシスペラがクリームとして製品化されました。

システアミンは哺乳類細胞にみられる化合物

システアミンは哺乳類細胞にみられる化合物システアミンは、哺乳類の中でもヒトの母乳において高濃度にふくまれているとされ、抗酸化物質として作用します。

活性酸素の働きを抑制する抗酸化物質

抗酸化物質の働きを説明するのにまず「活性酸素」から確認していくことにします。

活性酸素は、原子や分子において電子が奇数であるものをいいます。

分子は物質の性質をもつ最小単位で、原子の組み合わせで構成されています。原子の中心には電子が2つずつ対になっている原子核がありますが、なかには電子が奇数のものがあり、活性酸素がそれにあたります。

活性酸素は電子が対になっていないため不安定で、ほかから電子を奪う(酸化させる)ことで安定しようとします

対して、酸化の反対である「還元」として働く抗酸化物質は、活性酸素に電子を与えることで活性酸素の酸化力を無力化し、酸化を防ぎます

活性酸素は体内に酸素が取り込まれることで生じ、細菌などの有害物質から体を守っていますが、過剰に生成されると健康な細胞も攻撃してしまいます。それによって、シミ・シワ・たるみといった老化があらわれるようになります。

そこで、抗酸化物質が機能して過剰に生成される活性酸素の働きを抑制すると、老化の予防が期待できます。

システアミンの臭い

システアミンは、髪の毛のパーマ液の成分としても使われている成分で、システアミンを含むシスペラは「パーマ液のような臭い」と表現されることもあるように、独特の臭いがあります。

髪はタンパク質の一種「ケラチン」が、シスチン結合、塩結合、水素結合といったさまざまな形で結合していますが、パーマはその結合を還元剤(1液)で切り、酸化剤(2液)で再度結合することでウェーブを付けたりストレートにしたりしています。

システアミンは、ケラチンのさまざまな結合のうち「シスチン結合」を還元する1液に含まれる成分です。

シスペラの全成分

水、ミネラルオイル、システアミン塩酸塩、ナイアシンアミド、Butyrospermum Parkii (シアバター)、レシチン、ステアリン酸グリセリル、ミリスチン酸イソプロピル、セチルアルコール、パルミチン酸アスコルビル、セテアレス 20 、アスコルビルリン酸ナトリウム、オクチルドデカノール、フェノキシエタノール、エチルヘキシルグリセリン、カプリル酸プロピルヘプチル、セテアレス 12 、セテアリルアルコール、パルミチン酸セチル、香料、キサンタンガム、ジポリヒドロキシステアリン酸 Peg 30 、トコフェロール、ミツロウ、 BHT 、EDTA 四ナトリウム、ヘキシルシンナムアルデヒド、リナロール、ゲラニオール

シスペラが向いている方

  • 日焼けによるシミ・ソバカスが気になる方
  • ニキビ跡などの色素沈着が気になる方
  • 唇のくすみや色素沈着が気になる方
  • 目の周りの色素沈着を何とかしたい方
  • 体の黒ずみが気になる方

シスペラが使用できる部位

シスペラは顔だけでなく、あらゆる部位に使用できます。

  • 顔(目のまわり・唇ふくむ)
  • 乳輪
  • お尻
  • デリケートゾーン

色素沈着の過程と抗酸化物質による作用

色素沈着の過程

皮膚は外側から表皮・真皮と層状になっていますが、表皮はさらに4層にわかれています。シミや肝斑の原因となるメラニン色素をつくる細胞「メラノサイト」は、表皮の一番下の層にあたる「基底層」に存在します。

メラニン色素は、「メラノソーム」という顆粒に含まれていて、タンパク質などの働きにより皮膚細胞「ケラチノサイト」に渡されます。そして、健康的な皮膚であれば、ターンオーバーといわれる皮膚の新陳代謝により層状になっている表皮において、上へ上へと押し上げられていきます。その過程でメラノソームは消化されていき、メラニン色素は最終的には、古い角質とともに体外に排出されます。

しかし、メラニン色素が過剰に生成されターンオーバーの周期が乱れると、メラニン色素が体外に排出されづらくなり、蓄積して色素沈着やシミとなってあらわれます

チロシンの化学反応により生成されるメラニン色素

基底層で、メラニン色素が生成される過程をもう少し詳しく確認していくと、紫外線などの刺激を受けてメラノサイトが活性化すると、以下のようにしてメラニン色素が作られていきます。

メラニン色素は、メラノソームの中でチロシンが酸化・重合化という化学反応の過程を経ることで作られます。

  1. チロシンが「チロシナーゼ」で酸化される
  2. 「ドーパ」が生成される(チロシンヒドロキシラーゼ活性)
  3. ドーパがチロシナーゼの作用であるドーパオキシターゼによって酸化され「ドーパキノン」が生成される(ドーパオキシダーゼ活性)
  4. 「ドーパキノン」が酸化して「インドロール化合物」に変化
  5. メラニン色素になる

システアミンの作用による特徴

抗酸化作用は、メラニンの生成経路に以下のような複数の影響をあたえるとされます。

  • チロシンが酸化されることの阻止
  • ドーパの生成を抑制
  • インドール化合物への変化の阻害(メラニン合成の最初と最後の段階を阻害)
  • 鉄、銅イオンのクエンチング(消光)によるフェントン反応※の阻害
  • ドーパキノンのクエンチング(メラニン生成経路からドーパキノンの除去)
  • 細胞内のグルタチオン(抗酸化作用)の増加作用
  • 角質層の暗いメラニンを抗酸化作用で明るい色へと還元

※フェントン反応が起こると活性酸素が生成されます。

メラニン色素には、黒いメラニン(ユーメラニン)と黄色のメラニン(フェオメラニン)の2種類が存在します。ドーパキノンが酸化を起こすと黒いメラニンが作られますが、抗酸化作用のある成分が存在すると、ドーパキノンがそれらと結合して黄色のメラニンが作られるため、黒いメラニンの生成を防ぐことになります。

メラニン色素が作られる過程に影響を及ぼすには以下のような9つの作用が有効とされます。それぞれの作用を持つ成分は複数ありますが、シスペラでは、システアミンとナイアシンアミドによって、5つの作用があるとされます。

作用機序 成分
チロシナーゼ阻害剤 システアミン,ハイドロキノン,コハク酸,アルブチン,アゼライン酸,アスコルビン酸,エラグ酸,グリコール酸,EFG
ドーパオキシダーゼ阻害剤 システアミン,マルベリーエキス
ペルオキシダーゼ基質の阻害剤(酸化ストレスから守る) システアミン
細胞内のグルタチオン増加 システアミン
メラノソーム移行の阻害 ナイアシンアミド,大豆エキス,イプセレン,ドリアン酸
抗ホルモン剤 フルタミド
角質層のターンオーバーの向上 トレチノイン,グリコール酸
プラスミン経路のブロック トラネキサム酸
細胞毒性 ハイドロキノン

海外で発表されているシスペラによる治療

海外に説いて、16週間のシスペラによる治療では、肝斑病変のメラニン指数が67%減少したこと、肝斑面積において58%減少したことが示されています。

肝斑病変のメラニン指数が67%減少したことが示された

肝斑面積においては58%の減少が示された

そのほか、冒頭で紹介したAADでの症例以外でも複数の臨床評価にて結果が示されています。

ダブル・ブライド・テストによる結果

英国皮膚科学会誌BJD (British Journal of Dermatology) において、2015年、50名の表皮性肝斑患者を対象とした初の二重盲検試験(ダブル・ブラインド・テスト)がおこなわれ、効果が確認されました。

ダブル・ブラインド・テストとは、薬の有効性や治療効果を確認するために一般的におこなわれる方法です。薬の本当の効果を確かめることを目的としていて、治療をする側もされる側も、本物の薬がどちらかわからない状態で治験がおこなわれます。

参考文献:Evaluation of the efficacy of cysteamine 5% cream in the treatment of epidermal melasma: a randomized double-blind placebo-controlled trial

シミを薄くするほかの治療との比較

「Skin Reserch & Techonology」では50人の肝斑の患者における治療で、クリグマン処方より効果的であるとの臨床結果が示されています。

クリグマン処方は、クリグマン医師とウイルス医師が共同で作り上げたホワイトニング用塗り薬「クリグマン軟膏」(ハイドロキノン・トレチノイン・デキサメタゾン配合)による治療で、6週間~8週間で、シミを薄くする効果があると報告されています。

なお、シスペラはクリグマン軟膏で効果が見られない場合にも使用できます。

参考文献:Clinical evaluation of efficacy, safety and tolerability of cysteamine 5% cream in comparison with modified Kligman's formula in subjects with epidermal melasma: A randomized, double-blind clinical trial study

また、内服薬としても使用されシミ治療に用いられる「トラネキサム酸」を針で皮膚に注入する「トラネキサム酸メソセラピー」よりも合併症が少なく効果的ということが、治療結果で示されています。

参考文献:Clinical evaluation of efficacy and tolerability of cysteamine 5% cream in comparison with tranexamic acid mesotherapy in subjects with melasma: a single-blind, randomized clinical trial study

シスペラと「ハイドロキノン」の違い

日焼けによるメラニン色素の生成を抑制する成分「ハイドロキノン」との違いを確認していきます。

ハイドロキノンを用いると赤みやかぶれといった副作用を伴うことがあります。また、長期にわたって使用すると皮膚の一部が白くなる白斑(はくはん)のリスクがあり、紫外線にあたるとシミが濃くなるなど注意事項に気を付けて使用しなければなりません。

対してシスペラは、開始直後は刺激を感じることがあっても徐々に肌が慣れていき長期にわたって使用することによるリスクはないとされます。また、「シミが濃くなる」など光で化学変化を起こすことはない(感光性がない)ため、朝・昼・夜のいつでも好きな時間帯に使用できることから、ハイドロキノンと比較すると手軽に使えるといえます。

ただし、シスペラの使用期間中は、効果をより実感できるよう外出時には紫外線対策をおこなうことが推奨されています。

ハイドロキノン使用の注意事項

副作用を伴うことがある

ハイドロキノンは、「肌の漂白剤」とも呼ばれることがあるように、シミを薄くしたりシミを予防したりする効果があるとされています。一方で、赤み・かぶれ・かゆみ・肌荒れといった肌へのダメージ、アレルギー反応を伴うことが特徴です。

また、ハイドロキノンは単独だと肌への浸透性が低いため、ターンオーバーを早め古い角質を除去する「トレチノイン」と併用されることが多くあります。トレチノインの使用は皮むけ(古い角質の剥脱)、乾燥、赤みといったダウンタイムを伴うことから、トレチノインとハイドロキノンを併用する治療は、敬遠される方もいる方法です。

白斑のリスクがある

ハイドロキノンは長期にわたって使用すると白斑のリスクが高くなり、効果も表れにくくなります

また、変異原性の可能性および発がん性のある化合物として知られており、組織褐変症を誘発することが知られています。

参考文献:Hydroquinone and its analogues in dermatology - a potential health risk

参考文献:Exogenous ochronosis: the failure of depigmenting creams

参考文献:Exogenous Ochronosis

シミが濃くなる可能性がある

さらにハイドロキノンを塗布した部位のシミは、紫外線にあたると濃くなることもあります。 そのため外出前のハイドロキノンの使用は控えなければなりません

システアミンとハイドロキノンの比較表

  システアミン ハイドロキノン
分子の由来 ヒト由来 化学物質
作用機序 チロシナーゼ阻害、ペルオキシダーゼ阻害、細胞内グルタチオンの増加作用、ドーパキノンの反応停止(クエンチング)、活性酸素を発生させるフェントン型反応阻害、角質層のメラニン減少 チロシナーゼ阻害
メリット 脱色効果が高い、感光性なし、生体適合性&酸化の程度は許容範囲 脱色効果が高い
副作用 (指示通りに使用しない場合につき)軽度の刺激 リバウンド(色素沈着の悪化)、感光性、組織褐変症、黒斑点、脱色
安全性 非細胞毒性,抗変異原性,抗発癌性,放射線防護剤

メラニン色素の生成に作用するとされる成分にはハイドロキノン以外にもいくつかあります。たとえば、トラネキサム酸、コウジ酸、アルブチン、アゼライン酸、レチノイド、ヒドロキシ酸などの非ハイドロキノン系外用剤がありますが、これらは長期にわたって使用してもダウンタイムがないとされるものの、効果もマイルドな傾向にあるとされます。

シスペラはハイドロキノンアレルギーの方もつかえる

シスペラには、ハイドロキノンであらわれるようなアレルギー反応がないため、以下のような方にもお使いいただけます。

  • ハイドロキノンアレルギーの方
  • トレチノイン・ハイドロキノンを併用する治療方法のダウンタイムが気になる方

2段階に分かれるシスペラの使用方法

シスペラの使用は2段階に分かれます。

  • 1段階目(集中治療期): 1日1回を16週間
  • 2段階目(維持治療期): 週に2日、1日1回ずつ

まずは、16週間の集中治療をおこない、その後、維持治療として週に2日シスペラを使用することで健康的な肌を維持することが期待できます。

使用する時間帯は、朝・昼・夜のいずれの時間帯でも可能ですが、夜の使用がより早く効果を実感されるとされます。

また、シスペラ使用中は肌の十分な保湿を心がけ、SPF50などSPF値の高い日焼け止めを使用してください。

1日1回の使用方法

1日1回の使用方法は以下のとおりです。

肌を休めてから使用

シスペラは浸透力が高いため、ある程度皮脂が残っている肌に塗布することが望まれます。

洗顔後の乾燥した肌に使用すると、強い赤みや発疹などの刺激が生じやすくなるため、洗顔後に使用する場合は、1時間以上時間をおいてから使用します。また、時間をおく間に化粧水などで保湿をしても問題ありません。保湿後にシスペラを使用することで、乾燥による刺激を抑えられます

塗布後は15分待つ

シスペラを2回~4回プッシュした量を全体的に塗布し、15分待ちます。

15分より長い時間洗い流さず塗布したままにしておくと、赤みや刺激が生じる可能性があります。

洗い流す

洗顔料で洗ったあとはぬるま湯で洗い流します。

保湿する

洗顔後はしっかりと保湿します。

シスペラを使用する前に知っておくべきこと

シスペラ塗布後の刺激感は徐々になくなる

副作用としてピリピリする刺激感や熱感、赤みが生じる場合がありますが、洗い流して時間を置くことでおさまります。このような反応は正常なもので、シスペラを塗布し始めた日から数日程度つづくことはあっても、一般的には徐々に肌が慣れることで刺激感はなくなるとされます。

ただし、数日経っても改善が見られず強い刺激感がなくならない場合は、医療機関にご相談ください

シスペラは15℃~30℃で保存

15℃~30℃の室温での保存が望ましいとされます。

また、シスペラは空気に触れると酸化して茶色くなる性質があるため、使用する際は、酸化したクリームが付着している場合は取り除いて使うようにします。なお、シスペラの容器は真空状態で密閉されています。ポンプ式で中身を押し出しているため、容器内のクリームが空気に触れることはありません

ほかの美容医療との併用について

皮膚の古い角質を除去するピーリング施術や、ほかの美容医療を受けた後のダウンタイム中は、シスペラの使用は控えることが推奨されます。

システアミンを使用できない方

  • 敏感肌の方
  • トレチノインやレチノールをお使いの方
  • ピーリング治療中の方
  • 皮剥けや赤みがある方
  • 試験を実施していないとの理由から妊娠中や授乳中の方、15歳以下のお子様(小児)

レチノールはビタミンAのことです。トレチノインはレチノールの構造を変えたもので、日本の厚生労働省にあたるFDA(米国食品医薬品局)から、肌のシミ・シワ・ニキビの治療に使われる医薬品として認可されています。

参考文献:Tretinoin

シスペラの購入方法と購入における注意点

シスペラは医療機関および医療機関が運営する販売サイトで購入することができ、容量は50gです。

なお、美白を目的としたクリームの購入については、厚生労働省より注意喚起がなされています。

「インターネットを介して個人輸入した美白を目的とする海外製クリーム剤の使用にご注意ください」

安易に購入せず正規品であることをご確認ください。また、医療機関で購入すると使用中にトラブルが発生した際は相談できるため安心です。

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