目の下にたるみ・黒クマができると、実際の年齢より老けて見えたり疲れているように見えたりすることがありますが、美容医療には1回で、目の下のたるみ・黒クマの改善が期待できる施術方法があります。そのひとつが経結膜脱脂法(けいけつまくだっしほう)です。
経結膜脱脂法は下まぶたの裏側をわずかに切開する目もとの美容整形です。一般的に切開をともなう施術は効果を実感しやすい反面、痛みや施術後に皮膚が元の状態に戻るのダウンタイムが長くなる傾向にあります。しかし、経結膜脱脂法は、切開する範囲がわずかなため施術後の痛みや腫れ・むくみが軽度であることが多く、また皮膚表面に傷跡が残りません。 ただし、リスクがゼロではないため、後悔しない施術とするために失敗した場合の対処法もあらかじめ知っておくことが大切です。
もくじ
経結膜脱脂法は、下まぶたをひっくり返した赤い粘膜部分をわずかに切開し、そこから目の下の脂肪「眼窩脂肪」(がんかしぼう)を適量取り出し、目の下のたるみや黒クマ(影クマ)を改善する施術方法です。
下眼瞼脱脂術(かがんけん だっしじゅつ)、下眼瞼経粘膜的脱脂術(かがんけん けいねんまくてき だっしじゅつ)ともいわれます。
切開する範囲が5mm~1cm程度であるため施術後の腫れ・むくみが軽度で、下まぶたの裏側(結膜側)を切開することから外側の皮膚に傷が残らないことが特徴です。
回復が早い粘膜部分を切開するため、縫合する必要がありません。そのため、抜糸のために通院する必要がなく、日帰りで受けることができます。
目の下のたるみや黒っぽく影があるように見える黒クマの症状は、眼窩脂肪の状態が影響しています。
眼窩脂肪はクッションのように眼球を覆って、眼球を衝撃から保護する役割を担っているといわれますが、前方に突出すると目の下にあらわれる眼袋(目袋)といわれるたるみの原因になります。[※1]
眼袋は涙袋と混同されることがありますが、眼袋は老化現象のひとつともいえる一方で、涙袋は若者の顔の特徴となる傾向にあり、涙袋と区別されています。[※2]
眼袋が生じると、目の下のたるみと頬との境界線である眼頬溝ができることで影が生じ、いわゆる「黒クマ(影クマ)」といわれる症状になります。
眼窩脂肪は、生まれつき量が多い方や骨格の影響のほか、加齢によって前方に突出してくる傾向にあります。
[※1]
日本化粧品技術者会誌/50 巻 (2016) 3 号/書誌「目袋と瞼頬溝の三次元曲率を用いた目もとの印象評価法」
[※2]
日本化粧品技術者会誌/43 巻 (2009) 3 号/書誌「中国人女性の目袋に関する研究」
眼窩脂肪は周囲をロックウッド靭帯や眼窩隔膜、眼輪筋に支えられています。さらに皮膚のハリや弾力によっても支えられています。しかし、これらの支えが加齢によってゆるむと、眼球が下に沈みこんで眼球を覆っている眼窩脂肪が本来おさまっている位置からあふれて突出し、眼袋があらわれます。
眼窩脂肪は突出すると自然に元に戻ることはなく、メイクで隠すことも簡単ではありませんが、経結膜脱脂法であれば、余分な眼窩脂肪を物理的に取り除くことで、目の下のたるみや黒クマを改善に導きます。
経結膜脱脂法で下まぶたのたるみや黒クマが改善されると、目もとがすっきりして明るい印象になることが期待できます。
涙袋はヒアルロン酸注入で形成する方法もありますが、経結膜脱脂法で余分な眼窩脂肪を取り除くことで、目立つようになることがあります。
経結膜脱脂法で下まぶたの裏側を切開する際には電気メスや炭酸ガスレーザーがつかわれます。下まぶたの裏側を5mm~1cmほど切開して、眼窩脂肪を包んでいる眼窩隔膜を皮膚から切り離して眼窩脂肪を取り除きます。
電気メスや炭酸ガスレーザーは熱エネルギーによる凝固作用があるため、出血がほとんどなく施術時間は片側で30分程度です。
経結膜脱脂法の施術中の痛みは、目薬タイプの点眼麻酔と注射による局所麻酔で抑えます。
点眼麻酔で、局所麻酔の注射針の痛みを抑えてからまぶたの裏側に局所麻酔をおこないます。麻酔により施術中に痛みを感じることはありません。
医療機関によっては、静脈麻酔によって眠っている間に施術がおこなわれる場合もありますので、詳しくは医療機関にお問い合わせください。
また、施術後に麻酔が切れると感じられることがある鈍痛は、鎮痛剤で抑えます。
経結膜脱脂法は切開する範囲がわずかであるため、個人差はありますが腫れ・むくみ・赤みといったダウンタイムは2日~3日程度です。洗顔や入浴は当日から、アイメイクを含めたメイクは翌日から可能です。
まれに目の下が紫色から黄色っぽく見える内出血が生じる場合がありますが、1週間ほどでおさまります。
また、まぶたの裏側を切開しているため、2週間程度は自然治癒の過程で目ヤニや充血の症状が出ることがあります。
2~3日後 | 腫れ・むくみ・赤みが落ち着く 若干むくみが残る方もいるものの、ほとんどの方は気にならない程度 |
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1週間後 | 切開した箇所が自然治癒 まれに目の下が内出血で紫色から黄色っぽく見えることがあるが、1週間ほどでおさまる コンタクトレンズを着用できる |
2週間後 | 目ヤニや充血の症状がおさまる |
1カ月後 | 目もとがスッキリとして涙袋が目立つようになる場合がある |
長時間の入浴・飲酒・激しい運動といった行為は、痛みや腫れが強くなる場合があります。そのため血行がよくなる行為は、施術後1週間程度は控えることが推奨されます。
また、施術後は感染のリスクを避けるために目のまわりを清潔に保つ必要があります。処方される抗生物質の服用指示に従ってください。
取り除く眼窩脂肪の量が少ないと、症状に変化があらわれないこともあります。その場合は再度施術をおこなうことで改善が期待できます。一方で、眼窩脂肪は取れば取るほど、たるみ・黒クマの症状が軽くなるものではありません。取り過ぎることによって凹みが生じる可能性があります。
また、眼窩脂肪は3つのブロックに分かれていますが、多くのケースでは内側(鼻に近い側)と中央のブロックから取り除かれます。ただし、症状によっては外側のブロックからも取り除く必要があり、取り出す量のバランスが崩れると凹凸が生じる原因になります。
経結膜脱脂法は的確な診断とセンスが必要な施術ですが、経験が豊富なドクターであれば仕上がりをイメージしてバランスよく取り除くため 取り過ぎや左右差が生じるリスクは回避されるといえます。
眼窩脂肪を取り除くことで膨らみを軽減するため、施術後にシワが増える可能性があります。
シワが生じる可能性がある場合には、以下のような施術を組み合わせることで改善が期待できます。
脂肪注入は、自身から採取した脂肪をくぼみやへこみのある部位に注入することで肌にハリを持たせ改善を目指します。
脂肪注入には、以下の2つの方法があり、眼窩脂肪だけでは脂肪の量が少ない場合は、自身の腹部や太ももから採取した脂肪を注入することになります。
後者の方法では、採取した脂肪から不純物を取り除く処置をしてから注入がおこなわれます。
「再生医療」とは、欠損したり傷ついた身体の組織を再生させる医療のことですが、なかでも自身の血液から抽出した成分を使用した施術はPRP再生療法といわれます。
シワやたるみがある部位に注入することで、改善が期待できます。
ヒアルロン酸はもともと体内にある成分で、くぼみやへこみが気になる部位に注入することで、溝が目立たなくなります。
物理的に持ち上がるため、注入直後に変化を感じることができ、万が一希望の形にならなかった場合は溶解剤「ヒアルロニダーゼ」(Hyaluronidase)で溶かることが可能です。
目の下のたるみを軽減する経結膜脱脂法ではありますが、症状によって適しているケースもあれば、そうでないケースもあります。
目頭から斜め下方向に生じるシワは、ゴルゴライン(ゴルゴ線)あるいは頬瞼溝(きょうけんこう)といわれますが、正しくはミッドチークグルーヴ(Mid Cheek Groove)といい、加齢による眼輪筋の衰えや皮下脂肪の減少により目立つようになるとされます。
眼窩脂肪の突出だけでなく、ゴルゴラインも目立つ場合は、経結膜脱脂法とは別の以下のような方法が選択されます。
ハムラ法は、眼窩脂肪を取り除くのではなく、くぼんでいる頬瞼溝に移動させることで、くぼみを目立たなくすることができます。また、ハムラ法では皮膚の切除も同時におこなわれることがあり、皮膚のたるみがある場合にも有効といえます。
ハムラ法は経皮的眼窩脂肪移動(もしくは移行)術ともいわれ、下まぶたの皮膚を切開しますが、経結膜脱脂法と同じように下まぶたの裏側を切開しておこなわれる「裏ハムラ法」もあります。
裏ハムラ法は経結膜眼窩脂肪移動(もしくは移行)術ともいわれます。
眼窩脂肪の突出のほかに、皮膚のたるみがある場合は以下のような方法が選択されます。
下眼瞼除皺術(かがんけんじょすうじゅつ)は下まつげの生え際直下の皮膚を切開して、余分な眼窩脂肪を取り除きたるみのある下まぶたの皮膚を切除します。
もともと目の下の皮膚が薄いと、眼窩脂肪を取り除くことでクマが目立つようになる場合があります。皮膚が薄く、皮膚の下にある血管の状態が透けて見えてクマの症状が現れている場合(青クマの症状)は、脂肪注入で皮膚の薄さを補うことなどで改善を目指します。
そのほか、目もとをこする癖や洗顔などによる摩擦などでメラニン色素が蓄積し、クマの症状が現れている場合(茶クマの症状)は、レーザー治療と塗り薬のトレチノイン軟膏を併用してメラニン色素の排出を促進することなどで改善に導きます。
施術による腫れやむくみのために、施術直後は目の下のたるみや黒クマの症状に変化を感じられない場合があります。
眼窩脂肪を取り除くことで目の下のたるみや黒クマの症状は改善が期待できますが、その後、加齢とともに頬上の脂肪であるメーラーファットのボリュームが減ることが原因で、目の下のたるみや黒クマが再度生じる可能性はあります。
その場合は医療機関にご相談ください。
経結膜脱脂法は自由診療となり保険適用外で、医療機関ごとに料金が異なり、費用相場は150,000円~400,000円程度です。 また、医療機関によってはレーザー治療など併用する治療の費用も含まれている場合がありますので、詳しくは医療機関にご相談ください。
(1)診察・カウンセリング
取り除く眼窩脂肪の量を決めて取りの測位置をマーキングし、 イメージのすり合わせをおこないます。
(2)麻酔
点眼麻酔と局所麻酔を併用します。 点眼麻酔は、下まぶたの裏側におこなう局所麻酔の針の痛みを抑えるためにおこないます。また、静脈麻酔をおこなって、眠っている間に手術を終える医療機関もあります。
(3)眼窩脂肪の除去
下まぶたの裏側をわずかに切開して、眼窩脂肪を包んでいる眼窩隔膜を皮膚から切り離して眼窩隔膜を切開して眼窩脂肪を取り除きます。
(4)終了
施術直後から内出血や麻酔によるむくみが生じる可能性があります。
医療機関から帰宅する際目もとの状態が心配な方は、目もとを隠せるサングラスや帽子を持参すると安心です。
コンタクトは約1週間後から使用できるようになります。そのため裸眼で帰宅となりますのでメガネが必要です。
経結膜脱脂法は、眼窩脂肪を適量取り除く必要があり、3つのブロックに分かれている眼窩脂肪を取り除く量のバランスが悪かったり、安易に中央部だけを取り除くと、凹凸が生じる可能性もあります。
皮膚のたるみがある、あるいは目の下にシワや凹みがあるなど、症状によっては眼窩脂肪を取り除くだけでは改善しない場合があるといえます。この場合に経結膜脱脂法をおこなうこと「期待通りにならなかった」「失敗した」と感じるような結果になってしまうかもしれません。
しかし、経験があるドクターであれば、眼窩脂肪のボリュームが多いのか少ないのか、どこの脂肪を調整すべきか、経結膜脱脂法だけでなく脂肪注入が必要かどうかなど的確に判断できます。
目のまわりの組織の状態をしっかり確認し、症状に合わせた改善方法を提案してくれるドクターが在籍する医療機関を選ぶようにしてください。