目の下にクマやたるみができると、実際の年齢より老けて見えたり、疲れているように見えるものです。
マッサージをする、目元を温める、十分に睡眠をとるといったセルフケアでは、クマ・たるみの原因をなくすことはできません。しかし、美容医療には、原因を取り除いて根本的に解決できる方法があります。その方法の一つが、施術による腫れや痛みが少ないといわれる経結膜脱脂法(けいけつまくだっしほう)です。
経結膜脱脂法で失敗しないために、経結膜脱脂法はどのような手術で、どのような症状に適しているのかや、ほかの美容医療との違いを知っておきましょう。
もくじ
経結膜脱脂法は腫れや痛みが少ないクマ・たるみ取り
経結膜脱脂法は、前に出てきてしまった、目の下の脂肪である眼窩脂肪(がんかしぼう)を、下まぶたをひっくり返して、赤い粘膜部分に小さな穴を開けて取り出す方法です。下眼瞼脱脂術(かがんけん だっしじゅつ)、下眼瞼経粘膜的脱脂術(かがんけん けいねんまくてき だっしじゅつ)ともいわれます。
眼窩脂肪が前に出てくると、眼袋といわれるふくらみやたるみが生じます。そうすると、その影によってクマといわれる症状になり、涙袋もあいまいになります。
眼窩脂肪が前に出てきてクマができるのは、目まわりの筋肉が衰えて皮膚にハリがなくなるためで、加齢により症状はあらわれやすくなります。また、生まれつき眼窩脂肪が多い人は黒クマになりやすいといえるため、クマは加齢や遺伝によってできやすく、メイクで隠したりマッサージで元に戻すのは困難といえます。
経結膜脱脂法は皮膚を切開しないので腫れが少ない
経結膜脱脂法は、クマ・たるみができる原因である、余分な眼窩脂肪を取る方法です。取り除くのは下まぶたの裏側からなので、表側の皮膚を切りません。そのため「切らない治療」と紹介されることもあります。手術ですが、傷が残らず、腫れやむくみといったダウンタイムが軽度です。
個人差はありますが、腫れやむくみは2~3日でなくなり翌日からメイクできます。
経結膜脱脂法の治療の痛みは麻酔と鎮痛剤で抑制
経結膜脱脂法では目薬タイプの点眼麻酔と、注射の局所麻酔で手術中の痛みを抑えます。
最初に点眼麻酔をしてからまぶたの裏側に局所麻酔をおこないます。そのため、点眼麻酔で局所麻酔の針を注入する痛みが抑えられます。麻酔が効きはじめれば、手術中に痛みはありません。また、手術後の麻酔が切れたときの鈍痛は、鎮痛剤で抑えることができます。
経結膜脱脂法がおすすめの人
- クマを取りたい
- 目の下のたるみを取りたい
- 疲れて見えるのをなんとかしたい
- 見える位置の皮膚を切りたくない
- 涙袋をくっきりさせたい
- 治療により、仕事を長期間休むことはできない
経結膜脱脂法で改善できる2つのこと
クマには種類があり、「黒クマ(影クマ)」「青クマ(紫クマ)」「茶クマ」の大きく3つにわけることができます。
このうち、眼窩脂肪が原因のクマは黒クマに分類されます。
また、黒クマは軽度のものと中度以上のものに分けられます。
軽度の黒クマは、眼窩脂肪が原因とされます。一方、中度以上の黒クマは、眼窩脂肪のほかに、頬上の脂肪である、メーラーファットの状態も影響しているとされます。メーラーファットが少なくなったり垂れ下がったりすると、影の範囲が広くなるので、黒クマの症状も重くなるというわけです。
経結膜脱脂法は軽度の黒クマを改善できる
経結膜脱脂法で改善できるのは軽度の黒クマです。
また、メーラーファットが少なかったり、垂れさがったりしていることも影響している、中度以上の黒クマの場合は、以下のような頬上に脂肪を注入する施術を併用します。
- 経結膜脱脂法で取り除いた眼窩脂肪を注入
- 自分の腹部や太ももから脂肪を採取して、注入
自分の腹部や太ももから採取した脂肪を注入する後者の方法には、マイクロコンデンスリッチ法といって、採取した脂肪から不純物を取り除く処置をしてから注入する方法があります。料金はプラスになりますが、定着率がアップします。そのため、必要量以上に脂肪を注入する必要がなく、治療後の腫れが少ない点がメリットです。
なお、クマには「黒クマと茶クマ」「黒クマと青クマ」というように、クマが混在している場合がありますが、黒クマが混在しているタイプなら、経結膜脱脂法で黒クマを取れば症状は軽くなるでしょう。
黒クマ以外のクマを取る方法
皮膚下の状態が透けてしまっている青クマや、色素沈着による茶クマをなくすには、目の下に脂肪を注入して皮膚の薄さをカバーしたり、レーザー治療と塗り薬のトレチノイン軟膏を併用することなどで、改善を目指します。
経結膜脱脂法は涙袋を目立たせることができる
目元の印象に大きくかかわる涙袋。ヒアルロン酸や脂肪を注入して形成する方が多くいらっしゃいますが、期待したようにならなかった場合、経結膜脱脂法で余分な眼窩脂肪を取り除くと、涙袋が目立つようになることがあります。
ほかのクマ・たるみ取り治療と比較した経結膜脱脂法のメリット
経結膜脱脂法は1回で眼窩脂肪を取り除く
クマ・たるみの治療方法には、経結膜脱脂法以外にも、ヒアルロン酸や多血小板血漿(PRP)療法、線維芽細胞増殖因子(FGF)注入注射、リジュランi(サーモン注射)のような注入治療のほか、サーマクールアイ、ウルトラアイリフトのような照射治療があります。
しかし、これらの治療方法による持続期間は1年程度なので、施術の継続が必要な場合がほとんどです。また、クマ・たるみの原因である眼窩脂肪を取り除くのではなく、目の下のくぼみを埋めたり、皮膚のハリや弾力を取り戻したりすることで、クマ・たるみの軽減を目指します。
一方、経結膜脱脂法は、1回の手術で眼窩脂肪を取り除くので、施術を継続する必要はありません。
左右で約30分の経結膜脱脂法の手術の流れ
(1)仕上がりのデザイン決定
取り除く眼窩脂肪の位置をマーキングして、 イメージのすり合わせをおこないます。
(2)麻酔
点眼麻酔と局所麻酔を併用します。 点眼麻酔は、下まぶたの裏側におこなう局所麻酔の針の痛みを抑えるためにおこないます。
また、静脈麻酔をおこなって、眠っている間に手術を終える医療機関もあります。
(3)脂肪の除去
電気メスやレーザーで下まぶたの裏側をわずかに切開して、眼窩脂肪を包んでいる眼窩隔膜を皮膚から切り離します。
次に、眼窩隔膜を切開して眼窩脂肪を取り除きます。
熱エネルギーによる凝固作用がある、電気メスや炭酸ガスレーザーを用いることで、出血がほとんどありません。そのため、手術時間は左右で約30分と短時間です。
(4)終了
直後から内出血や麻酔によるむくみが生じる場合があります。
お帰りになるときの目元の状態が心配な方は、目元を隠せるようにサングラスや帽子をお持ちいただくと良いかもしれません。
コンタクトを使用している場合は、手術前に外しますので、コンタクトケースを持っていくようにしましょう。
コンタクトは約1週間後から使用できるようになります。そのため、手術後は裸眼で帰宅となりますので、メガネが必要です。
手術後に痛みが出ることもありますが、鎮痛剤で抑えられる程度で、洗顔は当日から可能です。
アイメイクを含むメイクは翌日から可能です。
下まぶたの裏側の切開部分は縫合が不要です。そのため抜糸の必要はなく、1週間ほどで自然治癒します。自然治癒していく間に、目ヤニや充血の症状が出ることがありますが、2週間ほどでおさまります。
経結膜脱脂法の料金相場
クマの治療は保険適用外で自由診療といわれ、医療機関ごとに料金を自由に設定できます。そのため、経結膜脱脂法の料金相場はおおよそ20万円~40万円と、医療機関によって幅があります。
経結膜脱脂法を受ける前に知っておくべきこと
経結膜脱脂法で皮膚のたるみ改善は不可
眼窩脂肪を取り除くので、目まわりがスッキリしますが、経結膜脱脂法で皮膚そのもののたるみを取ることはできません。
皮膚のたるみが強い場合の治療方法としては、脂肪を取り除くとともに、余分な皮膚も切除する経皮的脱脂術(下眼瞼経皮的脱脂術、下眼瞼切開術)があります。
経結膜脱脂法には軽度のダウンタイムがある
手術をすることで腫れ、赤み、むくみが2~3日発生します。また、内出血が出た場合紫色から黄色っぽくなることがありますが、1週間ほどでおさまります。
手術による腫れや内出血により、手術直後はクマやたるみの症状に変化がないように見えるかもしれません。時間が経過しても症状が変わらなければ、ドクターにご相談ください。
また、感染のリスクもありますので、治療後は目のまわりを清潔に保ち、処方される抗生物質の服用指示を守りましょう。
経結膜脱脂法で希望通りにならないリスクを避ける方法
経結膜脱脂法は、手術技術が問われる手術方法です。
取り除く眼窩脂肪の量が少ないと、症状に変化があらわれないこともあります。また、眼窩脂肪は取れば取るほど、クマ・たるみの症状が軽くなるものではありません。取り過ぎて凹みや左右差が生じたり、3つのブロックに分かれている眼窩脂肪の量がバランスが悪いと、凹凸が生じる可能性もあります。
しかし、経験があるドクターであれば、脂肪のボリュームが多いのか少ないのか、どこの脂肪を調整すべきか、経結膜脱脂法だけでなく脂肪注入が必要かどうかなどを的確に判断してくれます。
また、クマ・たるみを改善する治療メニューを複数持っている医療機関であれば、経結膜脱脂法で眼窩脂肪を取り除くのではなく、眼窩脂肪を移動させる眼窩脂肪移動術(下まぶたの表側を切開する方法)や経結膜的眼窩脂肪移動術(経結膜脱脂法のように下まぶたの裏側を切開する方法)、あるいは皮膚のたるみも切除する経皮的脱脂術の方が適しているといったように、症状に合わせた改善方法を提案してくれるでしょう。