「美容医療の症例写真をうまくとる方法」について、シリーズでお伝えしていきます。今回は、「症例写真の目的と撮影で気を付けるポイント」についてです。
美容医療の効果を知っていただくために、クリニックでの症例写真撮影は欠かせないものになっています。
また、正確なビフォーアフターの症例写真を掲載することは、クリニックへの信頼にもつながります。
では、「正確なビフォーアフター」とはどのような写真をさすのでしょうか。
そして、カメラに詳しいか詳しくないかにかかわらず、安定してきれいな症例写真が撮れるようになるには、どんなところに気をつけたらよいのでしょうか。
もくじ
一般的に、「きれい」に見える症例写真は、どこが違うのでしょうか。
症例写真では、下記の2つの点を目的とすることが、ポートレート撮影と大きく異なります。
これは、「写真に嘘がない」ということです。
画像修正や加工をおこなった写真は、もはや「ねつ造」レベルですが、同じように撮ったつもりでも、撮影方法を間違えると、並べたときに「嘘っぽく」見えてしまうことがあります。
嘘のように見えてしまう症例写真の掲載は、クリニックの信頼性低下につながりかねません。
これは、施術のビフォーアフターで写真を並べた場合に、効果があることを視覚で訴えるためです。
1の「正確な写真」を掲載したうえで、確実な効果を見込めるクリニックは、お客様に安心感と期待感を与えることができます。
それでは、具体的に症例写真のポイントをみていきましょう。
ポイントをおさえれば、効果的できれいな症例写真が撮影できるようになります。
症例写真の目的を達成するために、撮影のときに気を付けてほしいポイントを6つ、お伝えしていきます。
下の2枚の写真を比べてみてください。
2枚の写真は同じカメラの同じ設定で、背景のみ変えて撮影しました。
左の写真は、肌の色が青っぽく沈んで見えませんか。
肌の色を正確に写すためには、肌の色に影響を与えない環境を作ることが重要です。
証明写真では、清潔感やさわやかなイメージを与えることもあり、青い背景がよく使われます。
しかし、同じ青でも顔色が悪く見えてしまう青もありますので、症例写真で青い背景を使う場合は、肌色に影響していないかを確認して使うことをおすすめします。
顔の輪郭を際立たせるために、あえて黒い背景を使う場合もありますが、左の写真のように肌の色に影響を与えるような背景で撮影する場合は、壁に白い布を貼るなどして、肌に周囲の色が重なってしまうのを避けましょう。
また、余分な情報を多く入れることも、肌の色や印象に影響を与える可能性があります。そのため、無地の壁紙や、撮影場所の後ろに機材などが置いていない「背景がすっきりしている」空間を選ぶことも大切です。
下の3点の写真は同じモデルを連続撮影したものです。
ビフォーアフターに見えるほど、顔の輪郭が違って見えませんか。
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カメラの位置が高すぎたり低すぎたりすると、顔の輪郭がゆがんで(カメラに写る顔の角度が変わって)しまうため、顔の輪郭が変わったように見えてしまいます。
カメラを顔の真正面に設置し、顔と同じ高さで並行になるような位置に合わせて固定すると、きれいな症例写真が撮れます。
ピンぼけした写真や、手ブレしている症例写真は、見た目が美しくないだけでなく、信頼性の低下にもつながります。
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ピンぼけを防ぐためには、レンズを覗いて、カメラのピントがお顔に合っていることを確認してから写真を撮りましょう。
また、手ブレを防ぐには三脚を使用するなどして、しっかりとカメラを固定してください。
美白や肌のトーンのビフォーアフターを見せるときに、撮影する部屋の明るさによって、肌の色が変わってしまうケースがありますよね。
これでは、正確なビフォーアフターとは言えません。
いつも同じ肌の色を写すためには、部屋の光量を一定に保つ必要があります。
太陽光はその日のお天気や季節によって光の明るさが変わってくるので、右図のような環境はおすすめしません。
また、部分的に光のあたる間接照明も症例写真撮影向きではありません。
太陽光が入らず、かつ部分的な間接照明ではない直接照明の部屋での撮影が、好ましいです。
施術前後でカメラと被写体の位置が違ってしまうと、正確なビフォーアフターの対比ができません。
カメラとの距離が常に一定になるように、あらかじめモデルの位置、カメラの位置などを決めて、撮影位置にマーキング(床に養生テープなどで立ち位置に目印を貼っておく)などの工夫がなされていると便利です。
カメラごと接近して撮ると、鼻の部分が少しだけ大きく見えるなど、本来の顔のかたちと比べてゆがみが生じることがあります。
そのため、1.5メートルほど離れたところからズームで撮影すると、本来のかたちで写すことができます。
目だけ、鼻だけといった、ある部位だけの写真が必要な場合でも、カメラごと接近して必要な部位を撮影するのではなく、ズームで顔全体を撮影し、あとからデータ上で必要な部分をトリミングして(切り抜いて)使用することをおすすめします。
あってはならないことですが、ビフォーアフター写真を取り扱っている時に、部位のアップ写真ばかりだと、どれがご本人のアップ写真なのか区別がつかなくなるリスクが高まります。
状況を全体に把握できるほか、取り違えミス防止のために、部位のアップ以外に顔(もしくはボディ)を本人識別できる広範囲な一枚もおさえておくことをおすすめします。
なお、先ほどもお伝えしましたが、顔のパーツのみ必要な場合も、顔全体を撮影して、あとから必要な部位だけを切り抜いて使用した方が、ゆがみのないパーツ写真になるのでおすすめです。
撮影・監修:フォトグラファー竹内美保
症例写真で気を付けるポイントをまとめてお伝えしました。
よい症例写真を撮影するためには機材や撮影環境も大切です。機材や環境については、別ページで詳しくお伝えします。