「美容医療の症例写真をうまくとる方法」について、シリーズでお伝えしていきます。今回は、「症例写真を撮影する理想的な環境と機材」についてです。
きれいな症例写真を撮るには、撮影環境が重要です。
ポートレート写真とは異なる、「症例写真を撮影する」ための環境を整えるだけで、驚くほどきれいな症例写真が撮れるようになります。
もくじ
よい症例写真を撮影するための理想的な環境は、どんな部屋なのでしょうか。
今回の記事では、空いている施術室を利用して「理想的な撮影環境」を再現して撮影しました。
症例写真の目的は、肌色や顔のパーツをノーマルな状態で表現することです。そのため、光が顔全体に平均的に当たることを目指します。
太陽光が入る場合は、遮光カーテンなどで光を遮ります。
天候に左右されてしまう太陽光ではなく、室内用照明器具(蛍光灯、電灯)などの人工的な光で、光の状態がいつも同じであることが理想です。
間接照明ではなく全体照明がベスト。光量が足りない場合は、ストロボを使用します。
今回の撮影では、ストロボを使用しました。ストロボは撮影者の真後ろに設置しています。
肌の色に影響を与えないため、背景の壁の色は無地白色がベスト。
ただし、施術前後で輪郭の違いをわかりやすく撮影したい場合は、白色ではなく黒色の方がフェイスラインがすっきり見えます。
カメラと顔は同じ高さに合わせます。カメラは三脚で高さを決め、ぶれないようにしっかりと固定します。
また、被写体から1.5メートル程度離れた距離からズームで撮影するのがおすすめです。カメラを被写体に近づけてアップで撮るより、ゆがみを防いできれいに撮ることができます。
顔のパーツ(目だけ、鼻だけ)の写真が必要な場合でも、距離をとって顔全体を撮影。あとからデータ上で必要なパーツ部分をトリミングして(切り抜いて)使用します。
天井の蛍光灯からの直接光を遠ざけるため、被写体はできるだけ壁に近い位置とし、蛍光灯から離します。蛍光灯から離れることで、目の下・顎の下に出る影を軽減できるためです。
蛍光灯の真下に近ければ近いほど、影が大きく濃くなってしまいます。
肉眼で見たときに、光が顔全体にまんべんなく当たっている」のが理想です。
以下の機材があると、安定してきれいな症例写真を撮ることができます。
上記の機材を全部揃えるのが難しい場合は、別の道具を使って同じような効果を出す方法もあります。
背景が濃い色であったり模様があったりする場合、以下の対応により、周囲の色が被写体に影響するのを防ぎ、きれいな症例写真を撮ることができます。
■被写体の後ろに白い布もしくは紙を貼る
■被写体の両側にレフ板を設置する
■被写体にレフ版を持ってもらう
撮影する部屋が広すぎる場合は光が拡散されてしまいますが、こちらもレフ板で被写体を挟むことで光の拡散を防ぎ、きれいに撮ることができます。
■被写体の両側にレフ板を設置する
■被写体にレフ版(写真は25×45㎝くらいの大きさ)を持ってもらう
なお、レフ版は白段ボールで代用できます。
右図では、被写体の両側に、ライトを固定するための安いライトスタンドに白い段ボール(40×55㎝くらい)を養生テープで留めたものを設置しました。
スタンド形式のストロボを設置するスペースや手間がない場合には、リングフラッシュつきのカメラを使用してもよいでしょう。
ストロボを設置する手間やスペースなしでストロボ撮影ができます。 リングフラッシュつきのカメラを使った写真とストロボを設置して撮影した写真を比べてみました。
左側のリングフラッシュつきのカメラで撮影した写真は、フラッシュのサイズが小さい分、光量が少なくなります。肌の色において、若干黄色が強くなり、目の中の光が小さく黒目が大きく見えます。
一方、右側のストロボを設置して撮影した写真は、顎下の影が強く出ず、顔のパーツがはっきり見えます。
撮影・監修:フォトグラファー竹内美保
美容医療の実際の効果を偽りなく、正確に伝えることは、信頼できるクリニックだという印象を与えることにつながります。
きれいな症例写真にこだわって撮影するのがおすすめです。