「美容医療の症例写真をうまくとる方法」について、シリーズでお伝えしていきます。今回は、「症例写真の撮影にベストなカメラと基本的なカメラの仕組み」についてです。
施術がいくらうまくいっても、正確なビフォーアフターが記録できなくては、クリニックのイメージダウンにもつながります。
今回は、クリニックでの症例写真をきれいに撮影するために不可欠な、カメラ選びで気を付けるべきポイントやカメラの基本的な撮影方法をお伝えします。
もくじ
まずカメラを購入するときに考えるべきポイントは、どこで、どのように使うかということ。室内で使うのか、街中で使うのか、山や海で使うのか、何を撮影するのかによって、適したカメラは違ってきます。
今回は、施術のビフォーアフターの記録写真という明確な目的がありますが、そのために重要なのは、次の3つです。
カメラボディは大きく、デジタル一眼レフ、ミラーレス、コンパクトデジカメに分けられます。
それぞれの特徴を簡単に説明すると、以下のような違いがあります。
デジタル一眼レフ | 高画質での撮影が可能ですが大きく重い。交換レンズの種類も豊富。 |
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ミラーレス | レンズ交換式でありながらコンパクトで軽量。持ち運びにも便利。画質は一眼レフと同等。 |
コンパクトデジタルカメラ | 小さくで軽量。レンズ交換不要でズーム機能も充実しているが、画像センサーが小さいため本格的な撮影には不向き。 |
きれいな症例写真は、コンパクトデジカメでも撮影できなくはありません。
しかし、スマートフォンのカメラ機能との差が縮まってきており、あえて選ぶメリットがないので、新たに購入するのなら選択肢から外してもよいでしょう。
さらに、施術のビフォーアフターを明確に比較しやすく撮影するには、常に同じ光の条件で撮影することが大切です。そのため外部のストロボを使って毎回同じ条件で撮影する必要がありますが、コンパクトデジカメやスマートフォンは、外部ストロボには基本的に対応しないので、症例写真の撮影には不向きといえます。
おすすめは、ミラーレス。一眼レフのように重くないので女性でも扱いやすく、高画質の写真を撮影することができ、自然光、ストロボ光の両方に対応可能です。
ビフォーアフターの写真は、高画質のカメラで撮影するほどきれいに記録できます。そのためカメラを選ぶときにはセンサーサイズをチェックしましょう。
カメラにはイメージセンサーという受けた光を電気信号に返還する装置が組み込まれていて、簡単にいうとイメージセンサーが大きいほど被写体の細部まできれいに再現することができます。
画素数が多いほうが高画質と思っている方が多いのですが、カメラは画素数よりもイメージセンサーのサイズで選ぶことが大切です。
一眼レフやミラーレスの主なセンサーサイズは、大きい順に下記となっています。
例えば、顔のアップを撮影したとします。
フルサイズのイメージセンサーを搭載したカメラだと、髪の毛に寄ってみると1本1本がきれいに写ります。センサーサイズが小さくなるほど、髪の毛1本1本が曖昧になっていくイメージです。
フルサイズのイメージセンサーを搭載した一眼カメラの画像と、スマートフォンで撮影した画像を比べてみましょう。
スマートフォンで撮影しても画像は大きいですが、再現性はフルサイズに及びません。
そのため、きれいなビフォーアフターの写真を撮影するためには、できればフルサイズ、せめてAPS-Cを選ぶとよいでしょう。
施術のビフォーアフターの記録が目的の場合、実はカメラボディよりもレンズに注目することが重要です。
レンズは大きく分けると、単焦点レンズとズームレンズの2種類に分けられますが、ビフォーアフターを撮影する場合は、広角から中望遠の標準ズームレンズがベスト。単焦点レンズは、ボケやすいので記録写真には向きません。
標準ズームなら、院内などの写真の撮影にも対応可能。目のアップなど顔のパーツが必要な写真でも、ズームレンズである程度まで寄って撮影した後、写真をトリミングすることで対応可能です。
単焦点レンズ | ズームができないレンズ。いわゆる一眼レフというイメージのボケ味や明るさが魅力の写真を撮影できる。 |
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ズームレンズ | 被写体との距離に合わせて自由にズームができ、画角を調整できるレンズ。超広角、広角、中望遠、望遠などズームできる範囲によってレンズの種類が分かれる。 |
さらにズームレンズには次のような特徴があります。
症例写真を撮影するのにおすすめのカメラ
結論として、施術のビフォーアフターの記録をきれいに撮影するためのカメラは、フルサイズのイメージセンサーを搭載したミラーレス。もちろん予算や本体のサイズ感で問題なければ、一眼レフでもOKです。
センサーサイズはフルサイズ。レンズは、24~105mmと同等の焦点距離を持つズームレンズを用意しましょう。
デジタルカメラで上手に撮影するために、カメラの基本的な仕組みを知っておきましょう。押えておくべきポイントは次の4つです。
ひとつひとつ解説しながら、症例写真を撮影する際の設定も確認していきましょう。
レンズの穴のことを、『絞り』または『f値』と言います。 これが全開で空いていると光を取り込む量が多く、もっともボケ味のある写真が撮れます。
レンズの穴が小さくなるほど光を取り込む量が少なくなり、ボケにくく全体にピントがあってきます。
例えば、f値にはf1.4、f5.6、f11などの数値がありますが、数字が小さいほどボケ感があり、大きいほど全体にピントがあってくるというわけです。
症例写真を撮影する場合は、f値はf8でまず撮ってみて確認してください。
シャッターは普段は閉じていますが、シャッターボタンを押すと開閉し、この開閉時間をシャッタースピードといいます。
シャッターが開くとレンズから光が入り、時間が長いほど明るくなります。
例えば、シャッタースピードには 1/15、1/60、1/125、1/500などがありますが、分母の数字が小さいほど光を送る時間が長くなり、大きいほど短くなります。
なお、数字が小さいほどそれだけ長くシャッターが空いていることになるので、手ブレの原因にもなります。そのため、施術写真を撮影する場合は、1/125より大きい数字で撮影するのがおすすめです。
下の2つの写真を比べてみると、シャッタースピードが早い1/125のほうが、シャッタースピードが遅い1/15よりも輪郭がはっきりして、手ブレがないことがわかります。
ISO感度とは、絞りとシャッタースピードでカメラに貯めた光から写真の明るさを決める敏感度のことです。
例えば、薄暗い場所など光が少ないところで、レンズのf値をもっとも明るく全開にし、シャッタースピードも手ブレしない1/125に設定したとしても、暗い状態になってしまうことがあります。
ここでISO感度の数字を上げていくと、写真が明るくなっていきます。
ISO感度の基本は100で、ここから200、400、800と2倍に増え、数値が大きくなっていくほど高感度になります。
下の写真を比べても、ISO感度が大きくなるほど写真が明るくなっているのがわかります。
症例写真では、蛍光灯などの明るい光が撮りたい場所に、まんべんなく当たる環境がおすすめです。そのような環境では、つまり、症例写真を撮影するときは、基本のISO100で撮ってみて、明るさを確認してみましょう。
ホワイトバランスは、白いものを白くなるように調整する機能です。
電球の下で撮った写真がオレンジ色に写ったり、蛍光灯の下で撮った写真が青緑っぽく写ったりしてしまった経験はありませんか?
このような時に、ホワイトバランスで色を整えます。
一眼レフやスマートフォンのカメラなオートホワイトバランスになっていれば、おおよそ自動的に正しい色を再現してくれます。
それでも色味がしっくりこない場合は、ホワイトバランスの設定を太陽光、電球光、蛍光灯、曇り、日陰など設定を変えて、バランスを取ってみてください。
症例写真の撮影では、室内が蛍光灯だけで照らされている場合は「蛍光灯」、オレンジ色の照明の場合は「電球光」の設定にします。
撮影する室内の照明の種類に合わせて、ホワイトバランスを設定してください。
カメラの仕組みを簡単に説明しましたが、これを全てマニュアルで操作するのは、かなりハードルが高いですよね。
そこで、施術の症例写真の撮影に適したミラーレスについて、簡単できれいに撮影できる方法をお伝えしましょう。
それは「絞り優先オート」というモードを活用すること。
これは、絞りを決めればシャッタースピードはカメラが決めてくれるというモードです。
絞りの値は、まずはf8 で撮影してみて、写したい被写体がボケるようであれば調整してください。
ここでシャッタスピードが1/125より遅くなってしまったら、ISO感度をあげて調整していきます。
基本的にはこれできれいに撮影することができますが、思い通りの明るさに撮影できない場合は、『露出補整』という機能を使いましょう。
カメラが自動的に測定した明るさを0と考え、ちょっと暗いなと思ったら露出補整をプラスに、明るすぎると思ったらマイナスにしればOKです。
撮影・監修:フォトグラファー平林直己