ハイフによるたるみ治療は、皮膚下に存在するSMAS層(表在性筋膜群)と呼ばれる表情筋を覆ってる筋膜に超音波を照射して、収縮させて、皮膚の下からたるみを引き上げる美容医療です。
ハイフのほかに、しわやたるみに効果があるといわれている施術方法には、糸リフト(スレッドリフト)やレーザー治療、高周波(RF)治療がありますが、SMAS層に作用させるには、メスで皮膚を切開するフェイスリフト手術以外には、ハイフしかありません。
また、体の脂肪が気になる部分に超音波を照射することで、皮下脂肪の脂肪細胞が破壊されるので部分痩せの効果が期待できるといわれています。
施術前にハイフの副作用やリスク、効果的な施術頻度を知っておけば、安心してたるみ治療を受けることができます。
もくじ
ハイフとは、高密度焦点式超音波を意味する英語「High lntensity Focused Ultrasound」の略で、私たちが聞き取ることができない、高い周波数の超音波(2万ヘルツ以上)を1点に集めて照射する方法です。
ハイフは、虫眼鏡で太陽光を1点に集中させると黒い紙が焦げるように、体のある部位に超音波を集中させることで、熱を集めて高温にします。たんぱく質には熱で収縮する性質があるので(熱収縮)、お肉を焼くと縮むように、ハイフで狙った部位は高温になると、ひきしまってたるみを引き上げます。また、高温になった脂肪細胞は熱で破壊されます。
美容医療におけるハイフの効果は、たるみを引き上げるリフトアップ(タイトニング)による小顔効果、肌のハリ、毛穴の縮小、脂肪細胞を分解することによる部分痩せ効果と、多岐にわたります。
ハイフが、糸リフトや高周波といった、ほかのしわ・たるみ治療と違う点は、皮膚の下にある筋肉を薄く覆っている、SMAS層と呼ばれる筋膜に作用が届くこと。ヒトの皮膚は、外側から表皮層、真皮層、皮下組織(脂肪)の3層構造になっていて、SMAS層はその下に位置しています。
ハイフマシンは、マシンに装備されている先端部分(カートリッジ)を変えて、超音波の焦点深度(超音波が狙う深さ)を1.5mm、3.0 mm、4.5mmと変更することで、顔や体のたるみを引き締めます。
焦点深度 | 照射できる層 |
---|---|
1.5mm | 表面的な小ジワが出来やすい表皮層 |
3.0mm | コラーゲンの減少が起きる真皮層 |
4.5mm | 表情筋の老化に(たるみ)関与する SMAS 層 |
ハイフマシンのなかには、上記の3つ以外に、焦点深度が2.0mmのものや、身体用として6.0mm、9.0mm、13mmのカートリッジが装備されているマシンもあります。
真皮層は表皮層の内側にあって、皮膚組織の大部分を占めている皮膚の本体ともいえる部分です。
真皮層は、線維状のタンパク質である「コラーゲン」が約70%を占めていて、その間を「ヒアルロン酸」に代表されるゼリー状の物質が、水分を抱えながら満たしています。これに「エラスチン」という線維状のタンパク質も加わって、肌に弾力を与えているのです。
これらのコラーゲンやヒアルロン酸、エラスチンを生成する細胞が、「コラーゲンを作る工場」ともいわれる線維芽細胞(せんいがさいぼう)です。
線維芽細胞がある真皮層に、焦点深度3.0mmのカートリッジでハイフの熱刺激を加えると、熱でダメージを受けた部分と、その周辺を修復しようとする創傷治癒力が働きます。そのため、肌にハリとみずみずしさを保つためのコラーゲンや、エラスチンの蓄積を促すことができるので、肌のハリ、毛穴の縮小、リフトアップ効果が期待できます。
創傷治癒は徐々にすすむので、施術後1カ月程度で効果を認識する方もいますが、2カ月目〜6カ月目に効果を実感する方が多いようです。
表皮層のすぐ下にある真皮層の浅い部分に、3.0mmよりも浅い焦点深度1.5mmのカートリッジでハイフを照射すると、表面的な小じわの改善も期待できます。
ハイフマシンの一つであるウルトラフォーマーⅢでは、照射の点の大きさを小さくして、連続照射する照射方法、「ハイフシャワー」が可能です。ハイフシャワーは、1.5mmもしくは2.0mmのカートリッジでおこなわれます。ほかのカートリッジや、ウルトラフォーマーⅢ以外のハイフマシンによるハイフの照射より、ダウンタイムが少なくいといわれていて、速いスピードで連続照射するので、弱い熱でも肌のハリ改善や、毛穴の引き締め効果が見込めます。
SMAS層とは、「superficial musculo-aponeurotic system」の略称で、頭部から額、こめかみ、首などと連続しながら顔の広範囲に形成される表在性筋膜のことです。SMAS層は真皮層や皮下組織(脂肪)の下にあって、表情筋を薄く覆っています。
若いうちは、SMAS層にゆるみはありませんが、加齢とともにゆるんで下に垂れてしまうと、皮膚を支えきれなくなって、しわやたるみといった、年齢を感じるエイジングサインが現れはじめます。真皮層に刺激を与えて肌のハリを取り戻すことでも、リフトアップ効果は見込めますが、真皮層よりも下にあるSMAS層に熱刺激を与えてたんぱく質が熱で縮まることを促すと、皮膚の下から引き上げる効果があるといわれています。
真皮層を刺激する美容医療のエネルギーには、ハイフのほかにも、IPL(光)、レーザー、高周波がありますが、手術以外で真皮層の下にあるSMAS層を刺激できるのはハイフのみです。
皮下組織は大部分が脂肪で、体温維持やエネルギー代謝の役割を担っています。皮下組織の脂肪にハイフが作用すると、脂肪を構成する細胞そのものの数を減らすことができるので、体の部分痩せができるといわれています。ハイフの照射数が多いほど、多くの脂肪細胞を破壊できます。なお、もともと脂肪細胞が少ない場合、効果は見込めません。
スポット照射された部位は、高温になって脂肪細胞が破壊されるので、ぽっかりと穴が空いたようになります。破壊された脂肪細胞は、マクロファージ(白血球の一種で死んだ細胞やその破片を対外に出す役割)によって徐々に体外に排出されていきます。脂肪細胞が完全に体外に排出されるまで、約4~12週間かかるといわれています。その間も、ボディラインが引き締まっていく変化を実感いただけるでしょう。
ハイフを照射すると脂肪細胞そのものが破壊されて、体の自然な機能で体外へ排出されるので、リバウンドの心配がほとんどないといわれています。
ハイフ治療は、皮膚より深い筋膜であるSMAS層から引き上げるので、筋肉痛のような痛みがあります。そのため施術の際には、笑気麻酔で痛みを和らげる医療機関もあります。では、たるみ治療で比較されることが多い、高周波治療と比べてみましょう。
高周波治療は、ハイフ治療よりも痛みとダウンタイムが軽度といわれています。
また、ハイフが皮下組織の下にあるSMAS層に、ピンポイントでエネルギーが届くのに対して、高周波は皮下組織にある広範囲の脂肪に作用するという違いがあります。治療効果の持続期間は、ハイフ治療の方が長期間にわたりますが、高周波治療よりも高い料金設定になっています。
ハイフ | 高周波 | |
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効果 | ピンポイントで気になる部分に照射 表皮・真皮・皮下組織・SMAS層まで作用 |
広範囲に照射 表皮・真皮まで作用 |
ダウンタイム | 約1週間の腫れ・むくみ | なし |
持続時間 | 半年~1年 | 1カ月 |
施術時の痛み |
・エネルギーの強さや深さによっては痛みがある ・笑気など、麻酔を使用する医療機関が多い |
・皮膚の薄い部分は熱さを感じることがあるがほとんどない |
1回の料金 | 自由診療の治療のため医療機関によって異なるが、全顔でおよそ150,000円~500,000円前後 | 自由診療の治療のため医療機関によって異なるが、全顔でおおよそ50,000円~100,000円前後 |
(1)診察(カウンセリング)
骨格や肉付き、脂肪の厚さには個人差があるので、個人にあわせてどこにハイフを照射していくかを決定していきます。
(2)メイクオフ
顔にハイフを照射する場合はメイクを落とします。
(3)ハイフの照射
カウンセリングで決定した範囲に、ハイフが伝わりやすくなるようにジェルやオイルを塗って、照射する深さ、エネルギーの強さ、照射回数を調整しながら照射していきます。痛みに弱い方は、クリームや笑気による麻酔を使用する医療機関を選ぶと良いでしょう。
(4)終了
ジェルやオイルを拭き取って終了です。頬、フェイスラインのハイフの照射で30分~45分程度です。顔に照射した場合、施術直後にいつも通りのメイクが可能です。
個人差はありますが、施術後2日~3日は肌が乾燥することがあるので、保湿をしっかりおこなうことが推奨されています。
なお、運動制限や生活制限などはありませんので、そのままいつもの生活に戻っていただけます。
ハイフは、タンパク組織が熱収縮を起こすことで引き締まる効果がありますが、その作用によって炎症(赤み)、腫れ、むくみが出ることがあります。照射すると腫れが出やすくなりますが、1週間程度でおさまります。
持病や体調の状態によっては受けられない場合があります。
また、施術する部位に、ヒアルロン酸やボトックス注入をされている方、溶ける糸による糸リフト(スレッドリフト)の施術を受けている方は、それらの施術から約1カ月は施術を受けることはできません。
ハイフの施術で良く起こる副作用はやけどです。また、神経損傷のリスクも報告されていて、施術するドクターには高度な技術が必要とされます。
施術から3カ月以内は、表情筋膜や脂肪層がかさぶた状態か、もしくはかさぶたが取れかけたような状態です。3カ月以内にハイフの施術を受けると、傷に傷を重ねていくような行為になるので危険です。そのため、次に施術が受けられるのは、表情筋膜や脂肪層の怪我が完全に治りきって、再生した状態となる3カ月後以降が目安です。
顔へのハイフの施術は、表情筋膜に熱を与えるので、いわば故意に怪我をさせるような施術で、施術直後は、熱で怪我をしているような状態です。
傷が治りきらないうちに、施術を受けてしまうと、傷口にまた傷を作る状態となります。若返るどころか、かえって皮膚の細胞を痛めることになって、老化につながります。治療頻度はドクターの指示をしっかり守りましょう。
ハイフは、照射するエネルギー(強さ)を誤ると部分的な火傷を作ってしまうこともあります。また、どこに照射してもいいわけではなく、神経の上に照射してしまうと、鈍痛や頭痛といった神経痛や顔面麻痺などの症状が出てしまう場合があります。顔の中心部は、神経が密集しているので、絶対にハイフを照射してはいけません。
顔には中心部以外にも神経が多数走行しているため、ハイフの照射には神経を避けて照射できる知識と経験が必要となります。
最近では、エステでもハイフの施術をおこなう施設が増えていますが、医療機関とエステでおこなわれるハイフマシンには違いがあり、医療用のハイフマシンを医療機関以外の施設に置くことは医師法によって認められていません。エステのハイフマシンには、細胞が破壊されるほど温度が上がらないように、リミッターがついています。
細胞や組織を破壊することは、医師法に抵触するので、ドクターがいないエステで細胞や組織を破壊する施術がおこなわれた場合は、「違法」になります。ハイフで満足のいく結果を求めるには、神経の走行などを熟知していて、ハイフマシンによる施術件数が多く実績のあるドクターのもとで施術を受けることが大切です。